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チャムという姉
昔、祖母は、シャム猫を飼っていた。
名を、チャムという。
近所のシャム猫に子どもがたくさん生まれて、その一匹をもらってきたらしい。
メロンの箱に入れられて、チャムはやってきた。
全身真っ白だったのに、だんだん顔と手足が黒くなり、見事なシャム猫になったとか。
私は猫が好きで、でも父が転勤族だったために家では飼えなかったので、祖母の家でチャムに会うのがとても楽しみだった。
チャムは子どもが嫌いで、とりわけ私のいとこの三兄弟を恐れており、いとこ一家の車が来る音がすると、サッと立ち上がり、一家が帰るまで姿を見せなかった。
そんなチャムだったけれど、私には寛大だった。
猫は家族の序列を把握していて、自分のことを下から二番目に位置付けていると聞いたことがある。
実際、チャムは、末っ子の私より上だと自負しているようであった。
綺麗好きで、人に触られるのが大嫌いだったけれど、私に対しては、多少不愉快そうな顔をしながらも、どこを撫でても決して怒らなかった。ああまた小さいのが来て、仕方ないわね、と言わんばかりの態度であった。
いつも綺麗にしている彼女の毛皮は、とてもさわり心地がよかった。
ある夏の日、祖母から綺麗な絵葉書が届いた。
「チャムは、お星さまになりました」
年齢的には長寿といってよかったし、苦しまなかったようだけれど。
チャムは生涯で一度もネズミを捕らなかった。
でも、チャムの死後、祖母の家にはネズミが出るようになって困ったらしい。
チャムは、ただそこにいるだけで、あの家を守っていたのだった。
姉のチャム。
彼女の思い出は、いつもふわふわとあたたかい。