「届かない手紙」拝啓ヨドセ様┃松下友香さんの企画

剛は７０歳を迎えた。

剛はヨドセに手紙を書きたくなった。
しかし、ヨドセは何処にいるかわからない。
多分、釜山ではないかと思っていたのだが、それとて確かなことではない。

第一「ヨドセ」は本名ではなく、剛が
「ヨドンセン（妹）」を間違えて呼んでいただけである。

姓のパクとて、旧姓なので、いまでも
パク姓とは限らない。

しかしながら、剛は無謀にも、
「在釜山日本国総領事館」に手紙をしたためた。
内容は「今から５３年前、下関で、パク・ヨドセと呼んでいた当時１６歳の少女宛に、もしわかれば渡していただけないでしょうか？」

領事館も、そのような無理を受け付ける訳もなく、暫く間を置いて、返事がかえってきた。

「申し訳ございませんが、当方でもあたって見た結果、そのようなかたは見当たりません。」

剛にとって、最初から、届かない手紙とは承知していたのだが、７０歳という高齢者にとって、ノスタルジックな一留の望みを果たしたかったのかも知れない。

　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　完

松下友香さん、宜しくお願い致します。🙏