見出し画像

木を植えた男、との出会い

本との出会いは、時に運命的だ。
ジャン・ジオノ作、フレデリック・バック絵「木を植えた男」との出会いは、全くの偶然だった。

子どものころ、誕生日には必ず本を買ってもらっていた。
ある年、祖母から誕生日プレゼントに何がほしいかと聞かれ、 欲しかった本が紹介された新聞の切抜きを、手紙に同封して送った。

その年の誕生日、祖母から二冊の本が届いた。
お願いした本のほかに、「木を植えた男」の絵本が包まれていた。
私は不思議に思って、でも祖母には言いづらくて、ありがとうとだけ、電話で言った。
母によれば、私の切抜きの範囲が大きすぎたせいで、目当ての本のほかに、「木を植えた男」の本の紹介も載っていたらしい。
祖母は、両方欲しいのだろうと思って、二冊とも買ってくれたのだった。

そんなふうにして出会ったこの本は、内容も絵も、とりわけ美しい本だった。
だれもが見捨てた荒れ地に、一人で木を植え続けた男。その活動はやがて実を結び、美しい土地に生まれ変わる。
あらすじだけ語ってしまうと、あっさりしているのだけれど、優しいタッチの絵と、淡々とした文章とが、胸を打つ。

私の切抜きミスと、祖母の優しさとで、偶然に出会った本。
今でも私の宝物だ。


いいなと思ったら応援しよう!