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ある知的障がい者を抱えた親の苦悩



コロナの前のことですが、重度の知的障がいを抱えた父親と私は同じ歳ということで、かなり親しくしていました。

奥様を早くに亡くされ、父親と知的障がいの息子さんと二人暮らしでしたが、息子さんの面倒を見ることが困難になりました。
一般的に、親は子より早く死にます。
残された子に遺産を残しても、重度の知的障がいでは金銭の管理ができません。

彼は、子を介護施設に入居させることを決断したのですが、普通に入居させると、親が生涯にわたり、子の面倒をみなければなりません。
精神的にも金銭的にも親の負担になります。

親が健康で生きているうちはまだ良いのですが、彼が認知症にかかり、施設入りするか、死亡する場合も考えられます。

そこで、彼は、前払いすれば、入居者の障害年金で暮らして行ける施設を選びました。
一千万円前払いすれば、それが可能となり、息子さんはその施設で一生涯
彼の障害年金で暮らすことが可能だそうです。

彼は、それで決断したのですが、退職金や貯蓄から一千万出すと、残りが
約一千万で、自分自身の将来に不安が残ります。
健康で暮らせるうちは良いのですが、自分自身が介護施設に入るような事になると不安が残ると言っていました。

「しかし、自分自身のことは考えてもしかたないので、息子の生涯が安泰であれば、悔いは無い。」
と言っていました。
私が彼の立場であったとしたら、一千万という大金の出費は無理です。

その後、彼は、息子さんの入居している施設の近くに転居したので、消息は不明ですが、まだ元気でいる事でしょう。

重度障がい者の子を持つ親は、肉体的・精神的・金銭的に負担を強いられるものですね。




              完