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インバウンドを取り込めない残念な日本の旅行会社

インバウンド客の増加が止まりません。昨年12月に、単月での過去最高の訪日客数を更新したと報じられていましたが、今年1月はそれを更に上回り新記録となったとの報道がありました。
 
これは、今年の旧正月が1月末であったことから、台湾や中国、ベトナムといったアジアの国々からの訪日が増えたことが理由の一つです。しかし、それ以外の国々からの訪日客が増えていることも、間違いないでしょう。
 
この状況ですから、さぞかし日本の旅行会社も好景気なのではないかと思いきや、実際には日本の旅行会社の旅行取扱額は2019年を下回っています。海外旅行や国内旅行が減少しているうえ、訪日旅行の取扱額ですら減少しているのです。
 
つまり、日本の旅行会社は成長するインバウンドビジネスをほとんど取り込めていないどころか、逆に失いつつあることが、データから明らかになっているのです。
 
それでは、私たちインバウンドガイド、通訳案内士はこれにどう対応していくのが良いのでしょうか?現状とその原因を考えながら、今後の方向性について考えてみたいと思います。


インバウンドビジネスは旅行会社を素通り


訪日客数が、爆発的に増えています。昨年12月に単月で過去最高の訪日客数を記録したと思ったら、今年1月は更にそれを上回る新記録との発表がありました。ところが、日本の旅行会社はインバウンドをビジネスに取り込むことができていません。
 
以下のグラフは、観光庁が発表している、訪日外国人旅行者数、大手旅行会社43社のインバウンドビジネス取扱額の数字を、コロナ前の2019年、2023年と2024年を比較したものです。


訪日客数の2019-2024年推移グラフ
訪日客数

 

旅行会社インバウンド取扱額2019-2024年推移グラフ
旅行会社インバウンド取扱額


ちなみに、取扱額というのはあまり意味のある数字ではありません。私がかつて在職していた総合商社では、1990年代まで売上高競争を繰り広げていました。売上高をライバル会社と比較して、一喜一憂していたのです。
 
商社の売上高は計上方法も明確に定まっておらず、代行売上などという謎の売上もあり、業界として売上高競争はとっくにやめています。
 
旅行業界の取扱額というのは、かつての商社の売上高と似たようなもので、あまり経営の実態を示す数字ではありません。ですが、今回はビジネスの傾向を示す一つのデータとして、分析に使用したいと思います。
 
添付グラフの説明に戻りましょう。2024年の訪日旅行者数は、コロナ前の2019年を100とした指数で、116となっています。一方で、旅行会社のインバウンド取扱額は同じく2019年を100とした場合、なんと85と、15%減なのです。
 
旅行者数が急増しているのに、取扱額は逆に減少している。日本の旅行会社は、拡大するインバウンド客を取り込めていないどころか、むしろ市場での存在感を失いつつあるのです。

今後の動向を予想してみよう


なぜこのような状況になっているのか、理由を考えてみましょう。
 
先ず、日本の旅行会社が訪日外国人に直接商品を売るのは、大変難しいという事実があります。考えてみてください。あなたが海外旅行を計画するとき、外国の旅行会社から旅行商品を買うことはないでしょう。逆も同様です。日本の旅行会社のインバウンドビジネスは、外国の旅行会社の下での、ランドオペレータ―的な仕事が中心なのです。
 
そうした業務のため、売上も利益も限定的です。実際、インバウンドビジネスの売上が、日本の旅行会社の売上全体に占める割合は、10%もないのです。これでは、会社として力が入らないのも理解できます。
 
もう一つは、多くの旅行者が、フライト予約と宿泊手配をネット上で行い、旅行会社を使わずに自分で済ませるようになったためです。航空券と宿泊代は、従来の旅行会社の取扱高の主要部分を占めているので、これを失うことは旅行会社にとって大きな痛手となっています。
 
訪日ビジネスの中心的なプレーヤーは、海外OTAに移っていきました。さらに外国船クルーズなどは、宿泊も運送も(更には飲食まで)、全てクルーズ会社が取り込むビジネスモデルなので、日本の旅行会社は出る幕がありません。
 
そしてこの流れは、今後一層強まっていくことでしょう。特に、現在急速に発展しているChatGPT等のAIが、旅行業で活用されるようになると、旅行会社に残された機能である「旅行のプランニング」すら、不要となります。今後個人旅行は、全て自分自身で完結するようになるでしょう。

フリーランス通訳案内士の採るべき方向性は?


今後、日本の旅行会社からのインバウンド関連の仕事は、増えないことがわかりました。個人旅行者を中心に仕事をしたい通訳案内士の方は、日本の旅行会社からの受注以外の方法を、考えていく必要があります。
 
その一つが、ウェブ集客です。私がお勧めするのは、以前からたびたびお伝えしているように、自分のウェブサイトを持ち、Google広告をして、直接旅行者から受注する方法です。高めの受注単価になりますし、何よりもお客さんとの関係性が深まり、その後の知人を紹介してくれることも増えます。
 
もう一つのチャンスが、海外旅行会社からのガイド依頼です。海外の個人客が、旅行手配を地元の旅行会社や旅行コンサルタントに依頼したとき、旅行会社は日本のガイドを探さねばなりません。しかし、信頼できるガイドを探すのは、簡単ではないようです。
 
そんな時、個人集客をしているガイドは、とても重宝するようで、私にも海外の複数の旅行会社から、接触がありました。自分と相性の合う取引先を見つけ、何回か仕事をして信頼が得られれば、時々仕事の依頼が来るようになります。宣伝広告費が発生しないので、これは非常にありがたいです。
 
自分自身で直接集客をすると、お客さんからの紹介や、海外旅行会社からの仕事の依頼が少しずつ増えていきます。そしていずれは、旅行会社に頼らない自立したガイドとしてやっていけるようになるでしょう。これが自分のサイトを持って仕事をしている、最大のメリットです。

まとめ


今回は、「日本の旅行会社はインバウンドビジネスを取り込めない。個人旅行者相手のガイドをしたいなら、自分のウェブサイトで情報発信をして、多くの個人客を集客しよう。」でした。
 
最後まで読んでくれてありがとうございます。よかったら「スキ」も押してくれると嬉しいです。


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