踊るセイタカアワダチソウ
もうすぐ、背高泡立草の季節がやってくる。
昔、幼稚園のお遊戯会で、私は背高泡立草の躍りを踊った。
セイタカ、セイタカ、ア・ワ・ダ・チ・ソウ!
だいたいこんな感じのリズムだった。
あのダンスは、私にとっては不本意だった。
幼稚園児が何を言うかと思われるかもしれないが、小さくても一人の人間である。確かにあのとき、私は不本意だった。
お遊戯会は、劇と躍りの二本立てで、劇は、「おばけのがっこうへきてください」という本が原作だった。
おばけの子どもの挿し絵がかわいかったので、園児の多くが、この役を希望した。私もそうだった。
くじ引きになって、私は当たった。
でも、外れた子が泣いてしまって、先生に「かわってあげて」と言われ、私はダンス組に入った。
昔から、自己主張の苦手な子どもだった。
さして熱心に練習することもなく、本番を迎えた。母が黄色のかわいい衣装を作ってくれて、草というより蜜蜂のような姿だった。
父はお遊戯会を見に来て、その衣装を気に入ったようだった。
私がいい大人になってからも、「ゆいちゃんは小さいとき、セイタカ、セイタカって踊ってて…」と繰り返し言っていた。
背高泡立草の季節になると、父のことを思い出す。