遊び心に囲まれる幸せになる癒しの空間♩ピカソ・セラミック「見立て」の芸術展
こんなに「落ち着いて、癒されて、幸せを感じる」美術展・美術館は初めてでした!!
ヨックモックミュージアム開館記念の第5弾となる『ピカソ・セラミックー「見立て」の芸術』の内覧レポーターとして、10月28日に開催された内覧会に参加してきました。内覧ではオープニングセレモニーやギャラリートークがあると記載されていたので、初めてそのような場に参加する僕は、緊張と楽しみで夜眠れませんでした。
表参道駅から歩くこと10分、閑静な場所にホームページで見た三角の屋根を発見しました。ヨックモックミュージアムは隈研吾建築都市設計事務所に在籍していた栗田祥弘さんがプロジェクトに携わった建物です。建物とかデザインについて素人ですが、屋根の素材の陶器感や窓の大きさや壁の素材がいいな〜と思いました。周りに圧迫感を感じさせない素敵なデザインでした。
ヨックモックミュージアムは2020年に開館したピカソのセラミックコレクションのなかでエディションといわれる作品を収集した、世界有数のコレクションミュージアムです。エディションとは、ヨックモックミュージアム資料で以下のように記載されています。
開館から世界有数のピカソ・セラミックのコレクションをさまざまな視点から紹介する開館記念展覧会が企画されていて、今回が5弾目でタイトルは『ピカソ・セラミックー「見立て」の芸術』です。
詳細は公式HPをご覧いただきたいですが、一応過去の開館記念展を含めて記載しておきます。
公式HP「https://yokumokumuseum.com/3543/」
第1弾:ピカソ:コート・ダジュールの生活
第2弾:地中海人ピカソ-神話的世界に遊ぶ
第3弾:ピカソのセラミック-モダンに触れる
第4弾:ピカソ-いのちの讃歌
第5弾:ピカソ・セラミック-「見立て」の芸術
始まりの階段から気分が高まる
地下にあるBARを連想させる薄暗い綺麗な階段・・・
「この階段を降りたらどんな素敵な空間が広がり、どんな作品に出会えるのだろう」というワクワク感やドキドキ感を高めてくれる階段でした。
そして、1番下までくると、黒い壁。焦茶色の床。スポットライトを浴びた作品。普段行く美術館とは違う雰囲気に驚くとともに、シックで落ち着いた空間とは裏腹に僕の中のワクワクが止まりませんでした。それくらい気分が上がる空間でした。
階段を降り切った後、左に広がる第1章「生命を吹き込む」の作品群に自然と引き込まれました。それでは、章ごとに感想等を書いていきたいと思います。
I 生命を吹き込む
階段を降りて左手に広がるのが「I 生命を吹き込む」のエリアです。まずは可愛く笑った鳥に見立てたお皿が2枚出迎えてくれます。お皿のくぼみをお腹に見立てているようで遠くから見るとふっくらしてみえます。近くで見るとすごい笑顔で思わず微笑んでしまいます。
奥にはフクロウに見立てた陶器があり、背景の森林の中で宿木で休んでるような空間でした。陶器の膨らんだ部分をフクロウのチャームポイントの胸部に見立ててありました。深い森でフクロウに問いかけられているような落ち着いた癒しの空間で、マイナスイオンたっぷり感じられるような展示です。ギャラリートークも面白くそこでは、「フクロウは夜行性だからこんなに明るいと目を閉じてないとおかしいな〜と今思いました」と言われていました。僕は、夜が明ける朝靄の雰囲気がでていて、凄い良かったと思います。
この空間が展示で1番好きで、それぞれのフクロウの表情が違い、見ていると動き出しそうな感じもします。ギャラリートークで「ピカソは保護したフクロウと暮らしていた」と言っていました。確かによく見るとフクロウの特徴が描写されており、目なんて本物みたいです!正確に捉えて遊び心をいれたからこそ、動きそうだと感じるのだと思いました。ずっと見てると愛着がでてくる可愛さを感じるのも納得です。
展示を見ていて、見立てるって身近なもので誰でもでき、子供の頃から雲を動物に見立てるというのと同じだと思いました。なんか自分でもやってみたいなって思いました。
II 手のひらの闘牛場
ラスコーの壁画を想像させる色合いと迫力をもつ作品が迎えてくれるこの章は、4畳程(感覚なので正確ではありません笑)の空間に展示されており、まさに洞窟のような空間でした。
ピカソが絵画でも多くモチーフにした闘牛場です。以前、別の展示会で見た時も情熱的に力強く描かれていましたが、ヨックモックミュージアムコレクションにもその情熱や力強さを感じました。
お皿を闘牛場に見立てて作られ、お皿の底を牛たちがいる闘牛場にし、周りを観客が取り囲んでいます。この発想が個人的に凄い好きで感動しっぱなしでした。そして、全ての作品に力強さを感じ、目が離せませんでした。
普段見ているはずのお皿なのに、そこはもう闘牛場で、臨場感が出ています。観客の熱気や歓声が聞こえてきそうです。お皿を闘牛場に見立たことがないので、素直に感動しました。
Ⅲ テーブル 見立てのトートロジー
だまし絵のような面白い錯覚を生み出す作品です。お皿の上に魚が乗っています。それだけといえばそれだけなんですが、精巧なリアルな魚でなく、どことなく可愛いクスッと笑えるさながいて食事が楽しくなりそうです。これから魚を置くのではなく、もう乗ってるって面白い!普段食べてるとお皿の底の柄なんて気にしないけど、これだったら毎回見たくなっちゃうって思いました。
ピカソのこの見立ては色合いの調和が良くて、違和感がなくバランスが取れていると感じました。どことなく魚たちも生き生きしていて生命力を感じます。
テーブルに置かれたお皿は1番好きな作品で、可愛い楕円形のテーブルにお皿が1枚置かれているだけです。でも、そのお皿の中にはグラスやリンゴなど食事が凝縮されて描かれており、凄い美味しそうにみえました。ミニマリズムを感じましたし、食事があることに対する感謝の念を感じました。家に帰ってこの空間があったら、1日よく頑張ったと感じられそうな空間でした。
『〈ゲルニカ〉のあとの休憩』では、美味しそうなお菓子が盛り付けられていて、幸せな休憩を感じられる1枚でした。ギャラリートークで、「ゲルニカを描いた後の休憩として描かれているし、大戦に対してのメッセージもある」、「見立ての作品は、大戦後の瓦礫を集めて楽しい時代を作っていこうメッセージがある」と語られていましたが、そのメッセージが伝わってくる作品でした。時代背景を考えるとどの作品も今、そしてこれからを楽しく生きようというメッセージとエネルギーを感じ、自分自身忘れていた遊び心を取り戻し前向きに生きていこうと感じるのだと思いました。
リノカットによるポスター
「ヴァローリス・コレクション」
リノカットとはリノリウムカットという手法の略で、コルクと木の粉をは混ぜて平にした版を掘って作る版画のようなものみたいです。
リノカットで作られた闘牛場のポスターはカラフルで、ポスターの内容までは分かりませんでしたが、表現されている闘牛場は躍動感が溢れ迫力が伝わってきました。
Ⅳ 変容する顔、古典への見立て
2階に上がると陽の光が差し込んだ空間に出ます。水差しを女性に見立てた作品があり、これぞピカソの見立てだなと思いました。
ちなみに、牧神とはギリシャ神話のパンだそうで山野と牧畜を司る半人半神で、ヤギのような風貌らしいです。確かに最初ヤギっぽいと思いましたが、正解でした。この牧神パンは動物の傷を癒したり、悪いことをやめさせるようで、まさに大戦後の世界に必要なメッセージが込められているモチーフだと思いました。
番外編 建物の風景
ヨックモックミュージアムの建物は光を取り込む構造になっていて、当日は曇りでしたが、それでも明るい雰囲気になっていました。晴れた日の写真を見ましたが、2階は建物の中なのに木漏れ日を感じられる気持ちが晴れやかになる空間だと感じました。
階段から見る建物内の景色も素敵で、ピカソの作品と一体になったミュージアムはそれ自体が作品となっているようでした。自分の家のような温かみがあり、また帰ってきたくなるようなミュージアムです。
オープニングセレモニーを行ったスペースは、コレクションが家族写真のように飾られていてほっこりしました。よく風景などのアンティークのお皿が飾られてるお店や家があり、「おー綺麗だなー」と思います。しかし、ピカソのお皿はあるだけで楽しい雰囲気になり、想像力を働かせて毎日新しい発見を与えてくれそうなほっこりする作品だと思いました。家にあるだけで、前向きになれそうだとスペースにあるコレクションを見て思いました。
2階から階段を降りて1階に着くとライブラリースペースやカフェスペースもあり、今度来た時はゆっくりしていきたいと思いました。
最後に
先にも書きましたが、初めて行ったヨックモックミュージアムでしたが、「こんなに落ち着いて、癒されて、幸せを感じる」美術展・美術館は初めてでした!!
地下展示室の雰囲気はもちろん、お皿や水差しなどを何かに見立てた作品群からピカソの遊び心を感じられ、ウキウキワクワクするとともに、これは「どこをどう見立てたのかな」「君はどんな表情なの」と作品と対話できるのが面白かったです。
また書きますが、最初に出会ったフクロウを可愛すぎてずっと見てました!陶器の膨らみをフクロウの胸に見立てて可愛かったです。真ん中の子は、元々作られていたもの切り離して繋いで作ったそうで、他のフクロウと違って尻尾がついてます🦉そんな発見が面白くてずっとみていました。
図録の解説や写真も素敵で、この作品こんな表情だったのか〜とか作品背景とかがわかってまた行きたくなりました。また、個人的に受付にある子供向けのワークシートおすすめです!本展示のコンセプトである「見立て」と「遊び心」についてのガイドラインになっています。どう見たらいいの?と思っていましたが、こんな気楽に鑑賞していいんだ〜と思えさらに鑑賞が楽しくなります♪
何度見ても色々な発見があるので、是非来館してみてください!!