「奇跡」を子どもたちにどう伝えるか
皆さま、ご入園・ご進級おめでとうございます。
今回は、これまでお参りで子どもたちにお話をしてきた体験から、現段階での「奇跡」に対する私の考えを述べさせていただこうと思います。
* * * * *
お釈迦[しゃか]さま(お釋迦さま)も含め、宗教上の偉人には、しばしば奇跡譚[きせきたん]がつきものです。
それは、我々現代日本人の目から見れば、時に、「非科学的」で「不合理」なものでさえあります。
では、絵本や紙芝居などでこれらの話をすることになった時、子どもに対して、話者はどのような態度を取るべきでしょうか。
(手法一)
「話者は、それらの奇跡が本当にあったと信じ、それをそのまま子どもに話す」
話者がその話を本気で真摯[しんし]に信じていて、それが内容的にも道徳にかなうものだったら、それはかまわないと思います。
ただ、私の場合、正直、科学と合理主義にどっぷり漬かった現代日本人の一人として、奇跡譚をそのまま信じることは難しいので、この方法は取れません。
(手法二)
「自分はその話を信じていないのに、子どもには本当にあったこととして信じるよう話す」
この方法は取るべきではないと思います。
子ども相手にも、誠意が必要です。
私は、以前、保育園の節分で「鬼」役を演じたことがありましたが、その時は、極力、子どもたちをおどかさないようにしました。
大人はその「鬼」が着ぐるみであることを知っているのに、現実と空想の分別が付きにくい子どもたちをおどすというのは、何ともアン・フェアな感じがしたからです。
(手法三)
「その話を『非科学的』としてバッサリ切り捨て、子どもには何も話さない」
この方法を取ると、世の中の少なからぬ童話、文学が滅びます。
面白さも楽しさも消え、これも子どもの育ちにあまり良いようには思えません。
(手法四)
「それらは『譬[たと]え』であると、子どもたちに説明する」
これは、坊さんも含め、現代日本人が最も普通に使っている方法でしょう。
私も用いることがあります。
ただ、園児からの問いに対して答に窮したから、この「譬え」を便利に使うということは、なるべく避けようと思っています。
(手法五)
「『奇跡』の中にも何らかの『史実』が反映されているのではないかと考え、調べ、自信が持てたら、その説を子どもたちに話す」
私は、現在、この方法を取っています。
もし、そこに何がしかの史実が反映されているのだとしたら、それを切り捨てたり、「譬え」扱いしてしまったりするのは、もったいないことと思います。
そもそも全くの作り話をゼロから作るというのは、かえって難しいことではないでしょうか?
それより、史実を土台として、それに脚色を加えて「話」とする方が、作る側としてもやりやすいと思われます。
もちろん、中には、後世の人たちが付け加えた作り話と思われるものもありますから、何が何でも「史実」を見出そうとする必要は無いですが。
この作業を進めていくと、一見「奇跡」のような話が実はさほど奇跡でもないことが分かってきます。
そして、それは現代人が現代人に語ることとして、無理なく素直に受け入れやすいものとなることでしょう。
では、次回は、その例として、お釈迦さまのお誕生にまつわる「奇跡」を見ていくことにしましょう。
社会福祉法人和光保育園 前園長・副理事長 白井千彰[しらい・ちあき]
令和5=2023年4月10日
→ お釈迦さま誕生時の「奇跡」(花祭りの話。『「奇跡」を子どもたちにどう伝えるか』続編) – 和光保育園 (wakwau.jp)
に続く
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または、↓
お釈迦さま誕生時の「奇跡」(花祭りの話)。「奇跡」を子どもたちにどう伝えるか 続編
お釈迦さま誕生時の「奇跡」(花祭りの話)。「奇跡」を子どもたちにどう伝えるか 続編|白井千彰 (note.com)
に続く。
(令和6=2024年5月5日 挿入)
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※ 白井千彰 「和光保育園 佛教保育のお話し」(旧)
「奇跡」を子どもたちにどう伝えるか – 和光保育園 (wakwau.jp)
を転載(スタイル上の微修正あり。内容に変更無し)。
肩書きは当時のものです。
社会福祉法人和光保育園 前園長・理事 白井千彰[しらい・ちあき]
令和6=2024年4月5日
↑ 写真:
母マーヤーさまの右脇から生まれて すぐに歩く「誕生仏」
1「赤ちゃんお釈迦さま」
<タイのワット・ライキン(Wat Raikhing)にて>
注:
の画像だと、
右腕を挙げて立ったままお釈迦さまを出産なさった
母マーヤーさま
と
立ってすぐに歩き、「天上天下、、」のポーズを取る
赤ちゃんお釈迦さま
の
両方が映っているのですが、このノート(note)版ではお二人が画面に入りきらず、仕方なく、
お釈迦さまの部分の写真のみを掲載しました。
マーヤーさまの部分の写真は、
画像2-「奇跡」を子どもたちにどう伝えるか|白井千彰 (note.com)
に載せました。
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