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いかに良く生きるか!【100分de名著】ニコマコス倫理学

今回読んだ100分de名著は、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』(NHK出版)です。

「ニコマコス倫理学」は「いかに良く生きるか」を主題にしており、哲学でよく出てくる「徳」(中でも賢慮、勇気、節制、正義)を中心に幸せに生きるための方向性が見える本だと思いました。特に、欲望と理性の関係性から喜びをどう捉えるかが勉強になりました。人生の目的は幸福と位置づけ話が展開されます。

ちなみに、タイトルにあるニコマコスとは、新ピタゴラス派の数学者でアリストテレスの広義の草稿をニコマコスが編集したことからきています。

100分で名著の構成

アリストテレス『ニコマコス倫理学』山本芳久(東京大学大学院教授)
【はじめに】「いかによく生きるか」を考える学問
第1回 倫理学とは何か
第2回 幸福とは何か
第3回 「徳」と「悪徳」
第4回 友愛とは何か

『100分de名著 アリストテレス ニコマコス倫理学』山本芳久 NHK出版

ちなみに、山本芳久さんの講義スタイルが、「原文→解説」という流れで、「倫理とは何か」と考えながら見て行くので、読み応えがありました。

アリストテレスの倫理学

アリストテレスの倫理学は、幸福論的倫理学と呼ばれています。昔、倫理の授業等で出てきたアレテー(徳)を積むことで幸福になるというものです。

コロナ禍で「どう生きるか」「どう人生を生きたいか」ライフスタイルを含め考えるようになりました。本書はその問いに対して気づきや答えのきっかけを与えてくれる書物の1つです。

なぜ幸福なのか

「幸福」は、目的にはなるが手段にならない。そのことを100分de名著のテキストで勉強を例に比較して論じています。

「なんのために勉強をしているのか。」
       ↓
「大学に入るため」
       ↓
「なんのために大学にはいるのか。」
       ↓
「専門的な勉強をするため」
       ↓
「何のために専門的な勉強をするのか」

…と勉強というのは、目的にもなるし、手段にもなります。

しかし、幸福については、目的になるが手段になりません。

だから、「幸福」は人生の最大目的になると説いています。

この文だけではわかりづらいと思います。僕も書いてて混乱してきました。
ぜひ読んで確認してください。

「幸福」=「善」を目指す!

アリストテレスは「何らかの善を目指している」(中略)「善」という言葉には、大きく分けて三つの意味が含まれています。「道徳的善」「有用的善」「快楽的善」の三つです。

『100分de名著 アリストテレス ニコマコス倫理学』山本芳久 NHK出版

「道徳的善」は、道徳的に良いことのことで、法律を守ったり、人助けなどのことを言います。「有用的善」は、利益とか役に立つものことです。「快楽的善」もその名の通りの快楽で楽しいとか気持ちいいとかのことをいいます。こういう善を私たちは常に目指しているということをニコマコス倫理学では言っています。

そして、「幸福=最高善とは何か」という話の中に、新たに三種類の生活類型(「快楽的生活」と「社会的生活」、「観想的生活」)が出てきます。
社会的生活は、社会における自己実現で、「観想的生活」は真理の認識です。
これらが、幸福とどう関わってくるか読み進めると面白いです。

徳を身につけて幸せになる

徳(中でも賢慮、勇気、節制、正義)を繰り返し行い、習慣化することで身につけていくことが幸せにつながるようです。

徳については、「有徳」と「悪徳」の解説が役に立ちました。特にテキストの図はわかりやすかったので見ていただけるといいのですが、ここで少し引用をしておきます。

これを整理すると、「節制ある人」と「抑制ある人」においては理性が支配し、「抑制のない人」と「放埓ほうらつな人」においては欲望が支配していると見えることができます。また、「節制ある人」「抑制ある人」「抑制のない人」は健全な理性を持っていて、「抑制ある人」「抑制のない人」「放埓な人」は悪しき欲望を持っているという共通点があります。

『100分de名著 アリストテレス ニコマコス倫理学』山本芳久 NHK出版

個人的に「欲望に支配されて楽しんだ方が幸せになるんじゃないかな〜」と思っていましたが、欲望より理性に支配された方が幸せなんだなと思うようになりました。

確かに、ギャンブルや飲酒など、ずっと続けられないし、楽しみも一過性です。浮き沈みがあるので、そう考えると節制に喜びを感じる生き方の方が幸せなのかもしれません。

でも、本当にこの型で幸せになるのでしょうか。ある程度、自分の好きなようにした方が幸せだと思いますし、もし理性ばかりで面白いことも知らない方が不幸なのではないかと考えてしまいます。

アリストテレスは人によって考えは色々あるが、どちらが幸せになるかということを考えてほしいと伝えています。

また、「中庸」について説いていて、極端に節制とか不節制ではなく、その場で1番的確な節制をすることだとも言っています。これはなかなか難しいですが、欲望にも良い悪いがあり徳になるための欲望なら葛藤がなく喜びを感じるならいいということなのでしょう。

どんな友人と過ごすか

人生を幸せに過ごすには友人の存在は大きいです。そこで出てくるキーワードが「友愛」です。誰とでも仲良くしろ的なイメージだし、なんか怪しい気が…と思っていましたが、そういう意味ではなく、ちゃんと条件付きでした。

アリストテレスは友愛が成立する三条件があり、次なモノのようになっています。

 ①好意=相手に善を願う
 ②相互性=お互いにそう思う
 ③気づかれていること=お互いの思いに気づいている

そして、友愛には三種類あります。これは全て当てはまる必要がなくどれか一つあえばいいそうです。

「善きもの」「快いもの」「有用なもの」

ここの部分は、「善」についてで以下のように書かれており、お互い「善」を目指している人たちで、メリットや有益性や愛などを基に繋がることで、ビジネスや恋愛と同じだと思いました。

あらゆる行為は「何らかの善を目指している」と書かれていましたがらその「善」には、「道徳的善」「快楽的善」「有用的善」という三つの意味が含まれている

『100分de名著 アリストテレス ニコマコス倫理学』山本芳久 NHK出版

まとめ
「葛藤がなく、喜びを感じる生き方の方が幸せ」

専門用語や善と幸福など、難しい概念や同じ概念で何が違うのか理解するのに苦労しましたし、理解できてはいませんが、いかに良く生きるかという部分では役に立つ本だと思います。

欲望と自制のところでもあったように「葛藤がなく、喜びを感じる生き方の方が幸せ」とありました。欲望に従いながら生きていた方が楽しいと思っていた私に、気づきを与えてくれました。

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