大丈夫?ガイド業務の取引先は、分散できていますか?
通訳ガイドの皆さんにお尋ねします。自分のサービスの取引先(売り先)をいくつ持っていますか?
別の言い方をすると、あなたは何社から仕事のアサインを受けていますか?ということです。全ての仕事を一つの会社から得ているのであれば、売り先は一社になります。通常は数社から仕事をもらっている、というケースが多いのではないでしょうか。
もし一社から十分な量の仕事を獲得しているのなら、それはその会社から絶大な信頼を得ているということですから、素晴らしいことです。ただし、通訳案内士もビジネスである以上、通常のリスク管理の感覚を持っているべきだと思います。取引先が一社というのは、率直に言って、非常に危険です。
ここでは、ビジネスリスク管理の観点から、通訳案内士が知っておくべきこと、備えておくべきことについて、お話したいと思います。
取引先を分散させておくのは、リスク管理の基本
インバウンド需要が回復し、今ほど仕事を獲得しやすい時期はありません。ですが、こういう好調な時期に先のことを考えておきましょう。あなたは、何社から仕事のアサインを受けていますか?
メインの旅行会社を中心に、数社から仕事をもらっているというのが普通ではないでしょうか。私のように、自分でWeb集客をしている場合は、受注数イコール取引先数、ということになります。
一社からしか仕事をもらっていない、という方もいるかもしれません。あなたが社員ではなくフリーランスでしたら、それは大変危険な状態です。その会社が倒産したり、会社方針で事業内容を転換したりした場合、最悪ガイド報酬を回収できなかったり、将来の仕事がゼロになってしまう恐れがあります。
いやいや、私の取引先は大手旅行会社だから大丈夫、と考えている方も多いでしょう。ですが、今は経済環境が激変する現代です。どんな大手企業であっても、絶対に大丈夫とは言い切れません。他社に買収され、事業内容が大きく変更になることは珍しくありません。
何より大手の場合、相手の担当者次第という部分もあります。あなたを評価してくれていた担当者が、異動や退職をする可能性もあります。新しく着任した担当者とそりが合わないということだってあるでしょう。結局、一社としか取引をしていないということが問題なのです。
また、一社からしか仕事を得ていないと、立場が弱くなります。大手企業とその子会社でしばしば見られるように、下請けの立場になると(法律である程度守られているとはいえ)、取引条件が不利になることもあります。何より、拘束感を感じるようになると嫌ですね。
取引先が複数あることのメリット・デメリット
取引先が複数あると、どのようなメリットがあるのでしょうか?これは、これまでにお話したことの裏返しです。取引先が複数あることで、様々なリスクを回避することができるのです。
先ず、取引先からの負の影響を減らすことができます。ある会社の業績が不振に陥ったり、最悪倒産したりした場合にも、仕事の重心をそれ以外の取引先にシフトしていけば良いのです。先にお話しした、担当者との相性といった問題も、取引先が複数あれば深刻度は軽減します。
また、会社によって得意な分野が少しずつ異なるので、複数の会社と取引をしていると、仕事内容が多様になり、飽きがこないというメリットもあるでしょう。ガイドとしての幅を拡げるには、いろいろなタイプの業務を実際にこなすことが、一番ためになります。他にも、特定の会社に縛られない、フリーランスの自由さを感じられる点が良いと思う人もいるでしょう。
それでは、デメリットはどのような点でしょう。
一番の問題は、取引先間の仕事の調整です。既にA社からのアサインを受けている日に、B社から仕事の依頼があり、B社の仕事の方が条件が良い、というようなことがあります。こういう場合にどうするか、考えなくてはなりません。取引先が一社だけなら、こうしたことは起こりません。
大切なことは、自分の方針を事前に決めておき、それを必ず守るということです。ビジネス上、約束したことを守らないと、信用を永久に失います。最初に受けたアサインを必ず守ることが絶対に必要です。
また、似たタイプの旅行会社を複数選ばないというのも、良い方法でしょう。ロングの団体旅行を主とする複数の旅行会社と取引をすれば、日程が被ってしまう可能性が高いです。そうではなく、ロングの団体旅行の会社を中心に、FIT向けの地元ツアーを紹介する会社や、特定のフード体験ツアーなどを実施している会社とスポットで取引するようにすれば、コンフリクトを避けつつ仕事量を増やせるのではないでしょうか。
通訳案内士の働き方改革
旅行会社からアサインを受けるというのは、昭和の時代から続く、通訳案内士の基本的な業務パターンです。十分な仕事量が確保できるのであれば、特に日々の営業活動も必要ありませんが、これは本当にサステイナブルなのでしょうか?
様々なデータを見ると、ますます多くの旅行者が、旅行会社に頼らずネットでエアチケットやホテルの手配をしています。個人旅行をする人が増え、特に欧米からの旅行者はあまり団体旅行をしなくなっています。
業界のこうした変化の中で、通訳案内士も従来と違った働き方を考えていくべきでしょう。旅行会社との関係を維持しながら、少しずつ新しい販路を開拓していくという方法です。特にFIT客は、今後は自分で集客するべきです。このNoteでは、いろいろなノウハウを発信していますので、参考にしてください。
まとめ
「取引先が一社ではビジネスのリスク大!取引先は数社確保し、いろいろなタイプの顧客に対応できるスキルを身に着けよう。」でした。
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