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マーケティングより上位の戦略で差がついたジョージアの陥落|マーケティング視点で解説

こんにちは。きんちゃんです。

缶コーヒーの市場を分析していたら、マーケティング戦略からはみ出す面白い題材でしたので記事にしてみました。

目次
(1)市場シェア
(2)STP / 4P からみるポイント
(3)マーケティング戦略よりも上のレイヤーから考える 〜サントリーの快進撃をコカ・コーラが止められない根源的理由〜
(4)もし自分がブランドマネージャーだったら

(1)市場シェア

缶コーヒー市場といえば、コカ・コーラの「ジョージア」とサントリーの「BOSS」が2強の市場です。

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実はこれ、2000年から通してみると大きな変動がおきています。

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シェアで3倍の差をつけられていたNo.2であるBOSSが、今まさにNo.1のジョージアを追い越そうとしています。なぜこの変化が起こっているのか、マーケティング視点で見ていきます。


(2)STP / 4P からみるポイント

STP

缶コーヒーのメインターゲットといえば、ブルーワーカーがメインです。おそらく休憩時間で飲めて、カフェイン(興奮剤)が長持ちしやすいコーヒーが、彼らのワークスタイルとマッチしたのでしょう。

ポジショニングは、両者そこまで大きな差は無いように感じます。

※余談ですが、缶コーヒーのポジショニングで特徴的なのはワンダの「朝専用」。これは絞り込み戦略の成功事例ですね。

4P

4Pのうち、Priceから見ていきます。

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金額はあまり変わらないですね。Promotionはどうでしょう。

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缶コーヒーのPromotionは、目的部分が長年一貫していて分かりやすいですね。(本当はここをメインで調べていたので、今回の記事は副産物だったりします。)とはいえ、明らかな差異を感じられる内容でもないので、Promotionだけで大きな差がつくとは考えにくいです。

缶コーヒー広告についての記事は後日、「缶コーヒーCMから読み取る現代社会人の価値観」をあげますのでお楽しみに!

そして、Placeです。消費財のマーケティングは、ここがポイントになることが多い気がします。

缶コーヒーといえば、ブルーワーカーの人が自動販売機で買っているイメージがありますよね。そこで2ブランドの設置数を見てみました。

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こちらが2014年時点の設置数。あれ、SUNTORYさん負けてない?と思いつつ見ていたら・・・

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SUNTORYさん、2015年にジャパンビバレッジ(自動販売機事業を担うJT子会社)を買収していましたね。

なるほど、今回のポイントは自動販売機か!

・・・と、思ったんですが・・・

BOSSの追い上げは2015年以前からすでに始まっているんですよね。分水嶺は、自動販売機というわけでもなさそう

缶コーヒーの販売チャネルは自動販売機とコンビニといった小売店の2種類が大きいのですが、自動販売機の数が83万台対26万台という圧倒的不利な中でも売上を伸ばし続けるているのは、かなり違和感があります

店舗戦略で非常に大きな差がついているはずです

ここで、Placeの途中ではありますがProductを見てみましょう。

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結論から言うとここにポイントがあると考えています。

飽和している日本市場の競争は苛烈です。ヒット商品も、常に高いレベルでアップデートされた商品との競争に晒されています。その際、商品サイクルの速さは激しい競争において有利にはたらきます

そして、それは店舗のバイヤーにも必然当てはまります。ここが店舗戦略で効いたのではないかと考えます。


以上が、「マーケティング戦略」のみから見た「ジョージア陥落の理由」です。

実は今回ここからが真骨頂なのですが、マーケティング戦略よりもさらに高いレイヤーの戦略に遡っていくと、ジョージア陥落の原因のより核心にまで迫っていくことができます

戦略のピラミッド3

(3)マーケティング戦略よりも上のレイヤーから考える 

〜サントリーの快進撃をコカ・コーラが止められない根源的理由〜

なぜ、上記のような競争力の差が生じてしまったのでしょうか。事業戦略に遡ってみます。

その際の原因はおそらく、コカ・コーラのビジネスモデルにあります。

コカ・コーラFC制度の構造的な弱み

実はコカ・コーラは、商品企画と製造・販売が分離しているメーカーです。

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特徴としては全体最適には優れているが、部分最適には向いていない。極論同じ液さえ売れ続ければいい。現場の声が届きにくい構造であることは企画力そのものにも影響を及ぼしそうです。

対するサントリーは、事業一貫体制。現場からリアルな声を吸い上げて本質的な打ち手を打つことができます。※サントリーの新卒向けの記事で、北海道限定商品を開発した営業マンのエピソードがわかりやすかったので、載せておきます。

おそらくコカ・コーラのFC制度は、構造的に飽和市場に向かないのです。


では、なぜこのようなビジネスモデルに違いが生じているのでしょうか。事業戦略のさらにその上。経営戦略にまで遡ってみます。

戦略のピラミッド2

両社の根底に流れるアイデンティティの違い

コカ・コーラはなぜ、あのようなFC制度を取っているのか。

それはおそらく、コカ・コーラは、「コカ・コーラ」というあまりに強すぎる1プロダクトから出来上がった会社だからでしょう。それを中心にすべてを組み立ててきた歴史とフィロソフィーがあります。

対して、サントリーは「やってみなはれ」の精神にあるように、未知の分野に挑戦し続けてきた歴史とフィロソフィーがあります。

もはや会社が持ち続けている美意識のようなもの違いでしょう。あえて言うならば、経営理念が違います


ちなみに、この構造的な差が垣間見えた最近の事例が、多分これ。

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全ての戦略が連なって、企業は動いていきます。目に見える企業のアウトプットも、実は一つずつ遡っていくと、経営理念という根底にあるアイデンティティにたどり着くのでしょうね。こうして改めて見ると面白いですね。


もっとも、ここまで考えると、世界全体での利益最大化を追い求めるという点でコカ・コーラの戦略は一つの正解だとも感じます。

全体最適を優先して、戦略的に日本を切り捨てる。事実日本は、コカ・コーラ本社から刈り取り市場に分類されています。

個人的には、今後の飽和していく市場でこの戦略でどこまで伸び続けていくのかが気になります。

(4)もし自分がブランドマネージャーだったら

もし自分がコカ・コーラジャパンのブランドマネージャーであったら、非常に難しい立場に立たされていると思います。

もはや日本のブランドマネージャーというより、本社のCOO(事業戦略)による影響が大きそうなので。

それでもマーケティング戦略で何かするとしたら、コカ・コーラの強みである自社自動販売機を活かすのが良いのかとは思います。

サブスクを導入して、囲い込みでもしますかね。

コークオンアプリも最近好調のようなので、うまく連携できそうです。

とはいえ、抜本的解決というよりは延命策な気がしますね。何より、サントリーがすぐに追随してきそうです。


ここまでの背景を踏まえると、改めて日本市場でのジョージアの陥落は、必然なのかもしれませんね。


マイペースにマーケティングの記事を書いてます。よければよろしくお願いします。

追記:2019/12/9

CMに着目した記事を上げました!


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