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山田金一物語余話:「合成酒」
剛の大学受験は決まり、明子は、うどん屋に務めて、家計の足しにした。
そこで、明子は、金一に相談した。
「私が学費を稼ぐ代わりにあなたは酒の量を減らして、生活費を倹約していただけないでしょうか。?」
金一は、女房を働かせている手前、この申し出は断ると男がすたるとおもった。
そこで金一は考えた。
「酒を安いのにかえよう。」
金一は毎晩安い二級酒を二合飲んでいた。
それをもっと安い「合成酒」
にかえたのである。
二級酒は、一応「清酒」だが
「合成酒」は、清酒の絞りカスにアルコールと糖分を添加して作った、正に合成された酒で、酒と言うよりアルコール飲料と言ったほうが近いかも知れない。
勿論、値段は二級酒の半額以下である。
それも、二合ではなく、一合に決めた。
しかし、今まで二合飲む習慣がついていたので、一合では足りない。
そこで金一は考えた。
市営住宅の坂道の下に、銭湯と酒屋があった。
まず銭湯に入り、風呂上がりに酒屋に寄った。
そこで量り売りの合成酒を一杯ひっかけて、自宅まで坂道を上りダッシュした。
帰りつくと、身体中にアルコールがまわり、一合でほろ酔いかげんとなった。
あとは軽い夕食をとり、寝るだけである。
そんな生活を、剛が大学を卒業するまでの4年間も続ければ、身体がおかしくなる。
剛が大学を卒業して、就職する頃は、体調がすぐれなくなった。
これが、金一にとって、鬱病が酷くなる一因となった。
この余話 終わり