タゲブフ

軽く蹴られたような突かれたような刺激で目が覚める。真っ暗な部屋で、人の気配が何か話しかけてくる。鍵かけ忘れたかと咄嗟に思うけれど、焦りや緊張はない。声がなつかしい声だから。でも、誰かわからない。抱きついたり匂いを嗅いだりしてみるが、確信がもてない。そのうち、帰ろうとし始める。焦って引き留めるけど、「誰だか分かってないでしょ」と図星をつかれる。私は散らばっていた本のなかから、『ひかりごけ』と何か、文庫本2冊を握らせる。飛んでいかないための重りみたいな感じか。相手は私の甘えにこたえて握ってくれる。そのあたりで、これはきっとNが姿を変えて、他の誰かの体に入ってやってきたんだとほぼ確信する。が、Nはもう立ち上がっていて靴を履いている。私はまとわりつくみたいに追いすがり、くずれた正座で頭を下げて引き留めるけれど、Nは本気で嫌がっているようなので止められない。Nは行ってしまう。

これはおととい6/9の。

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