最近の記事

女の子たちが秋にまとう香りを覚えているかい?

ふと、村上春樹の小説を読み返していたら、こんな場面があった。 ジョン・アップダイク。 良い描写。 知りたい。 何という小説なのか、ページの外のこちらには知りようもないけれども、文章の雰囲気だけでも知りたかったので、調べてみた。 (なお、その描写は確かに存在しているものとする。) 検索をかけたが、それらしい情報は見つけられなかった。 英単語の方で検索をかけて、出てきた小説が、こちら。 “In Football Season” by John Updike (1962).

    • ヴィクトリア女王の時代の可憐な童話と詩

      今回は、ヴィクトリア女王の時代の作家、ルーシー・クリフォードによる 『子どもたちのためのとてもみじかいお話と詩』 という本の中から、当時の雰囲気をうかがわせる、可憐な童話と詩をご紹介したいと思います。 心優しい方々のために、先にお伝えしておきたいのですが、 「スマット」というお話は、猫の一生を描いたお話です。 それでは、どうか、お楽しみいただけますように。 スミレを探して  森じゅうがスミレで青く染まっていたのに、スミレはもう去ってしまう。スミレを呼び戻して森で咲いて

      • 改題・随想(お勉強の時間・『刀剣録』)

        前回の記事は、いわば先輩のような方々から温かいコメントをいただけて、とても嬉しかった。とはいえ、刀剣のことに詳しい方々に面白がっていただけるようなポイントがあったとしたら、それは、「昨日今日入ってきた新入りの見方」というところだと思う。 見ていただけるだけでもありがたいのだから、まずは最後まで読んでいただける記事を目指そう、とは思うが、なにしろ新入りである。新入りに必要なものは、そう、お勉強である。よって今日はお勉強に関する記事です。こういう地道なものも記事にしていく所存です

        • 改題・随想(老媼茶話とにっかり青江)

          『老媼茶話』を読んでいたら、面白い話があった。 現代語訳する。 化け仏  浅野弾正小弼長政の歩士が伊勢に使いに行く途中で、墓地があった。  歩士が夜半ごろにこの場所を通った時、変化の者が現れた。  それは、燃えあがる火焔の後光を負った不動明王の姿をしていた。  炎のかがやきに照らされるその顔が、にかりにかりと歯を剥いて笑いながら歩士の方に来る。  歩士は刀を抜き、駆け寄ってこの化物を斬った。  たちまち火のかがやきは消え失せて闇になった。  それから歩士は伊勢に行き、翌日

          短くて奇妙な話(江戸時代の)

           今、読んでいる本が面白いので、御紹介したい。  江戸中期に編まれた奇談集、『老媼茶話』である。  国書刊行会の『近世奇談集成[一]』の中にある。  特に印象的だった話を、現代語訳して御紹介する。  心優しい方々のために先にお伝えしておくと、とにかく、江戸時代の本であり、ネコ科の動物が死んでしまう話が混ざっている。怪談もある。 きのどくな虎 ( 『茅亭客話』から引用した話 )  酒に酔っている人間を、虎は傷つけない。  近頃、ひとりの村人が市に出た。酔って帰ったので

          短くて奇妙な話(江戸時代の)

          ヘンリー・ダーガー・クラブ通信

          自らの執筆を、「まるでヘンリー・ダーガーだ」と自嘲する人たちのためのヘンリー・ダーガー・クラブが存在するとしたら、それは一体どういう会だろうか。 そこにはどういう会則があるだろうか。 想像して第0号の会報を書いてみた。 誰かに見せるあてもなく、自分一人のために小説を書いている人間は、予想されるよりもはるかに多いのではないだろうか。 ヘンリー・ダーガー・クラブ通信 ヘンリー・ダーガー・クラブは、ヘンリー・ダーガーを讃えるクラブではなく、ヘンリー・ダーガーを研究するクラ

          ヘンリー・ダーガー・クラブ通信