時折最高:029 Frank Zappa - Inca Roads (1975)
様々な音楽的要素が詰まった代表曲
1975年発表のアルバム「One Size Fits All」(邦題:万物同サイズの法則)収録のバージョン。このバージョンはTV局でのスタジオライブをベースに、ヘルシンキでのコンサートでのギターソロをつないだもの、と書かれています。フランク・ザッパについてよく知らない方にはどういうことなのか伝わりにくいかも知れません。
つまり、
このスタジオライブバージョンをベースにして、
1974年のライブからギターソロを採用。
ギターソロもそのままではなく、冗長な部分をばっさり切って編集し、濃密なものになっています。
アルバム収録は1975年ですが、曲自体は以前からコンサートで何度も演奏されています。曲としての完成形が決まった段階で、それまでの演奏のエッセンスを編集してまとめた、という感じでしょうか。だからこの曲の決定版と言えるでしょう。
"Inca Roads"というタイトル通り、おおよそはUFOとかについて歌っています。
とぼけた歌詞ですね(笑)。
歌っているのはキーボードのジョージ・デュークです。
この時のバンドメンバーは、
Frank Zappa :Guitar、Vocal
George Duke :Keyboards, Synthesizer, Vocals
Tom Fowler :Bass
Napoleon Murphy Brock :Flute, Tenor Saxophone、Backing Vocals
Ruth Underwood :Vibraphone [Vibes], Marimba, Percussion
Chester Thompson :Drums
記事のタイトル画像ではもう一人写ってますね。この時期だと2人目のドラムのRalph Humphreyじゃないかと思うのですが、定かではありません。
ライブ映像の方を見ると、パーカッションのルース・アンダーウッドの妙技に目を奪われます。この時期、ルースはバンドにとって極めて重要人物で、彼女の正確無比なタイム感覚のおかげで、どのライブ会場で演奏したテイクでも編集して繋げることが出来るほど、同じテンポで演奏できた、という逸話があるほどです。
実際にいろいろなライブ音源を聴いてみると、まったく異なったアレンジで演奏されていることも多いので、この逸話の信憑性は不明ですが、ザッパバンドにマリンバを不可欠なパートとして確立させたスタープレイヤーなのは間違いありません。
73年から74年のザッパバンドは、とりわけジャズの素養を持った超一流人材が集まった時期で、ザッパ自身が「世界最高のバンド」「何でも演奏できる」と自負していたほど。もちろん他の時期、他のメンバーのバンドも優れた音楽を残していますが、74年バンドはやはり特別に感じられます。
最初に聴いてみるならどれ?
フランク・ザッパは多作であり、またアルバムごとに音楽性が相当異なるため、どこから聴き始めればいいのかなど、初心者にはハードルが高いアーティストかと思われます。過去の音源も一時期は入手困難でしたが、CD時代になってほぼ全音源へのアクセスが容易になり、かつ音楽配信にて大部分が聞けるようになったため、聴くだけなら簡単に聴くことが出来るようになりました。
ところが今度は配信音源には、音盤になっていないライブ音源などが多数入り交じっており、どれがオフィシャルなのかの見分けが付きにくくなってしまったのでした。
初めてフランク・ザッパを聴いてみようかという方にお勧めのアルバムをいくつか紹介します。
ジャズロック、フュージョン、プログレが好きなら
現代音楽、ジャズロック、プログレ好きなら
ただし、CDで追加された「Uncle Meat Film Excerpt Part I」「Tengo Na Minchia Tanta」を除外して聴くこと。ロックコンボで室内楽を実現した時期の集大成。
サイケポップ、エキセントリックな音楽が好きなら
カフカの「流刑地にて」を読んでから聴くこと、という注釈が書かれたアルバム。日本人強制収容所のこととか、警官に射殺されるヒッピーのこととか、曲調からは想像しにくいほどシリアスなテーマが多い。曲はメロディが覚えやすく、おもわず口ずさみたくなる楽しいもの満載。
ロック、ハードロック、ブラックミュージック好きなら
一般的なロックファンには一番お勧め。ほぼ全曲が繋がっており、一部のインストルメンタル曲以外はコーラスで歌いっぱなしの圧倒的ボーカルアルバムでもある。
取りあえずベスト盤で様子を見たいという方なら
これは最適なベスト盤が音楽配信には含まれていません。
ロック、ポップス路線のベスト。
現代音楽、ジャズロック、室内楽路線のベスト。
クラシック好きの方にこそ聴いてもらいたい選曲です。
若干裏ベストみたいな要素がある、廉価版ベスト2枚も面白いです。
この2枚はほぼ切れ目無しに曲を繋いであって、年代順にこだわらず、曲の繋がりの良さをメインにしている珍しい選曲・編集で注目に値します。
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