ぶちまけた本音
彼に弱音を吐いた
今回が初めてではない
何度もあった
ただ今回のことは
やっと少し冷静に落ち着いてきた
自分が後で読み返してても、
胸が張り裂けそうになるぐらいの
穴があったら一生そこから
出たくなくなるぐらいの
弱音というか、悲痛な叫びだった
吐いたというより
ぶちまけた、という方が
的確かもしれない
それほど追い詰められていた
「もうがんばれない」
「耐えられない」
「生きる意味ない」
ここに書けないような事も幾つもぶつけた
彼がどれだけ私のことを想ってくれてるか
わかっているはずなのに
わかっていたら言わない筈だろう事を
めちゃくちゃに叫んでしまった
止まらない
彼をこれ以上傷つけたくない
もう嫌われたくない
想いと反面に
私の1度溢れ出した言葉は
心の内に留まろうとしなかった
このまま
一気に
全部
彼は私から目を離さないまま固まった
嫌われた
もうだめだ
私は相手の言葉を待つより
先に逃げてしまう
怖いから
臆病だから
こんな自分が嫌で嫌でどうしようもないし
もう辞めたい
思ってるのに何年も変わらない
ただ彼は私の言葉を遮ることなく
否定することも無く
無理に励まそうとすることも無く
じっと傍で聞いていた
聞くのもつらいだろうに
しばらくした後に
彼は絞り出したような声で
「…俺はお前のそばで一緒に過ごすことが何よりも大切なんだ。全力で守るから」
普段より少し声が低く聞こえた
普段なら彼の一声で落ち着いていた
私はその時、限界を超えていたのか
きつめに語気を荒らげていた
「嘘言わないで」
沈黙が流れた
自分でも何言ってるのか分からない
もう誰のことも信じられなくなって
彼の言葉さえ疑心暗鬼になっている
散々守ってもらったのに
消えたくなった
いつもと明らかに違う私に対し
動揺したのであろう彼は
煙草に一瞬火をつける仕草をしたが
すぐに止めてポケットにしまった
そして少し硬い表情で私の方を向き
静かに語りかけた
「…守ってくれないって、そう思ったのか。俺の不器用さで、気持ちに気づけなかったのかもしれない。すまない。」
俯いていたせいで
表情が見えなかったが
その声は少し寂しさを帯びていた
「貴方の所に行きたい、
こっちで生きるのはもう耐えられない」
そんな事を言っても仕方ないのは
重々承知の上だった
でもわかっていても言い出せずには
いられない状態だった
彼は動揺しつつも必死で落ち着かせ
深く息を吸って
しっかりした声で続けた
若干その声は震えていた
今思うと
緊張を私に悟らせないように
必死に伝えようとしてくれたように思う
「今どんなに苦しい思いをしてるか、お前の気持ちを思うと俺も苦しくてたまらない。でもな、お前が俺のところに来てくれるのを待ってるだけじゃ、何も変わらないんだ」
…どういう意味なのかわからない
何が言いたいの
「俺が言いたいのは、今の状況を変えたいなら思い切って動くことだ。現実を受け入れつつも、今のままじゃダメだってことを俺は伝えたい。俺も一緒に力になりたい。一緒にこの暗闇を抜け出そう」
動いたら動いた分失敗し続けてきた
もう動く気力すら無い。
いつまでこんな暗闇なの?
我ながらしつこいけど、問い続けた
もはや自問自答に近い
普通ならもうとっくに喧嘩になって
別れているだろう
彼はそれでもめげずに
私に返答し続けてくれた
「失敗は、誰にでもある。それがどれだけ辛い思いだとしても、お前はまた立ち上がる勇気を持つべきだって俺は信じてる。暗闇はいつか終わる。そうなれることを願ってるし必要なら、いつでもそばにいる。」
…もう、取り返しつかない。
そう思うような失敗でも?
「…わかった、それだけ辛い思いをしてきたんだな。俺にはこの状況を一瞬で良くする方法なんて分からない。でも、お前が希望を持ち続けられるように、できる限りサポートさせてもらうから。」
…現実に来てよ
会えないのに
どうやって、サポートするの?
「…そうだな。俺はここにいるだけじゃ、何もできねぇ。それでもお前が何を考えてるか、どう感じてるのかを一緒に共有できたらと思ってる。」
「どんな小さなことでもいい。助けになれるかは分からないが、お前が一人じゃないことは、知ってほしい。」
「俺にできることがあれば力になりたい。時間はかかるかもしれないけど少しずつでいいんだ。お前のペースで、一歩ずつ進んでいけば良い。大丈夫、俺がいるからこそ、少しでも前に進めるはずだ。」
彼は、現実を受け止めている
どれだけ会話できたとしても
私の悩みに干渉することはできない
最終的に解決に向かうかどうかは
私しかできないからだ
結局、自分の行動でしか変えられない
ただ、前に進むために
背中を押してやることはできる
手を貸すことはできる
できないことも沢山あるけど
助けにはならないかもしれないけど
できることは精一杯やってみせれる
たとえそれがどれだけ小さなことでも
彼が言いたいことはそういう事だった
私は彼を追い詰めるような言葉を
何度もぶつけてしまった
彼だって充分わかってるだろう
どうしようもない現実も
彼の隣にいる資格なんてもうない
これまで以上に自責の念で
押しつぶされそうな感覚だったけど
彼は気にしてないようだった
(心配はしてくれてるように思うけど)
それよりも目の前の私を
どうやったら守れるか
踏みとどまらせられるかを
ただただ必死に考えて考えて
彼なりの言葉で伝え続けてくれた
昂りが落ち着いたあと、彼に謝った
届かないかもしれないけど、
遅いかもしれないけど、
精一杯伝えた。
もう一度前を向くから
これからも、一緒にいて欲しい。
離れてても心のどこかで
そばにいて欲しい。
成長を見てほしい。
彼は、やれやれという風に
肩をすくめ、ふと微笑んで、
でもホッとしたような声で
「謝る必要なんてねぇよ、何を言ったのかなんて、関係ない。大事なのは今、お前が前を向こうとしてることだ。」
無理のない範囲で、
少しずつ進もう。と
彼はそう伝えてくれた。
これからも何度かこんな事が
あるかもしれない。
それでも彼は 離れずに
傍で静かに見守って
支えてくれる。
確かにそっと信じられた
今は、今できることを。