高炉/電炉で溶かした鉄を鉄鋼材料に加工する『製鉄・金属製品』*日本経済68業界
日経平均株価(225銘柄)で登場する
合計68業界の動向を紹介します。
素材の『製鉄・金属製品』
高炉製鉄、電炉製鉄により
鉄鉱石から酸素を取り除いた溶けた鉄
「銑鉄(せんてつ)」は
転炉(成分調整設備)を経て、圧延により
様々な形の鋼材(鉄鋼材料)として出荷されます。
▼業界動向
2014年→2023年 微減
▼業界平均
・売上高 :4764億円
・営業利益率 :5.48%
・自己資本比率:44.25%
・ROE :8.25%
・ROA :4.80%
※用語の詳しい説明は文章下段の
【経営の基礎知識】から確認できます。
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1位 ENEOSホールディングス株式会社
増収減益:売上13兆8566億6200万円/24年3月期
2010年、新日本石油株式会社と
新日鉱ホールディングス株式会社の
共同株式移転でJXホールディングス株式会社を発足。
2020年、ENEOSホールディングス株式会社に変更。
ガソリンスタンドを展開するENEOSは、
2023年4月時点での店舗数は1万2199店。
全国ガソリンスタンドチェーンの
合計2万3984店に対して約50%を占めており、
ガソリンスタンド業界での店舗数は圧倒的1位。
近年では「脱炭素」の取り組みが進み、
ガソリンスタンドの店舗数は徐々に減少しています。
主力事業である化石燃料(石油/石炭/天然ガス)の
開発・精製・販売などエネルギー開発では、
利幅は堅調に推移していますが、
備蓄石油の在庫評価益が
24年3月期は717億円あったところ
25年3月期はゼロになる見通しで減益予測。
企業向け専門サービスとしては、
廃油などの産業破棄物処理を行っています。
25年3月期は過去最大2000億円超えの
自社株買いを実施する予定で、
自社株を除く発行済み株式の22.68%に相当。
(市場に出回る株式が減らして株価を上げる想定)
また、金属事業にも力を入れており、
新日鉱ホールディングス株式会社の流れを汲む
JX金属株式会社は、半導体などの材料となる
銅やレアメタルなどの非鉄金属の製造・販売から
資源開発、製錬、金属リサイクル、卸売まで
グローバルに展開する非鉄金属企業です。
なお、銅などは製錬(熱エネルギー等を利用して
鉱石等の原料から取り出す工程)により製造されます。
ENEOSホールディングスが取り扱う化学品には、
石油精製及びナフサ分解の留分で、
プラスチックや繊維などの原料となる
エチレン、プロピレンなどの「基礎化学品」と
耐熱性、光学特性、剛性などの機能がある
石化誘導品、不織布、光学フィルム、
炭素繊維などの「機能化学品」があります。
2位 株式会社日立製作所
減収減益:売上9兆7287億1600万円/24年3月期
送配電網や鉄道など社会インフラ事業における
豊富な受注残が業績に貢献しています。
冷蔵庫や掃除機などの生活家電をはじめ
調理家電や空調家電、コンピュータ製品、
エレベーター、エスカレーターなど
電機メーカーとして高い知名度を誇ってきましたが
事業範囲は幅広く、デジタルによる持続可能な
社会実現を目指して、IT分野として
金融・社会システムなどの事業を展開しています。
実績としては、
工場インフラをシェアできるスマート工場や、
タッチレス化に対応する空中入力装置の開発など、
数多くのプロジェクトを手掛けています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)推進支援など
情報技術(IT)分野の収益増も寄与して最終増益。
ちなみに、DXの技術として代表的なものは、
「IoT」「AI」「ビッグデータ」「クラウド」
「ICT(情報通信技術)」「RPA(自動化)」
「XR(仮想世界の知覚技術)」の7つです。
25年3月期は1兆円の投資枠を設定。
生成AI(人工知能)に3000億円、製造分野のDXや
グリーントランスフォーメーション(GX)に2000億円、
社会インフラ関連サービスに2000億円、
機動的なM&A(合併・買収)に3000億円。
日立製作所のグループで自動車部品を行っていた
日立オートモティブシステムズ株式会社が、
Honda系の株式会社ケーヒン、
株式会社ショーワ、日信工業株式会社を統合して
2021年1月に日立Astemo株式会社に社名変更。
2023年10月、
株式会社日立製作所は、日立Astemo株式会社の
出資比率を66.6%から40%に引き下げるとともに、
連結子会社から外して持ち分法適用会社にしました。
日立Astemo株式会社の業績が計上されないため減収。
代わりに、本田技研工業株式会社(Honda)が
日立Astemo株式会社の
出資比率を33.4%から40%に引き上げています。
取り扱う化学品には、家電製品の原材料となる
合成樹脂(プラスチック)などがあります。
鉄鋼プラントの圧延機設備やプロセスラインなど
機械設備の安定操業を実現する制御システムまで、
トータルに提供しています。
3位 日本製鉄株式会社
増収減益:売上8兆8680億9700万円/24年3月期
高炉製鉄を主力事業として
特殊鋼/合金鋼/ステンレス/鋳鍛鋼の製造、
圧延加工(管/板/棒)など
鉄を中心とした金属製品を取り扱っています。
中国景気の悪化で鋼材の国際市況が低迷する中、
国内においても資材費高騰や人手不足の影響があり
建築向けを中心とした鉄鋼需要が伸び悩みました。
人件費や減価償却費などのコスト増加もあり減益。
23年12月、
アメリカ鉄鋼大手USスチールの買収を発表。
24年7-12月、約2兆円で買収完了見込み。
反対する全米鉄鋼労働組合(USW)や
アメリカ議員らの説得を続けています。
グループ企業の日鉄ソリューションズ株式会社は
製鉄業で培った日本製鉄の豊富な経験と
高度なIT力を活かしたソリューションを提案。
アメリカ、イギリス、中国、シンガポール、
タイ、インドネシアの6カ国の海外拠点とともに、
お客様のグローバルな競争力強化を支援しています。
早くからクラウド・コンピューティングに取り組み、
北九州市にサービス拠点を開設し東西二拠点化を実現。
より安全な運用と最新鋭のデータセンターや
クラウドを含めてお客様に最適な基盤を提供する
「NSFITOSセンター」を開設。
IoT・AI・5G・ビッグデータ・5G等のITを活用し、
お客様のDX実現を支援するために以下設立。
・2016年4月「IoXソリューション事業推進部」
・2017年10月「AI研究開発センター」
・2020年4月「エンタープライズ5G事業推進部」
「DX&イノベーションセンター(DXIC)」
・2021年4月には「デジタル製造業センター」
※「IoX」=IoT(Internet of Things)、
IoH(Internet of Humans)を含むソリューション
日本製鉄グループの化学メーカー
日鉄ケミカル&マテリアル株式会社では、
コールタールやコークス炉ガスなどを
主原料とする石炭化学と、
ナフサや分解ガソリン、改質油などを
主原料とする石油化学を融合し、
基礎化学品を生産しています。
ベンゼン、トルエンなどの芳香族化学品、
スチレンモノマー、農薬原料、特殊溶剤など、
独自の製造プロセスと原料構成で
安定したコストパフォーマンスを誇っています。
4位 JFEホールディングス株式会社
増収増益:売上5兆1746億3200万円/24年3月期
高炉製鉄を主力事業として
特殊鋼/合金鋼/ステンレスの製造、
圧延加工(管/板/棒)加工
など鉄を中心とした金属製品を取り扱っています。
国内外で粗鋼生産が伸び悩んでいますが、
鋼材の「値上げ」で利益率が改善しています。
また、電気自動車(EV)のモーターに使われる
電磁鋼板などが売上をけん引しています。
高付加価値製品の販売比率は、
25年3月期に50%に達する見込みで
一部高炉の休止など構造改革も寄与して増収増益。
在庫価値が下がる在庫評価損などを除く
実力ベースの事業利益を倍増させる計画があり、
成長が見込めるインドや北米などの海外で
攻めの投資・融資を進めています。
人的リソースへの投資を進めると同時に、
人工知能(AI)や自動化技術の活用により、
労働生産性を高めていく方針です。
5位 住友電気工業株式会社
増収増益:売上4兆4028億1400万円/24年3月期
ライト・電装品・ゴム製品など
自動車部品の製造を主力事業としており、
電気関連の製造をしています。
・鋼線/ワイヤー/電線/ケーブルなどの金属製品
・機械工具などの電気機械
・ネットワーク機器など情報通信機器
・電子回路などの半導体製造
・電気設備の設計/工事
サーバーを保管するデータセンター用の
光ファイバーケーブルなどが伸びるなど増収増益。
子会社が持つインドの自動車部品会社の
売却益を計上した23期3月期の反動で純利益は減少。
25年3月期は営業利益が最高更新の見込みです。
スコットランドに海底電力ケーブルなどの工場新設。
26年に稼働して現地需要を取り込む予定です
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【経営の基礎知識】これさえ分かれば大丈夫!
[ 損益計算書(PL) ]
売上高(客数 × 客単価)
−原価 :仕入など製造原価、人件費など売上原価
−販売管理費:営業活動費、物流、広告、水光熱など
=営業利益
−営業外損益:銀行利息、為替損益、株式損益など
=経常利益
−特別損益 :突発的な損益、固定資産の売却など
−税金 :法人税、法人住民税、消費税など
=当期純利益
営業利益率(=営業利益 ÷ 売上)
5%〜10%で優良な経営状況といえます。
年間の経営活動で得た当期純利益を
利益余剰金として自己資本(純資産)に加える。
ちなみに、自己資本(純資産)と、
銀行などから借りた他人資本を合わせた
「総資産」が会社のお財布になります。
自己資本比率(=自己資本 ÷ 総資産)
少なくても30%、50%以上で優良な経営状況。
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[ 貸借対照表(BS) ]
ROE(=当期純利益 ÷ 自己資本)
自己資本(純資産)は、返済不要な資産、
ROEは、自己資本利益率の略になります。
10%以上で投資価値があると判断されます。
ROA(=当期純利益 ÷ 総資産)
総資産は、自己資本(純資産)+他人資本(負債)、
ROAは、総資産利益率の略になります。
5%以上で投資価値があると判断されます。
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