堕ちる
「おこずかいちょーだい?」
ゆった瞬間堕ちたなー思ったね。
ここまで堕ちるもんなんね。
あっという間に。
一流と言われる企業で20年働いて、
まじめにキャリア積んで。
キャリアアップを目指して、
真面目にまじめに働いた。
2人目の子供を産んだころから
人生の調子が狂ってきた。
「男の子です。はっきり見えますね。」
とうとう男児を挙げる。
長男の嫁としての役割を果たした。
私は人生における責務を果たした。
もうやるべきことをやったんだ。
わたしは喜びに身を震わせ幸せに心が満たされた。
自分と夫の2人分の子供を産んだ。
人口を減らさなかった。
国にも貢献した。
真面目にまじめに生きてきた。
産むことと育てることは全く別のことだ。
わたしには子育ての適性がない。
子供が二人になって育児の負担が
半端なく大きくなった。
自分の時間ねーじゃん。
息して乳飲んでうんちするだけの肉の塊の世話。
やってられるか。
このままばばぁになっていくのか。
まじでしぬ。
なんだこの人生。
耐えがたい日々。
無限に時間を奪ってくる存在。
それでも昔の写真を見返すと
がんばってた自分がいる。
お食い初めの豪華な食卓。
わが子の健やかな成長を願う親の姿。
がんばってたな。
気負って。
2年間の休職を経て復職した。
がんばったなぁ
社長賞もとった。
いやな同僚ともうまくやった。
できない上司の言うことも聞いた。
なんであんなにまじめに生きられたんだろう。
夫が転職した。
土日も仕事がある会社。
月から金まで朝夜ワンオペで、
土日はさらに一日中ワンオペの日々が始まった。
父が死んだ。
ひとって死ぬんだな。
いなくなっちゃうんだな。
ずっと同じ日々は続かないんだな。
ココロが少しずつ壊れていった。