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少年時代

 みか さのすけです。
 みなさんは、「あの頃に戻りたい」なんて思ったことありますか?
 ぼくは、あんまりありません。
 子ども時代は、たしかにいい思い出がたくさんありましたが、その頃に戻って、もう一度やり直すのは、正直しんどい。
 今は大人だから、色んな問題に対処できるけど、子どもの頃なんて、対処できず色々面倒なことをやっていたなって思うと、戻りたくない。
て、今までは思っていましたが……
 40歳を過ぎると、あの頃の思い出が恋しくなります。
 だから、今はたとえしんどくても、それでも戻りたいなって思う今日この頃です。
 だから

 少年時代を過ごした、故郷へ帰りました。
 ぼく自身も、平成の小学生時代を描いた、4コマ漫画を描いているので、その取材を兼ねて。

 駅を降りて、ぼくがよく遊んだところへしばらく歩くと、そこはもう近代化された知らない街。
 ーこの道で合ってるのかな?
 って思うくらい、建物も景色も違っていた。
 なにか、ぼくの思い出ごとなくなってしまったようで、なにか嫌な感じだ。
 けれど、不思議なことに、全く違う景色のはずなのに、友達の家があった場所は覚えてる。
 よく遊んだ公園の場所や、よく買いに来てた駄菓子屋さんの場所が、Googleマップのように、ゴールの旗が立っている。
 それでも、少し奥に行けば、昔の風景が少しだけ残されていた。
 ほんの少し。
 そんな、かけらのような風景を、ぼくは入りこんで、子ども時代を思い出す。
 ーこんなに道が狭かったっけ?
 最初に浮かぶのはそこだ。
 ぼくらは、こんな狭い道を自転車で駆けまわっていたのか。
 子どもの頃は、そう思わなかったけど、友だちの家に行く時に通ってた道は、大人になってみると、とても目立たない、誰も見つけられないような道だった。
 ぼくが、子ども時代、柔道の道場に通っていた体育館。
 あの頃のままだ。
 ここで、友だちみんなで遊んでいたら、野良犬に追っかけ回されたことがあった。
 柔道の稽古終わりは、よくここでジュース飲みながら、友だちとしゃべってた。
 ぼくは、昔のままの体育館の周りを、子どもの頃を思い出しながら歩いた。

そしてまた、近代化が進んだ地元と、昔のままの地元の中間を歩いていると、子どもの頃よく遊んだ公園に着いた。
 驚いた。
 昔のままだ。けれど、大きく違うのは、その公園には子どもも、お母さんも、誰もいない。
 昔この公園は、子どもたちが取り合うくらい人気だった。
 昔は学校帰りの子どもたちが、公園の端っこに、ランドセルをまとめて置いて、遊んでた。
 近くの駄菓子屋で、お菓子を買って、公園で遊びながら食べていた。
 とりあえず、みんなの待ち合わせ場所になっていた。
 そんな、人気だった公園も、今やもう、誰からも相手にされていないように、ぽつんとある。
 なんだか、寂しいな。
 なんだか、悲しいな。

 この公園で、自転車に乗る練習をしたんだ。

  昔は、あの頃に戻りなくなかったけれど、故郷がこうして、忘れ去られていくと、なんかぼくの子どもの頃の思い出すべてが、愛おしくなる。

 公園だって、たくさんの子どもたちが遊んでた頃を思い出しているだろう。

 そう、子ども時代の、故郷の思い出は、そんな狭い道や、ボロい体育館や、変わらない公園とともに、ずっと一緒に育ってきたんだ。
 ただの景色じゃなかった。
 どんなに、街が変わっても、ぼくの胸の中にある思い出は、昔のままなんだ。

 ーあの頃の友だちに会いたいな。
  きっと、変わっただろう。おじさんになっただろう。おばさんになっただろう。
  いや、きっと会ったら、あの頃のままだろう。
 だって、ぼくの胸の中のみんなは、あの頃のままなんだから。

 みか さのすけ

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