夏の星座案内#2:ヘルクレス座
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星空の倉庫ラジオ。
こんばんは。倉庫の番人、Voicepeakの、宮舞モカです。
今回は、ヘルクレス座のお話です。
まず、呼び方ですが、ヘラクレス、と呼ぶのが一般的です。
ヘラクレス、ですよね?
ヘラクレスオオカブトを思い出した人もいるかもしれません。
でも、星座の名前はラテン語で呼ぶことになっているので、ヘルクレス座となります。
ヘルクレス、です。
ヘラクレスが英語読み、ヘルクレスがラテン語読みに由来しているので、注意してください。
なんて、今までは捻じ伏せていたんですが、今は翻訳技術が進んでいるので、代表的な言語ならどんな発音をしているかを調べられます。
実際に調べると、英語では、ハーキュリーズ、みたいな発音です。
発音の良し悪しは別として、
英語由来とされるヘラクレスとは全然発音が違いますね。
ラテン語だと、エルクレス、みたいな発音してました。
現代のラテン語では、Hが発音されないので、ヘルクレスではなく、エルクレスという発音になってしまうようです。
なぜ、日本語でヘルクレス座と訳されたかというと、たぶん、古典ラテン語の発音に由来させているからだと思います。
そもそも、天文学に限らず、学術書は昔からラテン語で書かれることが多いですからね。
14世紀ぐらいの中世のヨーロッパで起きた、ルネサンス、文芸復興というやつでは、古典文化が掘り起こされるわけですが、
その古典文化であるローマ帝国時代の書物は、ラテン語で書かれていました。
だから、古典文化を直接読むには、ラテン語ができることが求められました。
ラテン語が読めることが文化人としてステータスだったので、ラテン語がもてはやされた、というわけです。
ローマ帝国時代のラテン語を見て
君の一族はそんなことも忘れてしまったのかね
伝承の通りだ。
読める。読めるぞ。
とか言ってたんでしょうか。
この文化が今でも続いていて、たとえば新しく発見された動植物の学名は、ラテン語のルールで書くということになっています。
ただ、ラテン語そのものは、ローマ帝国の崩壊と共に分断してしまって、8世紀頃から、イタリア語やフランス語、スペイン語などに分かれていきました。
ラテン語が消えてしまって様々な言語に分かれてしまうと、聖書の内容を翻訳するときに内容がブレてしまいます。
なるべく原典に近い形で、聖書や神の教えを保たなければならない、ということで、カトリックではラテン語を使うのがルールだそうです。
だから、キリスト教カトリックの総本山であるバチカン市国だけ、ラテン語が公用語らしいです。
バチカン市国は、イタリアのローマのド真ん中にある、1平方キロメートルにも満たない、世界一小さな国で、基本的にカトリックの偉い人でないと在住することができません。
なので、生まれてからラテン語で育ちました、という人はほとんど居なくて、カトリックの聖職者になろうと志した人が、改めてラテン語を勉強する感じだそうです。
あるいは、欧米の人が、キリスト教とは関係なく、教養のひとつとして、第二外国語としてラテン語を学ぶ感じですね。
だから、世界でもラテン語がペラペラ話せるよ、という人はかなり珍しいです。
逆に言うと、ラテン語のスペルを正確に発音できる人というのも珍しい、ということになります。
だから、学術書にラテン語で書かれていても、ラテン語で正確にどのように発音されているかなんて、なかなかわからないんですね。
ラテン語は、イタリア語やフランス語、スペイン語などの元となった言語なので、この系統をひっくるめてロマンス諸語と呼ばれます。
ロマンス諸語に共通するルールのひとつに、ほぼローマ字読みをするというのがあります。
だから、ちょっとしたルールさえわかれば、イタリア語やスペイン語で書かれた文章は、発音するだけならそんなに難しい言語ではありません。
そのルーツだったラテン語も同様で、発音するだけならそんな難しい言語ではありません。
で、忘れかかってますが、ヘルクレスが現代ラテン語でエルクレスと発音される現象、Hを発音しないというやつですが、
Hの発音の脱落は、2世紀から3世紀頃、俗ラテン語と呼ばれる、ラテン語の後期には始まったとされます。
そこからイタリア語やスペイン語などに分かれていったので、たとえば、宿泊施設のことを英語でホテルと言いますが、イタリア語やフランス語、スペイン語などでは、すべてHの発音が抜けて、オテルと発音されます。
カトリック教会で話されている現代のラテン語もまた、Hを発音しません。
一方で、日本語に翻訳しようとしたときは、Hの発音が脱落する前の、古典ラテン語時代の発音で起こす感じですね。
だから、ラテン語で書かれているものを日本語で読み上げようとするとき、Hの字のところで、日本語のルールとしてハ行音が現れるみたいですね。
これが、ラテン語でエルクレスと発音されるのに、ヘルクレス座と訳された原因なのかなぁ、と思います。
ただ、ヘラクレスと発音される理由まではわかりませんでした。
6:34
それでは、本題の、ヘルクレス座の神話の話をすることにしましょう。
ヘルクレスは、大神ゼウスが、アンドロメダの娘、アルクメネーに産ませた子です。
大神ゼウスには、ヘーラという正妻がいるので、ま、そういうことで、ヘルクレスはヘーラに怨まれるわけです。
ヘーラは、ずっとヘルクレスに呪いをかけていたため、ある日、ヘルクレスは錯乱してしまい、妻と三人の子を殺してしまいます。
この辺の表現、星座の神話では珍しくないんですが、現代のコンプラ的にいろいろアウトな気がしますけど、
そういうわけで、罪を償うため、デルポイの神託に審判を仰ぐことになりました。
そして、エウリステウス王に仕え、その命令で12の冒険を行うことになります。
一つ目が、ネメアの森の化け物ライオンの退治。
これはしし座のエピソードになっています。
詳しくは、しし座のときに話します。
二つ目、レルネアのアミモーネ沼のヒドラ退治。
これはうみへび座のエピソードになっています。
これもうみへび座のときに話します。
三つ目。金色の角を持つケリュネイアの鹿の生け捕り。
四つ目。アルカディアのエリュマントス山に住む猪の生け捕り。
これはケンタウルス座のエピソードになっています。
五つ目。アウゲイアス王の家畜小屋の掃除。
六つ目。ステュムバリデスの湖に住む人々を悩ませた鳥の大群の退治。
これもや座のエピソードになっています。
七つ目。ポセイドンがクレタ島に贈った狂暴な牛の生け捕り。
これもかんむり座のエピソードになっています。
八つ目。トラキア王ディオメデスの人食い馬の生け捕り。
退治とする説もあります。
九つ目。アマゾンの女王、ピッポリテスの帯の強奪。
10番目。エリュテアに住むゲーリュオンの牛の群れの退治。
11番目。ヘスペリデスの黄金のリンゴを持ってくること。
これは、りゅう座のエピソードになっています。
そして12番目。冥界の番犬、ケルベロスの生け捕り。
これらの冒険は、普通の人間なら達成できないものです。
もちろん、こんな事をさせるようにエウリステウス王に仕向けたのも、ヘーラです。
絶対に生きて返さないつもりだったわけですね。
しかし、ヘルクレスは、神々の助けや自身の知恵と力を使って、全ての課題を12年かけてクリアしました。
罪を償い終わる頃には、その名がギリシャ中に知れ渡るようになっていました。
そして、ヘルクレスが死んだあと、その功績から、オリンポスの神として迎い入れることになりました。
こんな感じで、今回は、ヘルクレス座という名前と、神話について、話をしてきました。
それではまた、お会いしましょう。
中の人による解説の解説
7月13日の定例観望会テーマのもうひとつが「ヘルクレス座を探そう」ということで、ヘルクレス座です。
締め切りも迫っているので、そろそろまとめフェーズに入らないといけないので、星座がどこに見えるかの案内は入れませんでした。
ちなみにヘルクレス座は今の時期ならほぼ頭の真上に見えます。
天気の予報が曇り一時晴れに変わってきているので、作成意欲のテンションが微妙です。
「締め切り」とは言え、納品するわけでもなく、そもそも依頼もされていなくて、勝手にやってることです。
だから「事前に納品物をネットにアップロードしたらダメなんじゃね?」的に思っている人もいるかもしれませんが、商品としての納品物ではないのでご安心ください。
あくまでも会場の賑やかしのために、会話の邪魔にならない程度の絶妙な音量で勝手に音声案内を垂れ流しするという目的のものでしかないので、あえて話のピントがずれている話をしています。
今回は、カタカナ語星座の正しい名前と、よく耳にする名称が違う問題を掘り下げてみました。
教科書絡みだと、カシオペアとカシオペヤ座とか、ペガサスとペガスス座問題とかありますね。
ヘルクレス座と言えば球状星団のM13とかが有名ですが、望遠鏡を持っている人向けに見どころ天体の案内とかも突っ込んだ方がいいのかと思ったりする一方で、一般ウケがよろしくないので、悩みどころです。
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