北風と┃シロクマ文芸部
「北風と太陽」は有名なイソップの寓話でしたね。
私が小学5年生の時、学芸会で
「北風と太陽」
の劇をやりました。
昔の小学校の学芸会の劇は、今と違って、最小限の数の主人公だけしかいませんでした。
シンデレラ姫が5人も10人もいることはなかったのですね。
「北風と太陽」の場合、太陽と北風と旅人役の3人だけなのですね。
あと、ナレーション役の生徒がいたのですが、ナレーションは舞台には出られません。
ナレーションは「放送部員」が担当しました。
昔の小学校の劇に出られるのは限られていました。
「地元の名士の子ども」だとか
「成績優秀な子ども」など、一流の子どもしか出られなかったのですね。
それでは一般家庭の親から苦情が出ます。
それを回避する為に、物語とは関係の無い「脇役」を先生は作りました。
「森の精」です。
「森の精」は3人選ばれ、私も加わりました。
「森の精」のいでたちは、画用紙に木を描いたものを紐で頭に固定するだけ、という極めて簡単なものでした。
両親は、水筒と手弁当を携え、大喜びで学芸会の見学に来ました。
息子の一世一代の晴れ姿を見る為ですね。
当時は校則も緩く、学芸会には酒を持ち込んでも良かったように記憶しています。
〈 〉はナレーションで、ここではWiki の文章を転記しています。
〈ある時、北風と太陽が力比べをしようとする。そこで、通りすがりの旅人の外套を脱がせることができるかという勝負をすることになった。〉
ここで、「北風」と「旅人」が登場しました。
〈まず、北風が力いっぱい吹いて、旅人の外套を吹き飛ばそうとする。しかし、寒さを嫌った旅人が外套をしっかり押さえてしまい、北風は旅人の服を脱がせることができなかった。〉
そこで北風は嘆きます。
「俺の風の力では外套を脱がすことはできなかった。」
次に「太陽」の出番で、旅人のまわりを笑って舞います。
〈その次に、太陽が燦燦と暖かな日差しを照りつけた。すると旅人は暑さに耐え切れず、今度は自分から外套を脱いでしまった。こうして太陽の勝ちとなった。〉
ここで太陽は、勝どきの声をあげます。
「どうだ北風よ、力では外套は脱がす事は出来ない。外套を脱がす事が出来るのは温かい太陽の愛の力なのだ!」
そこで「三人の森の精」は口を揃えて
大声で叫びます。
「そうだ! そうだ!」
たったこの一言だけが「森の精」のセリフだったのですね。
ここで、劇は終わりとなるのですが、場内は、拍手の嵐となり、父の叫び声が聞こえました。
「散歩〜、良かったぞ〜!」
たったこれだけのことで、両親は大感激しました。
「森の精」という大役を果たした私は
チョッピリ自慢で、微笑みました。
おしまい
小牧幸助さん、よろしくお願い致します。