スバラシースパイシー ~ブラフ系ゲームの分析を添えて~
この記事は『東大ボドゲサークル Weeple Advent Calendar 2024』の21日目の記事として書かれました。
初めまして。東大ボドゲサークル Weepleの島田と申します。
本記事ではブラフ系ゲームの分析とボードゲーム『スパイシー』の紹介をしていこうと思います。
「主観で語っているので注意」といった保険をかけたうえで記事を始めている事例が散見されておりますので、慣習にならって私も保険をかけておこうかなと思います。
主観やで!
ブラフ系ゲームの分析
そもそもブラフ系ゲームって?
ブラフ(bluff)とは「騙す」「はったりをかける」という意味の英単語です。
そしてブラフ系ゲームとは嘘をついて相手を出し抜き、相手の嘘を見破ることで勝利を狙うゲームを指します。嘘を楽しむ愉快なゲームですね。
作品としては『ブラフ』『ゴキブリポーカー』『スカル』など。
そして『スパイシー』!
なお本記事ではいわゆる人狼のような正体を隠すために嘘をつくタイプのゲーム(正体隠匿系)はブラフ系ゲームとは別のものとして扱います。
何らかの宣言・アクションによって嘘の真偽がすぐにわかるタイプのゲームを考えていきます。
ブラフ系ゲームの上手さとは?
ブラフ系ゲームにおける上手さは2種類あると考えています。
それは、
心理戦の上手さ
論理的上手さ
です。
今から1つずつ解説していきます。
心理戦の上手さ
文字通りにとらえてくださってかまいません。相手の思考を読み取る力がある、いわゆる心理戦が強いってやつです。
一番わかりやすい例としては、ババ抜きでの最終局面での「ジョーカーを含む2枚の相手の手札からジョーカーでないカードを選び抜く」ということが挙げられます。
2枚から1枚を選び抜く確率は1/2ですが、完全な運ゲーではないと多くの人は感じているのではないでしょうか。
表情や性格などから相手の思考を読む技術があればブラフ系ゲームに勝ちやすいというのは当たり前のことでしょう。
論理的上手さ
推論をもとに妥当な判断をする力のことです。ブラフ系ゲームには大抵「妥当な判断」というのが存在します。
『スカル』を例に考えてみましょう。(ルールは割愛)
このゲームでドクロを出している人が極端に大きな数字を宣言する確率は低いでしょう。
自分のチャレンジになると自爆してしまいますからね。
このことを考えると『スカル』において「大きな数字を出している人は花を置いている」と判断するのは妥当でしょう。
この考えが頭の中にある人とない人ではチャレンジの成功確率が違ってくると思われます。
また『ブラフ』では確率や期待値といったことが推論に使えます。全体のサイコロのうち〇の目が何個出ているかは確率的に予測できるからです。この予測をもとに出目の数の宣言の妥当性を判断できるでしょう。
論理をもとに各行動・判断の確率の大小を判断する力もまたブラフ系ゲームに必要でしょう。
じゃあ運は?
これまで心理戦の上手さと論理的上手さという2つの上手さを考えてきましたが、運についてはあまり触れていませんでした。
ここで提唱したいのが「心理戦の上手さをもつ人間は少ない」ということです。
表情や性格などから相手の思考を読む技術を高い精度で持っている人はそうそういません。Daigo氏(ウィッシュじゃない方)くらいです。
多くの場合、心理戦の上手さはプレイヤー間であまり変わらないと考えています。
このことを考えると心理戦の部分は大きく運が絡むと考えています。
ただ、「じゃあブラフ系ゲームは運ゲーか?」というと、そうではないというのが私の答えです。
論理的上手さがあるからです。
ババ抜きの最終局面のようなほぼ純粋な二択の心理戦は少なく、多くは各選択肢の確率の大きさに差があります。
妥当な選択肢が存在するのです。
ただ一方で、妥当な選択肢を選び続ければゲームに勝てるわけではないというのも事実でしょう。
先ほどと同じく『スカル』を例として、先ほど妥当だとした判断「大きな数字を出している人は花を置いている」に常に従った場合を考えてみましょう。
そのことに気づいた他のプレイヤーはきっとドクロを置いて大きな数字を宣言してくるでしょう。
すると、大きい数字を出した人のディスクを自信満満にめくって出てくるのはドクロ。びっくり仰天。
相手が妥当だとしている判断に対して、その判断をもとにした「一歩先の」妥当な判断をとることが可能になるのです。
ゆえに、妥当な判断をするのも大切な一方で、時には妥当な判断から外れた行動を取ることで相手の推理を掻き乱すことも大切なのです。
これらを鑑みると
推論をもとに妥当な選択肢を考え、選ぶ
どれくらいの確率で妥当な判断から外れた行動を取るべきか考える
相手が妥当な選択肢として選び続けている選択肢を見つける
といった能力が総合的な論理的上手さなのかもしれません。
この能力は人によってそこそこ変わると感じています。
最終的には心理戦という運ゲーになったとしても、そこまでに至る過程で自分に勝利を近づけることはできる。
『スパイシー』の紹介
ここからはおすすめ五号館用ボドゲとしても選出されたボードゲーム『スパイシー』の紹介をしていきます。
ルール概要
詳しいルールは説明書等をご覧ください。
スパイシーはトランプのゲーム『ダウト』の進化系です。
プレイヤーには手札としてカードが配られ、カードの「種類」と「数字」を宣言しながら、嘘も混ぜつつカードを出していくのが基本の流れです。
基本的なカードは3種のスパイス(チリ、ペッパー、ワサビ)の数字1-10。
同じカードは3枚ずつあります。
他にもワイルドカードが2種類あります。
一人一枚ずつカードを出していきますが、カードの出し方にはルールが存在します。
スパイスの種類と数字についてそれぞれ制限があります。
スパイスについては最初は好きなスパイス、以降は最初のカードと同じスパイスです。
数字については最初は1-3、以降は前の人より大きい数字を出し、最大である10のカードが出たらまた1-3に戻ると言った感じです。
まとめると「任意のスパイスの1-3」→「同じスパイスで前の人より大きい数字」→・・・→「同じスパイスの10」→「同じスパイスの1-3」→・・・という感じです。(パスという選択肢もあります)
カードを出すときは裏向きで出すので宣言はもちろん嘘でもOKです。
そして、宣言が嘘だと思ったら「チャレンジ」をします。いわゆるダウト宣言ですね。
このゲームではターン関係なく誰でもチャレンジをすることができます。
ここで大事なのが嘘の種類、つまり「スパイスが嘘」なのか「数字が嘘」なのかまで指摘しなければならないということです。
例えば実際のカードは「チリの3」なのに「チリの9」という嘘の宣言をしたプレイヤーに対しチャレンジをした際、
「数字が嘘」と指摘をすればそのチャレンジは成功ですが
「スパイスが嘘」と指摘すればチャレンジは失敗です。
「嘘をついている!」と思っても数字とスパイスのどちらが嘘なのか考えなくてはならないのです。
チャレンジが成功すればチャレンジをした人が勝者、指摘された人が敗者となります。失敗すればその逆です
チャレンジの勝者は報酬として場の全てのカードを獲得し、1枚1点として自分の得点にできます。
チャレンジの敗者はペナルティとしてカードを2枚引き、敗者から再びカードを出し始めます。
また、手札がなくなった人は10点を得ることができ、カードを6枚引いて手札を補充してからプレイを続行します。
基本的にはこれを繰り返して最も点数を稼いだ人が勝ちというゲームです。
分析から見えてくる魅力
推論がしやすいのがこのゲーム最大の魅力です。
最もわかりやすいかつ基本の推論は「10の宣言は数字の嘘が多い」というものです。カードの出し方のルール上ほかの数字よりも10を宣言することは多いのに対し、10は合計9枚しかないからです。
ほかにも、「最後の1枚はスパイスの嘘が多い」というものもあります。他人が宣言するスパイスと最後の一枚のスパイスが一致する確率はだいたい1/3だからです。
自分の手札、相手の手札枚数、宣言されたスパイスの偏りなど、考えるための材料が豊富に存在しています。
分析で述べた「論理的上手さ」が遺憾なく発揮されるというわけですね。
また、チャレンジの回数が多い、積極的にチャレンジをしやすいというのも魅力です。
チャレンジの敗者のペナルティはカードを2枚引くことですが、敗者からカードを出し始めることも加味するとこのペナルティは非常に軽いです。
そのため皆が積極的にチャレンジをします。
試行回数が多いと最終的な結果に与える運の影響は小さくなるため、『スパイシー』では他のブラフ系ゲームよりも実力が出やすいのです。
「論理的上手さで勝利をたぐりよせやすいこと」
この点において『スパイシー』は他のブラフ系ゲームを圧倒しています。
まとめ
スバラシースパイシー