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たまる物語「花一匁」


宝積たまる。さんの企画
「たまる物語」に
参加させていただきます。



昭和30年を少し過ぎた頃、
私は小学3年生だった。

虚弱児で運動音痴の私は
男の子の遊びである
「三角ベースボール」の
仲間に入れてもらえなかった。
遊び相手は女の子である。

女の子も少人数なら
「ままごと遊び」や
「お人形さんごっこ」で
すむが、大人数があつまると
「花いちもんめ」をした。

これは、年配の女性ならご存知だと思うが、ルールを説明する。

女の子たちが10人以上集まり、二手に分かれて整列し
大将がジャンケンする。

そして向かい合って歌う。
歌う時には、歌いながら
数歩前進し、最後に足を蹴り上げる。

勝「勝ってうれしい花いちもんめ」

負「負けて悔しい花いちもんめ」
お互い、「め」で蹴り上げる。

勝「あの子がほしい」

負「あの子じゃわからん」

勝「相談しましょ」

負「そうしましょ」

ここで、勝ち組は、相手組の可愛い子ちゃんを指名して
その子は勝ち組に加わる。

ジャンケン勝負であるが、勝ち組は勢いがあるので、かなり勝つ。

負け組は、次第に人数が減り
最後は人気の無いブスが残る。

その子は泣き出した。
私はその子が可哀想になった。
「何て残酷な遊びだろう。」

しかし、子ども心に、それは
言えなかった。
私が仲間外れにされると、
私の遊び場所が無くなってしまう。

可哀想な女の子は、誰もかばう相手がなく、ただ涙を流していた。


可哀想になった私は、日本人の女の子達とは遊ばなくなった。
私には、韓国部落の子ども達がいた。


この「花一匁」の解説をラジオで聞いたのは、40歳を過ぎてからである。

東北地方の極貧農家が、人減らしの為、少女を遊廓に売る。

農家に女衒がやって来て、少女に値段を付ける。

女衒は少女の花代は一匁という。
農家はしかたなく少女を一匁で売る。
女衒はほくそ笑んで
「娘の花代が一匁で買えて嬉しい(買えて嬉しい花代は一匁)=(買って嬉しい花代一匁)」
娘は悲しむ。
「私の花代をたったの一匁に負けてしまって悔しい(負けて悔しい花代一匁)」

この童歌には、そういった意味が込められているという。
少女はその意味を知ってか知らずか、遊びとして歌う。


実際に、花代が一匁と言う事はないが、童歌とは残酷なものである。

幼い少女の童歌としての遊びに使われた。

    
         終わり


妻は私のことをおとうさんと呼ぶ

「ねえ、おとうさん、この話で何がたまったの?。
知識?」

「雑学じゃよ、わしは昔から雑学をためているんじゃ〜。」

「わたしはお金がたまって欲しかったわ。」

「 ― ― ― ― ― 」