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昔の下関の唐戸岸壁は小アジ釣り放題だった



私が中学生時代、下関の唐戸岸壁は、小アジが大量にやってきました。

中学生の時代の私のお小遣いは、月に500円でした。
1日あたり約20円ですね。
これでは漫画本も買えないのですが、少年マガジンと少年サンデーは親が買い与えてくれました。
5円の大きな飴玉は健在でしたが、駄菓子屋さんのお好み焼きは10円しました。
そうすると、残りは僅かですね。

山の口町の市営アパートから唐戸までは徒歩40分くらいだったので、釣り道具とバケツを抱えて、唐戸の岸壁まで、一人で魚釣りに行きました。
唐戸には当時魚釣り道具と魚釣りの餌を売っている店があり、そこで10円の竹竿と、1本5円の擬餌針を買いました。
竿はほぼ夏休み中使えるのですが、擬餌針は2〜3回で切れました。

当時の唐戸岸壁は、膨大な数の小アジがやって来て、擬餌針を上下するだけで幾らでも小アジが釣れたのですね。
しかし、海水を張ったバケツは小アジですぐに一杯になります。
運んで帰るのが大変なので、バケツ一杯で釣りを辞めて帰りました。

父は魚が大好きで、小アジを好んで食べました。
小さいけど、上手くさばくと、ちょっとした刺身になりました。

しかし、何しろバケツ一杯の小アジですから余りますね。
そこは上手くしたもので、小アジを焼いて「酢漬け」にすると、2〜3日は食べられます。

父は飽きずに毎日夕飯に小アジを食べました。
昔は食糧は貴重品で、持ち帰った魚は残さず食べなければならなかったのですね。

バケツ一杯の小アジがなくなる頃、私はまた小アジを釣りに行きたくなるのですね。

そのような事を夏休みに永遠と続けるわけで、ついに父は音を上げました。
私が持ち帰ったバケツ一杯の小アジをみた父は叫び声をあげました。

「またアジか!」


母の葬儀で下関に帰った時に、唐戸の岸壁で魚釣りをしていた人の釣果を見せていただいたのですが、バケツの中には小さな食べられない河豚が一匹だけでした。

大量の小アジは何処かへ消えてしまったようです。

「マジか!」




              完