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質問:富裕者層をターゲットにしますか?
フリーランスの通訳案内士として、Web集客を中心にやっていこう!と考えたときに、最初に考えるべきことが、「ターゲット顧客を明確にする」という点です。簡単に言うと、どういうお客さんに対して、サービスを提供するかということです。
ターゲットの話をすると、最近はすぐに「富裕層を取り込む」という話になります。観光庁も、自治体も、観光事業者も口をそろえて「富裕層」を取り込むと言いますが、なぜ富裕層なのかについて、深い考察をしている例をあまり見かけません。
私はあえて、「フリーランス通訳案内士は、富裕層を狙う必要は無い」と言いたいと思います。この記事では、その理由について、いくつかの視点から説明します。加えて、ターゲットをどのように決めたら良いのかについてもお話します。
そもそも富裕層とはどんな人たちか?
まず、一般的に富裕層の定義がどうなっているかを見てみます。野村総合研究所の調査では、純金融資産保有額が「5億円以上」の世帯を超富裕層、「1億円以上5億円未満」の世帯を富裕層としています。2021年の数字では、超富裕層が0.2%、富裕層が2.6%です。ここまでを富裕層とします。
ただ、私たちインバウンドガイドのお客さんは外国人ですから、外国の場合も見ておきましょう。データが限られているので、米国の場合で考えます。米国で一般的に富裕層とされるのは、個人資産を100万ドル以上保有している層と言われ、比率は約6%です。現在の為替レートでは約1億5千万円で、日本は世帯資産、米国は個人資産という違いがあります。
さて、あなた自身は富裕層ですか?定義で使われている純金融資産とは、預貯金や株式、債券などの金融資産から、住宅ローンなどの負債を差し引いた金額です。不動産は含みません。計算したら1億円以上あった方、おめでとうございます。あなたは富裕層です。
富裕層にサービスを提供する際に考えるべきこと
富裕層に満足のいくサービスをするには、富裕層の考え方を知らねばなりません。ネット上の情報によると、富裕層は無駄なものへの出費を嫌う一方、自分にとって価値があると考えるものには出費を惜しまない、とあります。
私が案内をしたお客さんの中にも、一本何十万円もする掛け軸を京都から取り寄せて購入したり、フラッと入った店で一つ百万円を超える腕時計を複数個買われたりしたケースがあります。間違いなく富裕層のお客さんだったのだと思います。
富裕層相手で大変なのは、自分自身に富裕層的な思考が身に着いていない(富裕層でない)ため、どんなサービスをどのように提供すれば良いのか、判断できないことです。富裕層のお客さんは要求水準も高いので、良いサービスを提供するためには、彼らの考え方に対する正しい理解と、適切な対応とが必要になるでしょう。
普通のフリーランス通訳案内士が、独力でこれに対応できるでしょうか?お客さんの要望は多岐にわたり、普通とは異なる依頼になるため、事前調査や対応にかなりの時間と手間を要することになります。一人で対応するのは、かなり難しいのではないでしょうか?
そのため、富裕層対応専門の旅行会社がいくつも存在します。彼らは組織で対応し、富裕層が望みそうな訪問先に関する情報やコネクションを、多く有しています。富裕層対応は、こうした専門会社に任せるのが賢明だと思います。どうしても富裕層相手のガイドがしたいのであれば、こうした専門の旅行会社にガイドとして起用してもらうのが良いでしょう。
フリーランス案内士に最適なターゲット層とは?
それでは、フリーランス通訳案内士はどのような顧客層をターゲットにすれば良いのでしょうか?
答えは一つではないでしょう。案内士は一人一人、バックグラウンドが異なりますから、得意とする分野も違えば、物事に対する考え方も違います。ですから、このnote記事に正解を求めるというよりも、自分にしっかりと向き合い考えるためのヒントにしてもらえればと思います。そういう前提で、私の考えについてお話します。
先ず、私はお客さんを富裕層というように、資産や収入で区別するという考え方が嫌いです。加えて、富裕層をターゲットとした場合に、前述したとおり自分が適切なサービスを提供できるか疑問ですし、富裕層に対して安価に効率よくアクセスする方法も、知りません。
欧米から日本に家族旅行をされる方々は、元々経済的にそれなりの余裕がある方々です。金持ちかどうかといった基準で考えるよりも、ガイドを雇うメリットを理解しているかどうかが、お客さんとなりうるか否かの分かれ目です。つまり、収入で切り分けるのではなく、価値観で分けていくのが正しいのです。
他国の文化を尊重して、積極的に様々な体験をし、そこに価値を見出すことのできる層、これがフリーランス通訳案内士のお客さんとなる方々です。これをハイクオリティ・ビジター(High Quality Visitor)と呼び、ニュージーランド観光局が標榜している概念ですが、我々フリーランス通訳案内士が目指すターゲットにも最適だと感じています。私のお客さんも、日本の文化や歴史に関心のある方が大半です。
こうしたハイクオリティ・ビジターのお客さんに響くようなサービス内容を考え、ウェブサイトの表現や、広告の文言を考えていくのが、正しい方向性だと思っています。職業的には、個人企業経営者や医者、コンサルタント、エンジニアや大学教授といった方が多かったです。この記事が何かのご参考になれば幸いです。
まとめ
「フリーランス通訳案内士がサービスを提供すべきなのは、富裕層ではなくハイクオリティ・ビジター。文化や歴史への興味・理解のあるお客さんをターゲットに、サービス内容や宣伝広告戦略を考えよう」でした。
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