見出し画像

スナック「リリー」①プロローグ


1975年に、新宿歌舞伎町の入口付近に、スナック
「リリー」がオープンした。

雇われママの百合(29歳)は歌舞伎町のナイトクラブで働いていたが、社長(42歳)に見染られ、妾となった。

百合はいつの日にか、自分の店を持ちたいと思い、調理師の免許を取得していた。

 そして百合に、スナック「リリー」が与えられた。
 店名は百合(ユリの花)の
英名Lilyに由来する。

百合はまさしく百合の花のごとくしなやかな身体付きで
キリリッとした一重瞼の美人である。


スナック「リリー」に、クラブ時代からの親友、
明美が手伝いに来ることとなった。

明美は、ポッチャリ系の可愛らしい娘、とは言っても、
27歳ではチョッピリ年増ではあるが、女盛りではある。


歌舞伎町としては、健全な店で、若いサラリーマンが会社帰りの客で繁盛する店となった。

店で一番安いボトルは、サントリー角瓶で、五千円という
サービス価格で、安月給取りには嬉しい値段であった。
ダルマでも八千円、これも安い。

おつまみは、アタリメ・エイのヒレ・野菜スティックが
各五百円。
水割り用の氷が1ケース五百円
そして、軽食は、ナポリタンとピラフが、各九百円で
サラリーマンが、帰り際、軽食をとりながら、水割りやロックを楽しめる店で、かなり
繁盛した。

店内は、テーブル4席、カウンターが12席で、収容数は
かなりある。

店内にはジュークボックスが設置されており、1曲100円である。
ジュークボックスなので、曲数はあまり無いのだが、音楽好きの客は、同じ曲を繰り返し聴いていた。
他の客は、BGM代わりに楽しむのであるが、歌謡曲は少なく、ムードミュージックが多かった。

百合と明美は、元クラブの経験者だけあり、接客態度は慣れたもので、客を飽きさせることは無かった。




          続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?