慣れないもの
先日祖母が亡くなった。
駅に迎えに来てくれた父親の車に乗り込んだ際に私は祖母の訃報を知らされた。思っていたより冷静に受け入れることができ、涙も出てこなかった。元々末期ガンで倒れて入院していたため、仕方ないかといった感じで特に悲しさも寂しさも感じないまま病院へ向かった。病院に着くと、白い布がかけられている無機質な簡易ベッドが中央に置かれている部屋に案内された。ベッドに近づき、恐る恐る布をめくると、静かになった祖母の体が横たわっていた。まだ温もりの残っている祖母の頬に触れた瞬間、悲しさとともに熱を帯びた涙が頬を這っていった。視界が滲む中、祖母の手を握り、話しかけた。今は疲れて眠っているだけで、声をかければ起きるんじゃないか、なんていう淡い期待を込めながら。
湯灌の日、私は冷たくなった祖母と対面した。シミやシワがとても少なく、綺麗に化粧を施された姿は、まるで生きているようだった。身体を清める際に触れた手は、冷たくて鈍い硬さがあった。かつて、桜の木の下を歩きながら繋いだ、あのあたたかくやわらかい手とは全く別のモノのように思えた。そして、葬儀当日、祭壇に飾られた祖母の遺影を見た瞬間、涙が堰を切ったように溢れ出した。お弁当を作って二人きりでお花見に行ったこと、お店に遊びに行くと美味しいケーキとコーヒーを出してくれたこと、カラオケでメモリーグラスをデュエットしたこと、温泉でバカみたいに泳いだこと、一緒に酔っ払って互いにキスしまくったこと、眠れない時そばにいてくれたこと、夜な夜な恋バナしたこと、常に笑わせ続けてくれたこと、祖母との様々な記憶が走馬灯のように流れた。祖母は私に沢山の愛情を注いでくれた。本当に大好きだった。
私は十五年間生きてきたが、家族の死はこれで七度目だ。世間一般からしたら多い方だと思う。しかし、何回経験しても慣れないものだ。愛する人が死ぬっていうのは。
“星になったんだよな 時折すごく輝いて
君を照らしてくれる 星になったんだよな”
祖母の存在は常に私の心を明るく照らしてくれている。