山田金一物語余話:「火事見張り」
余話は思いつきで書いているので、年代順ではない。
剛が小学校3年の頃
夕刻に韓国部落の一軒が、火事で燃えはじめた。
小さな家とはいえ、家屋は燃えやすい材質で、火の粉がまいあがった。
折からの東風に乗り、事務所の屋根まで火の粉は降りそそいだ。
金一は地下足袋に履き替え、事務所の屋根に登った。
次々と襲いかかってくる火の粉を足で踏みつけ消し止めた。
事務所の屋根は、瓦葺きではなく、トタン屋根だったので、火に弱い。
金一は1時間以上、火を消し止めたので、事務所は延焼することは免れた。
金一の手柄であったが、明子が次の日に、事務所長に報告したが、これは管理人として当然の任務を果たしたこととなり、とりたてて報奨は無かった。
明子は不満であった。
剛は父の火消し光景をみて
かっこいいと思った。
剛は父を尊敬しはじめた。
この余話 終わり