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山田金一物語余話:「子ども柔道指導」

余話は思いつきで書いているので、年代順ではない。


金一の柔道の腕前は、完璧に
黒帯クラスであった。

ところが金一は、柔道の昇段試験を受けなかった。
金一にとって、段位など問題外で、白帯のままだった。

金一は定期的に、警察署の柔道部で稽古に励んでいた。
柔道部の連中は、金一の腕前は認めていた。

ある日、警察署から
「子ども柔道の指導者になってくれないか?」と
頼まれた。
金一は子ども好きだったので
快く引き受けた。

剛が中学生になった頃、
金一は「お前も柔道の稽古をしろ。」と命令した。
これは、武道の教育の一環である。
柔道着は、子ども用は柔道部で無料で貸し出していたので
それを借りた。

最初から技は無理である。
毎度、受け身の訓練に終始した。

受け身がある程度終わると
金一は、いきなり一本背負い
の練習をさせた。
最初から子ども二人で組手をさせた。

剛は運動音痴である。
一本背負いをかけるなんて
無理である。
剛は、突っ立ったままなので
相手が一本背負いをかけてきた。
剛は受け身は得意である。
わざと自分から回転し、受け身の体制をとった。

それを見た金一は怒った。

「わざと投げられたな。!」

運動音痴の剛には、その言葉が胸に突き刺さった。

剛はそれから柔道は辞めた。

金一は、何でも自分と比較するので、皆がその程度は出来るものと思いこんでいたが、
これは、金一の焦り過ぎで
子ども柔道指導に自信を無くし、やがて、子ども柔道指導から手を引いていった。


     この余話 終わり