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超短編創作シリーズ「からだ」

3キロ増えていた。

過去最高を記録した。
服を着ていれば見た目は変わらなかったし誰にもバレなかったが、私が分かった。(おなかにしっかりと脂肪がついていたのは体重計に乗ってから気が付いた。)

体が重いとか、ニキビが増えたとかそんなことはなかった。つうかニキビはずっと居座っている。減らない。
その反対だ。調子が良すぎたのだ。

圧倒的に体が軽くなった。3キロも太ったのに。
(ちゃんと見ればわかるのに誰にも気づかれなかった。)

どうやら適正体重に届いていなかったようだ。
確かに人よりかは痩せているとは思っていたが、やせすぎている人でイメージするような細すぎる腕やウエストとは程遠かった。(ちゃんと胸にも脂肪はあったし!)
食べられるときはその個体の大きさの割に食べるし(気が向かないときは全く食べないが)、筋肉もそれなりについていたから軽すぎるなんてことはないと思っていた。

そうじゃなかった。余計なものが私には必要だったのだ。
今、私のおなかにまとわりついているこの脂肪が、私には必要だったのだ。
(胸にさらにつくことはなかったけど…)

そう思った時に、このぷにぷにし始めたからだが急にいとおしく感じた。
隣で親友が太ったことを嘆いているのに。過去最高を悲しみ、どうにかして痩せようとしていた。

それはわたしだけの脂肪だった。
わたしだけのおなか。わたしだけのニキビ。

わたしだけのからだ