私はロボット

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【レゼイス】牧野信一「「悪」の同意語」後半

はい、ということで(何が”ということ”なのかは分かりませんが)、読書会をはじめていきたいと思います。 私としては、お腹がいっぱいであたまがぼんやりしているのですが、まあテキトーにやっていきたいと思います。じつはこの後もまだ一仕事というほど大したことではないけど、やることがあって、その前の序奏(助走のつもりでしたがいい感じなのでのこしておきます)としてここに参加している感じです。 はあ、今回もというか前回にひきつづき「イーヴィルのシノニム」ですが、今回もくだくだしい話でした。

    • タゲブフ

      なんか会いに行きたいと元取引先の人に手紙を出したらしく、こうやってSさんの事務所に座っているわけだけど、Sさんは怒っている。 まずはアポイントをとってから来るのが当然だろということらしい。なんか遠回しで分かりにくいけど。 「しまった」という焦りと、「手紙書いたんだからアポイント取ってたんじゃなかったっけ」という疑いが両方生じる。 とりあえず頭を下げていると、少し離れたところで事務的な動きをしていた父親がやって来て、手を伸ばし、Sさんの前の書類から手紙をやや強引に引っ張って取り

      • タゲブフ

        いい感じの夢を見たんだけど、あわただしい音で目が覚めてそれがしばらく周囲を旋回していたので、その間に忘れてしまった。しばらく目をつむって戻ってくるを待ってたが、来ず。あわただしい音は泡立つ音に似てる。 Nとコンビニでばったり会って、例のあの後ろ姿とならんでそそくさと出ていくシーン Eが復活してきてなぜかやたらこっちに好意を持ってくれるシーン。薄暗い学校の廊下。 の二つはあった気がする。要するに、Nが戻ってきてくれたくれる期待みたいな内容の夢。 楽しい一日だったが疲れた

        • 【レゼイス】牧野信一「「悪」の同意語」前半

          頼まれてたおしごとに必要な物品を忘れてきてしまったので、今日から一人読書会をはじめたいと思います。 今回読むのは牧野信一「「悪」の同意語」ということで、これはルビによれば「イーヴルのシノニム」と読むらしいです。きざですね。 内容は、まあいつものうじうじものという感じで、頭が基本的にどんよりしているぼんやりしたおっさんの半分日記みたいな感じ。小説というより。ただ、いつもとちがって、かなり長い。 ほんとは全部読んでから参加したかったのですが、かなり長いので、まあ半分くらい読ん

        【レゼイス】牧野信一「「悪」の同意語」後半

          タゲブフ

          入るとごく狭い居住空間。テレビの前のこたつにみんなで入っている。ここから他人が入ってくるのに慣れているらしい。通り道なんだろう。 一番しっかりしてそうな家計を切り盛りしてるだろう女の人が「どうぞ」という。そう言われても通れるところが、彼らの上半身とこたつとの間くらいしかない。彼らの背後はすぐ敷居になっていてというか敷居の上に座っていて襖も閉まらないほど。で、襖のうらに廊下らしいものはあるけど、とても狭く雑然と物が置かれ、しかも片側は崖のようになっている。 再び催促されて、私は

          タゲブフ

          軽く蹴られたような突かれたような刺激で目が覚める。真っ暗な部屋で、人の気配が何か話しかけてくる。鍵かけ忘れたかと咄嗟に思うけれど、焦りや緊張はない。声がなつかしい声だから。でも、誰かわからない。抱きついたり匂いを嗅いだりしてみるが、確信がもてない。そのうち、帰ろうとし始める。焦って引き留めるけど、「誰だか分かってないでしょ」と図星をつかれる。私は散らばっていた本のなかから、『ひかりごけ』と何か、文庫本2冊を握らせる。飛んでいかないための重りみたいな感じか。相手は私の甘えにこた

          【クルツゲ】理想の関係(786文字)

          当分帰ることはないだろうと真剣な顔で告げた紙飛が、その日の晩に戻ってきたときも、吉田は驚かなかった。いつものことだから。むしろ帰ってきた、戻ってくることができるということの方に内心驚愕と安堵をおぼえていた。しかし、それを口にしたり表情にしめしたりしたら、魔法のような何かが解けてしまうかもしれない。そうしたらもう戻ってくることはないだろう。そういう不安から吉田は紙飛をまるで定時で帰宅した会社員のように迎え入れた。 吉田は紙飛の言葉を信じていなかった。毎回微笑みひとつ浮かべず長

          【クルツゲ】理想の関係(786文字)

          タゲブフ

          「自分自身がそこにいてその世界を中から書いてるというタイプの人と、そこに自分自身はいない世界として書いてるというタイプの人がいて、わたしは後者だと思う。」

          【クルツゲ】別れたあと(1065文字)

          「いや、二十代の三、四年は大きいよ、ねえ、もし僕が病気じゃなかったら、三、四年は早く変化できた、今の状態になれたと思う、けど、いやこれは別にもっと立派な人間になれたということではなくて、結局おんなじような道をたどっただろうけど、三、四年早くたどれた同じ変化を通過できた、んじゃないかってことで……ただ、僕が後悔してる、とは思ってほしくなくて、だって僕は後悔してないんだから、つまり、たしかに結婚には至ることができなかったけど、そういう現在からみれば成功できなかった日々かもしれない

          【クルツゲ】別れたあと(1065文字)

          【クルツゲ】茶色のモフモフ(536文字)

          犬がいた。小さくて頼りない。街中のショーウィンドウにいた。どの犬もみんな小さくて頼りなかった。寒い秋の日、土曜の午後だった。 安田はじっと見つめていた。すると店員が視線の先の一匹を抱き上げた。わざわざ外に出てきて安田にあずけた。安田はドギマギしながら受け取った。まず手に持っていたペットボトルを地面に置く必要があった。 両手の中の生き物は小さかった。が、自分の意思で身をよじっていた。心臓の速い鼓動も伝わってきた。 安田は子犬を店員に返した。ペットボトルを取り上げ、店内に入った。

          【クルツゲ】茶色のモフモフ(536文字)

          【クルツゲ】希ちゃん(891文字)

          あからんだ空が窓からみえたのでおばあちゃんは明日は雨になると言った私は床にねころがったままぼんやり西の空を見たあんなに明るい空から曇った空を想像するおばあちゃんは大人だなあと思ったのを覚えている今となってはおばあちゃんは施設に入り施設に入れたことはとても幸運なことらしいけれど会うことはほとんどないお父さんたちは会いに行っているから言えば私も会えるのだけれど週末は友だちと遊びに行ったり勉強したりしたいしなによりお母さんが会うことを望んでないような気がするのでこれまで何も言わずに

          【クルツゲ】希ちゃん(891文字)

          タゲブフ

          エレベーターに乗って、Kちゃん、7階を押す。いや7階はだめだ、と思い直し、4階、5階、1階等押す。混乱していてどこに止まっても、社長や部長や会長がいて、おそろしい気がする。押すたびにエレベーターは上昇と下降をガクンガクンと繰り返す。しまいに「ああ今上ってるのか下りてるのか分からなくなったな」と思うと、明らかに下降している、それもすごいスピードで。いつも恐れていたことが起こっているのかもしれない、このまま叩きつけられて死ぬのだろうと思う。が、エレベーターはいつの間に線路を走って

          【クルツゲ】池の思い出(610文字)

          安太郎には横になっていると、見えるものがある。 聞こえると言った方がいいかもしれない。  揺れているのだ。 そのとき安太郎は半ば眠っているので、その揺れが夢の中のイメージなのか、現実の音なのか区別できない。でもきまって、五年前に死んだ爺ちゃんのことを思い出す。 「昨日も爺ちゃんの夢見たよ」 ある朝安太郎が妻にそう話しかけた。テレビを見ていた洋子は電源を切って、彼に向き直った。 「また揺れている夢?」 「そう」 「魚みたいだね」 そう言われれば、揺れる水面に似ている

          【クルツゲ】池の思い出(610文字)

          【クルゲシ】壊れたトランク(730文字)

          クルビルム。クルビルム。伊藤さんがその黒いトランクをみつけたのは、先日はじめて行った飲み屋でのことだった。 「カウンターと壁際にテーブルが三つか四つ並んだの小さな、よくある飲み屋なんですが、なぜかトイレの前に置いてあったんですよね」 くるくるよく転がるキャスター。叩いてみると、コンコンと固い音がするので、空洞ではない。 見渡しても持ち主らしい客はいないので、店員の若い男の子に聞いてみたらしい。ここからここまでが98センチ、こっちからあそこは99センチ。 大学生らしいきれ

          【クルゲシ】壊れたトランク(730文字)

          タゲブフ

          「で、平易な言葉はみんながある程度、使い倒しているので、言葉に疑問がないんですね、疑問がないために、僕がその言葉を全く違う角度から焦点を当てて使っていても、読んでくれるんです。そうやって、また別の次元の音楽に繋げていく、みたいなことがやりやすい。小説みたいに銘打ってしまうと、読む人が最初から、構えちゃうので、言葉が自由に動きにくくなる。意味を読み取ろうとしてしまうわけです。こっちは意味なんか示したくないわけですよ。音楽の意味、なんか言っても、ちゃんちゃらおかしいですから、なん

          【クルゲシ】休日(962文字)

          山の気候は七月でも寒い。石橋たちが早朝登山道に足を踏み入れたときには、朝早いからこんなに寒いのだろうと思っていたが、正午になっても気温はほとんど変わらなかった。 「山は寒いからあったかい格好してきてね」 経験者でリーダー役の羽根がそう繰り返していたとき、石橋らのうちの数名は「また彼女は大げさなことを言っている、いつもの癖だから割り引いて受け取らないといけない」と考え、アイスコーヒーをすすったものだった。 が、今となっては「羽根がちゃんとアドバイスをしてくれてよかった、そ

          【クルゲシ】休日(962文字)