Rebel Musicに関するあれこれ
時代背景
1974年にキングストンのラジオチャートで1位を獲得したこのブルーでワイルドなナンバーは、政治的暴力(political violence)が激化し、市中に銃がまん延していた当時のジャマイカで頻繁におこなわれていた路上検問を題材としています。
この時代、路上検問のもうひとつの目的はマリファナ所持者の検挙でした。
そんな状況下、検問所でボブ自身が体験した警官とのやり取りをセリフ化してライブ感たっぷりに仕上げたのがこの曲です。
RudeからRebelへ
Rebel (反逆者)であること、それが10代後半から20代前半のボブの生き方でした。
ボブはジャマイカ中央部の山中にある人口300人ぐらいの小さな村ナインマイル(Nine Mile)で生まれ、12歳で首都キングトンに引っ越すまでそこで母親と共に暮らしていました。
ゲットー出身のイメージが強い人ですが、本来は田舎育ちの自然児です。
15歳で学校教育を終えたボブは、まず再婚してアメリカに渡った母、次に母親代わりとなった叔母と別れて18歳からキングストンのゲットー、トレンチタウンでひとりで生活していました。
この頃ホームレスも経験しています。冷たく厳しい大都会でアーティストとしての成功を夢見ながら、束縛されずに自由に生きること選んだ若者でした。
彼のような縛られない生き方を選んだ若者を当時大人たちはrude boysと呼びました。
定職を持たなかった一部のrude boysはサウンド・システム(sound systems)と呼ばれるジャマイカ式野外ダンスパーティシステム(発電機+ターンテーブル+巨大スピーカー+DJ)をセットで提供する業者に雇われてライバル業者のパーティを妨害して回っていました。
彼らの迷惑行為はしばしば暴力事件を引き起こし、社会問題化していました。
そんな中、Wailers(Peter Tosh+Bunny Wailer+Bob)はその名もRude Boyというシングルを1965年にリリースして一躍rude boy cultureのリーダー的存在となりました。
ジャマイカの音楽がスカ(Ska)からロックステディ(Rocksteady)、さらにはレゲエへと進化し、ラスタファリの生き方や世界観が社会に広まる過程でrude boysの自己認識にも変化が生じます。
自分たちはrude(粗暴)なんじゃない、rebel(反抗的、不服従)なんだと考えるようになったわけです。
アップデートした自己認識に基づいてWailersも1970年にSoul Rebelという知る人ぞ知る名曲をリリースしています。
Soul Rebelから4年後、ボブはふたたびrebelをタイトルに入れた曲を作りました。
それがRebel Musicです。Rudeでrebelだった若き日のボブをイメージさせる反抗の歌です。
ここには神を信じ、祈りを捧げる「歌う伝道師」の姿はまだありません。
ラフでタフな若者=ボブが、反体制的な視点から「なんで俺たちの自由を束縛するんだ、好きにさせろよ」と吠えています。
白いウエイラー
そんな荒ぶった感じの曲にピッタリはまっているのがブルーズ直系のハーモニカです。
ドライヴしまくる素晴らしいblues harpを吹いているのはLee Jaffe(リー・ジャフィー)。NYブロンクス出身のユダヤ系アメリカ人です。
この時代ボブと行動を共にしてWhite Wailerと呼ばれていたジャフィーは映像作家やフォトグラファーもやっていたマルチアーティストです。
でもミュージシャンとしては無名の存在でした。
NY滞在中のボブとホテルで出会い、意気投合して誘われるままジャマイカについて行ったというヒッピー(hippie)な人です。
ヒッピーが分からない方はこちらをどうぞ。
幼い頃から旧約聖書に親しんでいたジャフィーはマリファナも大好きだったため、何の違和感もなくあっという間にボブやその仲間たちと打ち解けたそうです。
アルバムNatty Dread参加後、ジャフィーはPeter Toshのソロデビュー作Legalize Itをプロデュースしてます。
有名なこのジャケット写真も彼の作品です。
音楽的相性はバッチリだと思うんですが、blues harpをフィーチャーした有名なレゲエナンバーはRebel Music以降生まれていません。ジャフィーの演奏があまりに素晴らし過ぎたせいかもしれません。
ピアニカの風
吹く楽器としてルーツレゲエやダブミュージックで重要な存在になっていったのはピアニカ(melodica)です。
道を切り拓いたのはこの人、Augustus Pablo(オーガスタス・パブロ)でした。
パブロについてはこちらがかなり詳しいです。興味を持った方はぜひDeepLを使って読んでみてください。
演奏も貼っておきます。
ボブと同時代に活動していたパブロですが、残念ながら共演作はありません。
でも後年こんな企画でRebel Musicを演奏してます。
宙を漂いながらこころの奥深く降りてくるピアニカ。切れ味抜群のharpとはまったく別の魅力があります。
ぐるっと回って話がRebel Musicに戻ってきたところで、今回はこのへんで~
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