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スナック「リリー」③接待


スナック「リリー」の最も忙しい時間帯は、夕食時である。

仕事帰りのサラリーマンがリリーで軽食をとり、続いて飲酒を楽しむといった按配で、
店内が非常に混雑する。

調理師の免許を持っているのは百合だけなので、百合は調理に専念しなければならない。

そんな時は、明美がお客様の相手をする。

オーダー品をテーブル席に運ぶと、テーブル席に座り、接客する。
愛嬌があり、話術も得意な明美に客は癒やされた。


たまに、接待客が訪れる。
受注担当者が、発注担当者様
のご機嫌をとるのであるが、
受注で便宜を図っていただくのが目的である。

店から領収書をもらって、会社に申請すれば、金額は払い戻される。
担当者も、儲けようと思い、
水増し領収書を発行してもらったものである。

しかし、リリーは一次会に過ぎなかった。
二次会は、新宿の高級クラブなどでホステス相手に時を過ごす。
 帰りはタクシー券なるものを渡して、料金無制限のタクシーで帰っていただく。
 大会社ともなると、ホテルを予約してお得意様を待たせ
高級コールガールを呼ぶという有り様である。
 そんな信じられないような
接待が当たり前の時代であった。

スナック「リリー」はそれらに比べると、実に質素なものであったが、お得意様は、
百合や明美の接客に満足しいたのである。



          続く

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