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走らない【#シロクマ文芸部】

走らない…もう休ませてくれ…


1998年、浦和レッズに天才が入団した。

サッカー観戦が趣味だが浦和レッズの選手以外はほとんど名前を知らない。ましてや、高校生の選手は全く知識がなかった。清水商業高校からやってきた選手の名は『小野伸二』といった。

シンジはシーズンの初戦からスタメン入りして、2戦目で初ゴールを決めた。18歳で日本代表に選ばれ初出場も果たした。とんでもない選手が浦和レッズにやってきたのだ!

シンジがボールを持つとワクワクした。

誰も居ないスペースにパスを出したかと思うと味方の選手が信じてそのスペースに走り込んでパスを受けたり、相手の選手にあたるんじゃないかと思うような隙間をついてスルーパスを出したり、想像が追いつかないプレーの数々を目の当たりにした。

しかし、シンジの活躍と反対に浦和レッズの成績は振るわず1999年にはJ2への降格が決まってしまった…

さすがに他のチームが黙っているはずがない。シンジは移籍してしまうのではないか?そんな不安がよぎったが、シンジは浦和に残ってくれた。しかもキャプテンとして。そしてJ1には1年で復帰して、2001年にはオランダのフェイエノールトへ旅立った。

2006年に再び浦和に戻ってきてくれた。度重なる怪我の影響もあって出場機会は減ってはいたものの、シンジがピッチに立つだけでスタジアムの雰囲気が明るくなり、ドキドキワクワクした。

一緒にJリーグ初制覇と天皇杯優勝を達成できたのが嬉しかった。

その後シンジはチームを転々としたが、どのチームでも愛されていた。そして今シーズンをもって引退を表明した。その理由をこうコメントしている。

「”足”がそろそろ休ませてくれと言うので」

既に走れない状態にもかかわらず、酷使し続けた”足”がもう『走らない』と拗ねてしまったのかもしれない。

現役最後の試合はコンサドーレ札幌対浦和レッズになる。シンジが現在所属しているチームと初めて所属したチームの戦いが12月3日の日曜日に札幌ドームで行われる。運命的なものを感じる。

コンサドーレ札幌の監督は浦和レッズを6年半率いたミシャだ。きっと、どこかのタイミングでシンジをピッチに送り出してくれるはずだ。

札幌ドームには行けないが、DAZNでシンジの雄姿を目に焼きつけたい。

最後にシンジの引退表明に対して浦和レッズから粋なコメントが寄せられたので紹介したい。

「”足”が走ろうと言ったら、また一緒にサッカーしましょう」


小牧幸助さんの企画に参加しています。
毎週ありがとうございます。

見出しの画像は浦和レッズ公式Xより引用させて頂きました。

#シロクマ文芸部 #ショートショート #浦和レッズ #Jリーグ #サッカー

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