彼女のつかえる恋の魔法は五分だけ
女の子は魔法つかいだ。ぼくはいつもそう思っている。もちろんホウキにまたがったりはしてないし黒い三角帽子もかぶっていなかった。
その日ぼくは同級生の彼女と一緒に帰っていた、すると突然。
「リョウくん。五分だけ目をつぶって」
そんなことを言われた。目をつぶらなければならない理由を聞きたい気持ちはあったが、なぜかぼくは彼女の言うとおりにしてしまう。
女の子というよりも彼女だけが魔法なのかもしれない。
五分だけ。
カップラーメンだと命とりになってしまうほどのそんなわずかな時間をつけくわえているだけなのにぼくはついつい従うことに。
「もういい?」
そろそろ五分ぐらいは経っただろう。そう思い、ぼくは彼女に聞いてみた。
「うん。オッケー」
両目をつぶっていても音は聞こえるので。なんとなく彼女がなにをしていたのかは分かっていた。
「なにを入れたんだ?」
自分のスクールバッグの中をしらべようとすると手袋をつけた彼女の両手がぼくの右手を包みこむ。
寒いせいか彼女の両手はすごく震えていた。
「今は、まだダメだよ」
「そこは五分じゃないのな」
彼女が首をかしげる。どうやら自分が魔法つかいだということは知らないようだった。