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スナック「リリー」⑥百合の恋


百合と社長との関係は、妾としての義理で行っているだけで、そこには愛のかけらも無い。
 嫌嫌ながらではあるが、
百合にも生活がかかっているので致し方ないといったところであろう。

そんな百合には、ほのかな恋心を抱いた相手がいた。
純情な正義である。
 社長とは真逆な、清潔な好青年に百合の心は惹かれた。
恋心とはえてしてそんなものであろう。

百合は誘った。

「日曜日の早朝、新宿御苑でデートしない?」

正義は喜んだ。
正義は百合に惹かれていた。

そして、しばしば、デートを重ねた。

二人の間は、精神的に昇華したもので、お互いに肉体を求めることは決してしなかった。

プラトニックな恋であった。




          続く