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愛の話。

すごく仲の良い男友達がいた
小さい頃からずっと一緒にいて
一緒にいるのが当たり前なくらい
大好きで、大切で、家族みたいな存在
明日、そんな彼とお別れする

別に付き合ってた、とかそういう訳じゃない
確かに好きだった時期はあった
でもそれは、私が「好き」の種類が
よく言う“love”と“like”の違いみたいなのが
分からなかったっていうのが理由な気がする
告白、だってした
振られちゃったけど
それでもずっとそばにいてくれた

昔は嫌いというか怖かった
ちょっと変わった子だと思っていた
でも、ただ不器用なだけだった
素直になれないだけだった
言いたいことを言えなくて
言葉に棘を付けてるだけだった
それに気づいたのは高校に入ってからだった

彼に何があったのかは知らないけど
高校生になった彼はとても丸くなっていた
言葉の棘が無くなってて
かわいいな、と思うことが増えた

彼はすごく頭が良かったから
テスト前には勉強を教えてもらってたっけ
かなりの頻度で教えてもらったもんだから
先生にも付き合ってるの?って言われたっけ
よく一緒に帰ってたな、
私が舞台に立たない時も
部活の公演、公演見に来てくれたよね
毎回感想もくれて本当に嬉しかった

私が彼と話してたとき
彼のクラスの子が言ってたんだけどね
「なんか珍しく嬉しそうじゃん」 って
彼が私と話すときに嬉しそうにしてるって
その時初めて知ったんだ
だってさ、いつもすれ違っても
「あ、どうも」 しか言わないから
てっきり迷惑がられてるって思ってた
でも嬉しいんだって知って
かわいいなと思った
そして気付かないふりをした

私が元彼と別れたときにも
それ以外に色々不満があった時とかも
愚痴とか不満を聞いてくれたよね
いつも聞いてもらってばっかで
ちょっと申し訳ない気もしてたかな
愚痴とか不満ばっかりなのにさ、
自分の言いたいことばっかで
間違ったこともいっぱい言ってるのに
彼は絶対に頭ごなしに否定したりしないよね
絶対受け入れてくれる、
絶対私の味方でいてくれる、
っていう安心感があった
居心地が良くてずっと一緒に居たかった

1回だけ誰にも言えなかった
私にとっては大きな秘密を言ったことがある
「死にたい」って思ってたこと
言っちゃったことがある
それ、いつ?って、心配させちゃって
顔はそんなに興味無さそうな顔してるんだけど
でも声が心配してて、申し訳なくて
だけど気にかけてくれてるのが嬉しかった
また見てないふりをした

昔より喋ってくれることが増えて
彼から話しかけてくれることも増えて
一緒に帰ることが増えてきて
お互いに知ろうとすることも増えてきて
でも、彼にとって私は友達でしかないのだろう
家族のような仲間のような
大切な存在なんだ、って信じてる
そんな彼のことが
私を女として見ない彼のことが


私は明日、新しい場所に行く
彼を置いて、長年過ごしたこの地を出ていく
内緒で、別れも告げずに



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