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日常の雑記

冷蔵庫で冷やしていたビールが無くなっていた。
せっかく、山車のパレードを見ながら飲もうと思っていたのに。

飲んだのは「そこに酒があったから」と悪気もなく言い張る、兄である。
兄は性格が悪いのである。

9/14~9/16。
肴町から盛岡八幡宮へと延びる緩やかな坂の通りは、このお祭りの期間、人々がごった返す。
祭りの熱気、屋台の活気、お酒の勢い、県内外からくる人の多さ。堂々と中央を歩く人、鳥居前の信号を無視する人。

人、ひと、ヒト。

普段は閑散とした街並みだが、9/14~9/16は、とにかく人が多い。

この通りにはベンチが何個か設置されており、こういうパレードやイベントを見る時には便利だったりする。ちょうどよいスペースがあったので、そこに陣取る事にした。

夜のパレードである。
各分団の山車を先導する部隊が歩いてくる。

そしてこの、テンツクテンツク~♪と祭囃子を奏でる、正式名称はわからないが手押し車がやって来る。このメロディが実は、たまらなく好きなのである。祭り囃子というのは、どこか寂しさ、侘しさもある。

例年の楽しみにしているお祭りではあるが、今年は一味違う。
兄の娘(つまり、私にとっては可愛い姪)が山車に参加しているのだ。

仕事の都合で遅れて来た義姉と合流し、その時を待つ。
事前に家に来ていた兄には、冷やしていたビールを勝手に飲まれた事は前述の通りだ。

山車が次々とやってくる。
闇夜に映し出される山車は何とも言えない美しさがある。山車の人形というのは、歌舞伎や能や、そういった伝承の一場面を表現しているのだとか。

現代的な山車がもしあるとしたら、『101回目のプロポーズ』のあのシーンだったり『太陽にほえろ』の松田優作だったり・・・あ、死を連想させるのはお祭りには適さないのかも。ムズカシイぞ。
『ジュディ・オング』や『小林幸子』はどうだろう。カーテンとかでみんなやってたっけ。あのインパクトはすごかったもの。

イカン、話がズレてきている。チョイスが古いのもどうかと思う。


山車の話に戻ろう。
八幡町の坂を上ってきた山車たち(複数形の単位がわからない・・・)は、そのまま右に抜け、盛岡八幡宮へと入る。
ライトアップもあり、夜なのに鮮やかに見える。

先に入った山車は、後続の山車が来るまで笛や太鼓を叩く。
義姉はライトアップされた山車を何枚も激写している。これだけ鮮やかに撮れるのであれば、気持ちもわからなくはない。
兄はというと、いつの間にかタバコを吸って戻って来ていた。

山車が集合し、同じタイミングで祭り囃子を始めた、その時。
兄に肩を叩かれ、何かを言われる。
が、笛と太鼓の音で何を言っているのか聞き取れない。

兄がスマホを取り出し、メモ帳のアプリを開き何か文字を入力している。

「写真を 撮って 欲しい」
指さしたのは、義姉の方向。

ははーん。しょうがないなぁ。理解ある行動をせねば。
スマホ片手に浮かれている義姉と兄のツーショットを撮影した。
何枚か撮っていたら義姉に気づかれたのか、肩をバシバシ叩かれた。

兄が、またスマホを取り出し、メモ帳のアプリを開いた。

「撮るのは 前の オジサンだよ」

あのさぁ。
そういう照れ隠しはいらないから。
こういう時のツーショットってのも、イイモノなんじゃないの?

と、ツーショットの写真を見せて肘でこづいてやった。

「はやく 撮れ チャンス 逃げる」

なんなんだ。
呆れた顔で指さした先のオジサンを見る。
言葉で形容するのも憚られるような非常に独創的な髪型をしており、お酒が入っているのか紅潮している肌は周囲からライトアップされていて、さらなるエッセンスを加えた奇妙キテレツな状況となっていた。

やはり兄は、性格が悪いのだ。


帰りに屋台でなにか買う事にした。
買うとしたら、焼き鳥・焼きそば・お好み焼き・たこ焼き。
一休だんごは絶対に外せない。
一緒に来ていた兄の息子(つまり、私にとっては可愛い甥)がなにか買いたいと言ったので、お金だけを渡した。
買うのも自由、買わないのも自由である。人生の取捨選択だ。

やはりビールが飲みたい。と思い、兄と酒を売っている屋台に行く。
ビール、ハイボール、数種類のサワー。よくあるメニューの中に見慣れないものがあった。

ブタレロ。ブタレロでブッタオレロ。
理解が追いつかない。単位も「一匹」?しかし、ビールより安い。
焼きじゃじゃ麺と併せて、買ってみることにした。

一匹って、こういう。ブタって、そういう。
ブタを模した、親指程度の醤油さしにお酒?が入っている。
これで300円。だったらフツーのビールにするんだった。

坂を下りていく途中で、人ごみをかき分けるように進んでいく空車のタクシーとすれ違った。
お祭りの期間、肴町~盛岡八幡宮の区間は観光客で終始ごった返しているが、厳密には歩行者天国ではない。人が多すぎるあまり、歩行者天国のように見えているだけだ。
だからといって、この3日間の間ここを走行する車はそうそういない。本来5分以内で通れる道が30分~45分以上はかかるからだ。

昔、外回り担当の上司に散々言われた事だ。
タクシーは、よっぽどの急用で呼び出されたのだろうか。


家に帰り、まずは兄とコレで乾杯をする。
結構、度数が強い。ライムの酸味が後からくる。

「じゃんけんで負けたやつが一気飲みするやつだな」

言われれば確かにそんな気もしてきた。
兄にウイスキーと氷水を渡し、こっちはこっちで自分の分を作る。
それほど飲める体質ではないのだ。

各々が屋台で買ってきたものを広げ、山車についての感想を言い合う。
話している間に、睡魔がやってきたので自室へと向かう。

祭り囃子の残響を聞きながら、寝ることにした。
夢にブタが出てこなければいいのだけれど。

閲覧、ありがとうございました。

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