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Venetian Snares 19枚のアルバム感想とティア作成

Venetian Snares名義でリリースされたアルバムのみに絞りました。

EPはありません。

初期のセルフリリースのアルバム(Spells、Subvert!、Rorschach Stuffocate)はありません。なぜなら、あんまり興味が湧かなくて聴く気がないからです。

対象のアルバムは以下の目次のとおりです。



やってくぞ!よっしゃよっしゃよっしゃ!

よっしゃ!


1.printf("shiver in eternal darkness/n") (2000)

他のアルバムよりもクールで落ち着いた印象を受けた。ヴェネスネの特徴ともいえる、暴走気味で騒々しい音楽性はこの時点で完成されてる。あまり印象に残る曲はないとはいえ、アルバム全体のシックな雰囲気は良いです。StuckはRossz~のHajnalを彷彿させる曲だった。この頃はまだ四拍子が多いんだね。

好きな曲:Intense Demonic Attacks、AQAP、Molting、Stuck


2.Songs About My Cats (2001)

個人的にかなり難易度が高かったアルバム。尋常じゃなく取っ散らかった音楽しかないので、最初は本当に意味が分からなかった。でも確かに、タイトルのとおり猫っぽい音楽だなあ。カオスだけどかわいらしい。音楽で猫を表現するというコンセプトは面白いです。ピアノの上を歩く猫を想起させる曲があったりする。でも間違いなく1回聴いただけでは咀嚼しきれない。
このアルバムを聴きながら車に乗っていたらめちゃくちゃ車酔いしたこともあり、印象は悪いです。

好きな曲:Chinaski、Poor Kakarookee


3.Doll Doll Doll (2001)

ダークな傑作。ジャケットからもわかるように、悪趣味かつ不気味な作風。邪悪な雰囲気は本当に素晴らしい。児童殺害をテーマにしたアルバムらしい(そんなものをテーマにするな)。暴力的な変拍子のビートはヘビーで(そういえば今年は蛇年ですね)、ノイズやメロディ、サンプリングはいずれも不穏。それなのにめっちゃノレちゃう。ブレイクもまじでかっこいい。そして、Dollmakerという稀代の名曲がある時点で聴く価値はある。最初はこのアルバムの良さがあまりわからなかったが、この曲だけは最初からはまれたよ。チェロが中心のジャズのようなパートから始まり、叫び声のサンプルから歪んだシンセと激しいビートが場を支配します。

好きな曲:Pygmalion、Remi、Dollmaker、Pressure Torture


4.Higgins Ultra Low Track Glue Funk Hits 1972–2006 (2002)

バラエティ豊かなサンプリングによる統一感の無いトラックの集まったアルバム。一般的なブレイクコアという感じでまとまりはなく、あまり作家性などは出ていない印象です。ですが、それぞれの曲は楽しく聴けて良いと思います。全体的にメロディックな曲が多い印象で、前作のような陰鬱さは鳴りを潜めていますね。Dismantling Five Yearsはビートが一切ないアンビエントトラックで新鮮でした。最終曲のWe Are Oceansもメロディが良すぎます。afxやsquarepusher感もある。

好きな曲:Dance Like You're Selling Nails、Banana Seat Girl、Dismantling Five Years、We Are Oceans


5.Winter in the Belly of a Snake (2002)

IDMに進出したアルバム。個人的にめっちゃ大好きなアルバム。寂寥感の漂う作風が素晴らしいですね。不安をあおるような曲が多いですが、Doll Doll Dollのような暴力的な不安感とは異なり、冷たさを感じるような仕上がりになっております。やはりヴェネスネはダークな作風が似合うわね。彼の繊細な感性を感じさせられます。暴力的なビートとアンビエンスなメロディの組み合わせが最高としか言いようがない。DadやSheなどの歌モノの曲が増えているのも特徴的です。GottrahmenやWarm Bodyなどの短いビートレスな曲が差し込まれることで、アルバム全体が引き締められる効果も生まれています。
グリッチを主体とした金属質で無機質な音作りは、Huge Chrome~へと受け継がれることになるよ。

好きな曲:DadStairs Song、Tattoo、Gottrahmen、Suffocate、In Quod、Fraujäger、Earth


6.The Chocolate Wheelchair Album (2003)

とっても楽しい純正ブレイクコア。Higgins Ultra Low Track~と同じような方向性のアルバムです。頭空っぽにして楽しみたいときや、とりあえず踊りたいときはこれを聴こう!それぞれのトラックに統一感があるわけではないのですが、アルバム全体では遊び心という点で一貫性があるような気がするです。そして、ユーモアあふれるサンプリングの数々は、このアルバムをポップかつキャッチーにすることに成功しています。ドラムとサンプルの掛け合いは音ハメ的な面白さもある。アルバムのハイライトは間違いなくEpidermisでしょう。スネアとハイハットが暴走する中で、電子ピアノのコードとサンプルの歌声が合流する場面は圧巻。

好きな曲:Abomination Street、Too Young、Einstein-Rosen Bridge、Hand ThrowEpidermis、Sky Painted on Car


7.Huge Chrome Cylinder Box Unfolding (2004)

美しいIDM。Winter in the~の作風を進化させたアルバム。軽い金属のようなビートがランダムに叩き込まれ、穏やかな和音とメランコリックな音色が静かに鳴っています。暴力性や激しさはそこまで強くなく、キャッチーでかわいらしさのあるような音です。私ははじめ、少しださい音だなと思ってしまいました。でも、今までで最も前衛的かつ奥深しい作品で、とても聴きごたえがある良いアルバムです。聴けば聴くほど新しい発見があります。
このアルバムはAutechreに似ているとよく言われます。Autechreばかり聴いていると自負している私が本当にそうなのかお教えします。ずばり、メロディの付け方がそっけない感じが似てるなと思いました。例えば、Cadmium Lung JacketやVidaのメロディはLP5やEP7ぽさがあります。軽めで複雑なドラムはUntiltedに近いかも。aeファンにもおすすめできます。

好きな曲:Huge Chrome Peach、Bonivital、Cadmium Lung JacketVida、Li²CO³、Ion Divvy、Bent Annick、Aaron、


8.WINNIPEG IS A FROZEN SHITHOLE (2005)

ノリと勢いが凄い単純なアルバム。タイトルのWinnipegはアーロンファンクの出身地であるウィニペグ州だそうです。すごいね。
前作が穏やかで前衛的な作品だった反動か、ほとんど激しいガバのみで構成されていて、BPMもめちゃめちゃ高くて暴力的。しかし、あまり記憶に残る曲はない。かっこいいトラックもあるが、変わりばえしないので飽きてしまう。あんまり聴き返すことはないかも。

好きな曲:Winnipeg Is Fucking Over、Die Winnipeg Die Die Die Fuckers Die


9.Rossz Csillag Alatt Született (2005)

みんな大好きなアルバム。タイトルの読み方は未だにわかりません。説明不要のヴェネスネで最も知名度のある作品ですね。クラシックとブレイクコアを掛け合わせるというとても安易な発想なのに、完璧に調和されてしまって、大傑作たりえている。ただただ最高なだけのであんまり書くことがない。ヴェネスネの最高傑作と名高いHajnalとか、後半ちょっとやりすぎなMásodik galambとか、名曲ぞろい。どの曲もドラマチックな構成で、どの曲も素晴らしいドラムプログラム。

好きな曲:Szerencsétlen、Öngyilkos vasárnap、HajnalMásodik galambSzamár madár


10.Meathole (2005)

ホラーテイストでハードコアなアルバム。Doll Doll Dollと近い雰囲気の作品。おどろおどろしく、ラウドネスでとてもかっこいい。アルバム全体を通して狂気じみた暴力性をはらんでいるという点で一貫しています。どの曲もドラムの音が重たくてずしりと響くのが良いです。ただ、Dollmakerのようなわかりやすい名曲はなく、個々の曲の区別がつきにくいと思ったよ。

好きな曲:AanguishChoprite、Contain、Aamelotasis、Aaperture


11.Cavalcade of Glee and Dadaist Happy Hardcore Pom Poms (2006)

多様な電子音楽が詰め込まれた素晴らしいアルバム。1曲目Donutでアシッドをやったかと思いきや、2曲目Swindonでは哀愁漂うメロディと緻密なドラムプログラムでIDMっぽく、3曲目Pwntendoではゲーム音楽的なチップチューンまでやっている。全体的にはサンプルが少なく、電子音楽の側面が強まっていますね。そしてこのアルバムはどの曲もメロディが天才的に良い。七拍子や五拍子などの変拍子で、メロディアスな音楽が高速ビートとやってきます。終盤にかけてメランコリックな曲が続き最終曲のCancelへと至りますが、この曲が本当に素晴らしい。アルバムの最後を飾るにふさわしい壮大かつ儚げなブレイクコアです。
美しい旋律と高速ビートという点で、全体的にAphexのDruqsに似ているなと思いました。

好きな曲:DonutSwindonPwntendoVache、Plunging Hornets、Twirl、Tache、Cancel


12.My Downfall (Original Soundtrack) (2007)

Rossz~の続編的クラシックアルバム。Rossz~との違いは、ビートが少なくブレイクコアが薄れているということです。丹精込めて端正に作られた荘厳で流麗な音楽で、とても感動的だわ。弦楽器による合奏のHolló Utcaシリーズはバルトークみたいでかっこいい。ただ、どうしても私は刺激を追い求めてしまうので、パーカッションが敷き詰められている曲を好んでしまいます。例えば、Integraationではクラシック×ブレイクコア×アシッドという面白い試みをしています。
ちなみに、実際に何かのサントラというわけではないです。

好きな曲:The Hopeless Pursuit of Remission、Holló Utca 2、Integraation、Holló Utca 5、Holló Utca 3、My Half


13.Detrimentalist (2008)

原点回帰作。サンプリング盛りだくさんの、伝統的なブレイクコアアルバム。とてもバリエーションに富んでいて、飽きずに楽しめるアルバムだと思います。アシッドなトラックが増えているのが結構面白かったよ。 アルバム内で特に好きな曲は9曲目Bebikukorica Nigiri。拍子以外はかなりまっすぐな曲で、きれいなコードとメロディが良かったです。でも新鮮味を感じる部分は少なくて、個人的にはあまり好きではなかったです。

好きな曲:Gentleman、Koonut-Kaliffee、Bebikukorica Nigiri、Miss Balaton


14.Filth (2009)

Detrimentalistでアシッドな曲が増え始めていたが、今作は完全なるアシッドアルバムとなりました。4曲目のMongoloid Alienは目まぐるしく展開して楽しめます。ですが、似通った曲が多いなと思いました。アシッド一本というコンセプトは面白いけど、平凡なアルバムになってしまったという感が否めない。肩の力を抜いて軽く聴けます。
Songs About My Catsぶりに、彼の飼い猫であるKakarookeeの名前がタイトルに出てきて驚いた。それと今作はタイトルが下品なものが多いね。

好きな曲:Mongoloid Alien、Kakarookee Hates Me


15.My So-Called Life (2010)

タイトルに人生と掲げたことからもわかるように、今までを振り返るようなアルバム(なのかな?)。アーメンブレイクの敷き詰め方もいつもより気合が入っている気がする。ボーカルサンプルがとても多く、ユーモラスな滑稽さが強調されている。HajnalのリミックスであるHajnal2の存在には驚かせられました。目新しさは全くないけど過去の音楽を彷彿とさせる場面が多い気がする。Aaron2とHajnal2は言わずもがなだし、Chocolate~のボーカルサンプルの多用や、Cavalcadeのメロディアスさ、Filthのノイジーさとかを思い起こす場面があった。

好きな曲:Posers and Camera Phones、Aaron2、My So-Called Life


16.My Love Is a Bulldozer (2014)

新生Venetian Snaresのはじまりじゃ!
1年に1枚以上のペースでアルバムをリリースし続けていたヴェネスネが、なんと前作から4年かけて作り上げたアルバム。全く新しい音楽性となっています。このアルバムの特徴は何といっても歌モノが多いこと。アルバムWinter~の精神性を継承したような歌です。アーロン・ファンク本人も歌っていますが、彼のボーカルはとても好き!低く唸るような歌い方はアルバムの重苦しい世界観にぴったり(歌詞はちょっと下品だけど)。そして、オーケストラを中心としたアコースティックな音楽が主体で、ゴシックな雰囲気を醸し出しているのも特徴的。ギターの独奏による穏やかな曲もあるよ。ですがヴェネスネは遊び心も忘れていません。仮面ライダーアマゾンを大胆にサンプリングした面白い曲もあるし、相変わらずブレイクコアは絶好調だ。

好きな曲:10th Circle of Winnipeg1000 Years、Amazon、She Runs、Shaky Sometimes、Dear Poet


17.Thank You for Your Consideration (2014)

アーロンが強盗による経済的困難に陥った際に、ファンからの支援を受けた恩返しとしてリリースされたらしいアルバム。おそらくアウトテイク集なのだろうがかなり高水準。メロディがきれいなポップな曲が多くて聴きやすい。1曲目など、シリアスな雰囲気でジャケットとの温度差にびびる曲もある。アシッドトラックも多いが、正直Filthの曲よりも良い。7曲目のBurgershotとかかっこよすぎる。総括すると、アシッド多めの万人受けするブレイクコアという感じかな。ださすぎるジャケットのせいで避けていた人がいたら、是非聴いた方が良い。bandcampで無料でダウンロードできる。

好きな曲:Smersonality、Koopa CookiesBeside the Past by a LakeBurgershot、Poking Holes、


18.Traditional Synthesizer Music (2016)

真面目な作品。非常に真摯かつ丹精込めて作られている。ほとんどモジュラーシンセのみで作られたアルバムです。他のアルバムで見られるようなおふざけ感とか毒々しさは感じず、とてもクリーンな雰囲気。メロディが豊かなところがいいですね。耳に残るような曲が多い。そして終始温かみのあるサウンドなので耳に優しい。でも、ブレイクコア的な敷き詰められたビートは健在。特に2曲目のEverything About You Is Specialは素晴らしいです。 Venetian Snaresが踏み入れた新しい領域を垣間見ちゃうぞ!

好きな曲:Dreamt Person v3、Everything About You Is SpecialMagnificent Stumble v2、You and Shayna v1、Anxattack Boss Level 19 v3、Paganism Ratchets


19.She Began To Cry Tears Of Blood Which Became Little Brick Houses When They Hit The Ground (2018)

ついにVenetian Snaresがフラッシュコアに接近した。全ての曲のタイトルが長すぎる!超前衛的、超実験的、超複雑、超難解の素晴らしいアルバム。空間を反響する音響の感触を味わいましょう。音の密度が高すぎないことでリバーブがとても効果的になってる気がするよ!?ビートはとてもランダムに聴こえますがグルーヴ感があり、反復性も多少備わっているためある程度ノれます。軽い金属音のビートはHuge Chrome~からあまり変化がないように聴こえます。音のバリエーションがもう少し多ければさらに面白くなったとは思いました。qebrusやRichard Devineの作風に近いです。

好きな曲:The Shriek She Made When She Died Was Erased by the Sound of Lightning、
He Was Shot by One of Brian's Children Holding the Cats Hostage in a Cardboard Box
She Began to Cry Tears of Blood Which Became Little Brick Houses When They Hit the Ground
She Spoke to It Through a Clock Radio in a Dream and Woke As a Cloudburst Obliterating Her Civilization、
Someone Painted a Giant Paperclip on the Sidewalk Right Where You Fell、
Crazy Painted on Eyebrows Staring Out the Front Window Eating Hot Dog Buns


ティア作成

現状はこのようになりました。

She Began to Cry~とSongs About My Catsはどちらもカオスな点で似通っているのに、なぜこんなにも自分の中で差があるのだろうと疑問に思いました。おそらく、私は音楽を聴くうえで雰囲気を重視しているからだろうと考えました。結局私は雰囲気が無機質だったりダークだったりすれば、どんな音楽でも好きなんだろうと思います!

以上で終わります!

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