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【マンガ感想文】WESTWOOD VIBRATOを読んでの感想。

ウエストウッド・ビブラート。

数年前、友人にこの作品を教えたら「え、なにそれ知らん」と真顔で返されました。
noteの検索機能で調べても(漫画についての記載は)3件しかヒットしない?ので、かなーりマイナーなマンガなのかもしれません。

【感想文】ってみんなが知ってる、メジャーなマンガで書いた方がいいのだろうか・・・うむむ。

この作品は単行本で買って、数年後に電子書籍でも買いました。
なんでGoogle playブックスで買ったんだろ。
電子書籍は早く統一化してくれ・・・無駄に種類ありすぎだっつの・・・。

作者は
尹仁完(原作)
金宣希(作画) 先生。
(見出しのハングルで気づいたかもですが、お二人とも韓国の方です)

南アフリカ・ケープタウン。
そこに世界最高峰の技術を持つ楽器修理の専門家が住んでいます。
どんな楽器でも依頼人のリクエストに応えて修理するスゴ腕のマイスターは、なんと西アフリカ出身のうら若き女性。
「WESTWOOD VIBRATO」というそのアトリエこそ、義足の天才楽器修復士コーネリア・ボボ・ウォッシャーの仕事場なのです。
彼女の手にかかった楽器たちは、依頼人の心をも癒やし、彼ら想いを届けるためにアナタを小旅行へと誘います。
コーネリアの紡ぐ心の旅へ、ようこそ。
かつての内戦によって左足を失った彼女、頭部にもいまだに被弾したまま、そのカケラが埋まっています。痛みや発作を越えて、彼女は闘います。争いのない世界が実現することを夢見て。
だからこそ、この物語を読んだ人は、コーネリアが起こす小さな奇蹟の目撃者となるのです。
あなたも目撃者になりませんか?
この本を手にしたとき、アナタは目撃者となり、アナタの心をも癒やす旅が始まりまるのです。

(小学館の紹介サイトより引用)

始まりまるのです

失礼、噛みました。
大体の事、上記で書いてるんだよな~・・・。
物語は1話完結のオムニバス形式で読めます。全4巻。

絵のタッチとしては全体的に淡いタッチで少女マンガ寄り、ですかね。
各話のクライマックスではさらに淡いタッチに変わります。
(少女マンガとか、男性向けとか・・・自分で書いといてなんですが、こういう性別で線引きするのは今もう時代錯誤なのかも。)

3巻の途中からはコーネリアと、主治医でありコーネリアに好意を寄せるアレンがメインのストーリー仕立てになります。

上記の女性がコーネリア。
(と、ペットのペンギン・クック)

愛用された楽器を、修理するということ。
人が愛用した楽器には、その人の様々な思い出があります。

楽器をただ修理するだけではなく。
その思い出を昇華させ、持ち主へと伝えます。

冒頭のハングル・「한」は、「ハン」と読むのだとか。
作品内でたびたび登場します。

「ハン」とは、時間と共に積み重なって風化した人の感情で・・・ひと言では言い表わすことのできない言葉だそうです。

(作品内より)

第一話では、ジャズのサックス奏者。スワン・エヴァンスの物語。
彼はベトナム戦争当時、学生でした。
路上で反戦運動の基金を募るため路上で演奏していたところ、ローズと出会います。そして恋仲に。

『ミスティ』を、彼女の為に大きなステージで演奏する。
その約束は、偶然にも翌日に叶う事となります。

ストリップバーの臨時の演奏バイトとして声をかけられ、「ストリップバーか・・・」と最初は断るものの。

店名にローズの文字が入っていたから。
何か運命的なものを感じ、請け負うスワン。練習のつもりで『ミスティ』を、ストリップバーの雰囲気に合わせ「ポルタメント奏法」という官能的な奏法で演奏。

ところが、舞台袖から登場したのは踊り子の服装をしたローズでした。
視線が合い、時が止まります。

瞬間、スワンが目を背けた事を、自分が拒絶された・否定されたと受け取るローズ。ステージから逃げ出そうと足を滑らせ・・・。

話は現代へと戻ります。
ローズの魂を慰める為に何十年と演奏を重ね、プロの奏者となったスワン。
ですが、実はスワンは末期癌におかされ今後の音楽活動を続ける事ができない。最後にもう一度だけ、当時のクリスタルのマウスピースを使用して『ミスティ』を演奏したい。

その為にコーネリアに楽器修理を依頼したのでした。

スワンは、演奏しながら当時の事を思い出します。

思い出の中で、足を止め、振り向くローズ。

あの時、目を背けてしまったけれど。
今度は君だけを見ている。

ただあなたに夢中なんだ。


・・・って感じですかね。
ちなみに『ミスティ』はジャズのスタンダードナンバーらしいです。

こういう曲。

この漫画の特徴として、タイトルが曲名。
物語のクライマックスでは、その曲が流れているかのような演出が入ります。和訳もついているので世界観に浸れます。

作品内で登場した楽器に対しての知識も書いてあるので勉強になります。
サックスって見た目がピカピカしてるし、金管楽器だと思ってたけど木管楽器に分類されるの、知らなかった・・・!

サックスについてのくだりも、よーく見ると伏線になってます。

ただ、話自体としては、重いエピソードも多いです。
読みながら何度泣いたかわかりません。
(この記事書く為に読み直して泣いてたり)

どのエピソードが一番好きかと言われれば、うーん。悩みますね。
2巻の『My Way』かな~・・・。
必ず連れ戻しに来るからな。」という男の友情です。

次点で『フルートと通奏低音のためのソナタ ホ長調』かな。僅差です。

『My Way』
作品にならって、ポールアンカ版。

『My Way』は、カバーされた回数が世界2位の曲なのだとか。
(第1位は、ビートルズの『Yesterday』。ソースはwiki)

ジャズやクラシックの曲だけではありません。
まさか『18 And Life』出て来るとは思わなかった。


話を戻して。

コーネリアの過去は非常に重いです。
何故、片足がないのか。過去に何があったのか。

エイズ問題。地雷問題。
反戦運動、アフリカの政治・貧困事情。
鉱山で酷使される孤児の子供達、逃亡防止の残酷な仕打ち。
幼い子供たちが銃を持ち、内戦に参加する報復の連鎖・・・etc

日本で生活しているだけでは知る事がない、重い現実の話も出てきます。
単なる「楽器を修理しました、演奏できるようになりました。めでたしめでたし!」という物語ではありません。

人によっては、ちょっと無理かも。となるかもしれませんね。
(だから急ぎ気味の展開になって終わっちゃったのかも)

重い重いってさんざん言いましたが、恋愛パートもあります。
当然、ギャグパートもあります。ウィニーがカワイイ。
自由奔放で食いしん坊の癒しのペンギン、クックもいます。

もしも機会があれば、読んでみてください。
主人公が演奏者ではないのに、音楽をテーマにしたマンガって珍しいと思います。

閲覧、ありがとうございました。

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