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夕焼けに

先日、道に迷った。
極度の方向音痴なのに、知らない街で待ち合わせをしてしまい、看板の地図を見ても、スマホアプリを見ても、自分がどこにいるのか、さっぱり分からない。
遅れていることの焦りもあいまって、ますます頭が混乱する。

以前、迷子の不安を美しく表現している歌に出会った。穂村弘「はじめての短歌」で紹介されていた歌。

たはやすく宇宙よりかえる人のあり夕焼に家見失ふ人あり                                    

潮田清



夕焼けに照らされて、いつもの道が全然違って見えたのか。
同じ人間に生まれながら、宇宙まで行って、さらっと帰ってくる人もいるのに、自分には、帰る家すら分からない。

道に迷うって、不安で、みじめだ。
でも、そんな気持ちを、こんな素敵な歌にすることもできるのだ。


結局、見知らぬ街で迷子になった私は、道行く人に助けられ、最後はお店の前まで案内してもらって、なんとかたどり着いた。
友人には、「知らない人に、よく道が聞けるね!」と驚かれたけれど、地図の読めない迷子を救ってくれるのは、いつだって人なのだ。

親切な人の多い街でよかった。
でも、しばらくは、もうどこにも行きたくない。

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