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#講義録・指圧基礎実技 2024.11.6 〜スマホ首の痛みを解消する前頚部の指圧〜

前回に続いて1年生の授業の様子について綴ります。
この記事のタイトル、キャッチ-ですね(笑)たまにはこんなふうにわかりやすいのもいいんじゃないかと思っています。授業でお伝えしたことは頚部の指圧、とくに前頚部を指圧することで首の調子をよくしましょう…というテーマで綴ります。


首は命にかかわる繊細な場所

首を切られる…と言えば、会社を辞めさせられるとか責任を取って立場を退くことを意味しています。つまり、その存在がなくなってしまうことを暗喩しています。
解剖学的に首を見ると、筋肉(骨格筋)と頚椎のほかに重要な器官があります。呼吸に関わる気管、循環に関わる頚動脈、栄養を摂るための食道、頚椎に守られるようにして脊髄が存在しています。
つまり、首を切られることは(鬼でなくても)死んでしまうことを意味します。…鬼滅の刃、ちょっと古かったですね。

その一方で上下左右と広い範囲で動いて、身の危険がないようにあたりを見渡すことができます。また、縦にうなずいたり首を横に振ったりして意思表示をする部位でもあります。
自由に動かせるにもかかわらず、脆弱な場所。自動車事故にあった人なら、ぶつかった衝撃でムチ打ちの症状が出ることもあるでしょう。このように繊細な頚部をどのように扱ったらよいのでしょうか。

首にかかる重さはスイカ1個分

首にかかる頭の重さは、スイカ1個分。平均して5~6kgほどの重量が頚椎にかかっています。
そして、それを支えるのは頚椎と肩甲骨、鎖骨の骨です。
これらの骨と、骨に付着する筋肉が協力し合って頭の重さを支え、動かしています。首に痛みがある、首が動かしづらいという人は、多くの場合、そのまわりの筋肉が硬くなっています。

対象とするおもな筋肉は、僧帽筋、頭板状筋、頚板状筋、肩甲挙筋、胸鎖乳突筋など。もちろん、頚椎につく回旋筋や横突棘筋も外せない存在です。
補助的に施術対象となるのは、後頭筋、後頭下筋群、広頚筋、斜角筋群などが挙げられます。
どの筋肉を中心に施術するかは、相手の訴えや首の動きを見て判断していきます。

スマホ首に起きていること

俗にスマホ首と呼ばれる状態がどんなものなのか、こちらの記事に詳しく記されています。

スマホを見続けることによって起こる首や肩の痛み。
原因としてはスマホの画面を見るため、下を向き続けている状態から首の筋肉に負担がかかると考えられています。
頭がまっすぐ背骨のうえにあるときに比べて、スマホを覗き込むように斜め下を向いた状態でいると、5倍以上の重さ(27㎏前後)が首にかかります。

そのために起こる訴えは、頚の痛みと動きの制限。頭痛や肩こり、眼精疲労などさまざまです。実際に触れてみると、首の横や後ろ側の筋肉が硬くなっています。さて、そうしたときに緩めておく対象となる筋肉はどの部位にあるでしょうか?
硬くなっている後ろ側の筋肉…ではありません。

頚の指圧は前頚部から

首の施術をする際は、まず前頚部から指圧を始めます。
前頚部とは胸鎖乳突筋を指標に押圧する指圧点のことを指し、胸鎖乳突筋の筋緊張を緩める効果を期待できます。

スマホ首になっている人の多くは、この胸鎖乳突筋が左右ともに硬くなっており、頭を前方に突出させるように緊張しています。この部位の緊張を緩めることで首の動きが楽になります。
また前頚部は、迷走神経を刺激することもひとつの目的としています。

1.受け手は横向きに寝る
指圧を受ける人は、左または右を向いて寝ます。
教科書では左を先にとありますが、肩が痛くて下にできないなど相手の状況に合わせてでよいと考えます。

2.胸鎖乳突筋を確かめる
乳様突起と胸鎖関節を目安にして胸鎖乳突筋の走行を確かめます。
わかりづらい場合は、頭をすこしだけ浮かせてもらうとクッキリと筋肉が浮かび上がります。

3.胸鎖乳突筋の内縁を押圧する
前頚部=胸鎖乳突筋の内縁は一番肝心なところ。まずは胸鎖乳突筋の筋腹そのものを押圧できれば良しとします。それに慣れてきたら、次は筋肉の内側、気管や頚動脈が走行しているところに相当します。
頚三角と呼ばれる部位は押す角度を間違えたり、強く押しすぎたりするとオエッとなってしまう場所です。動脈の拍動を感じたら十分な深さと考えてよいでしょう。

4.前頚部に続く頚部の指圧
前頚部を押圧したあとは、側頚部、延髄部、後頚部と順に押圧します。
側頚部はちょうど頚椎の横突起がある場所に相当します。頚板状筋、肩甲挙筋など首や肩の動きに関わる筋肉が付着しています。

延髄部=ツボでいう瘂門(あもん)です。後頭骨と頚椎の境目にあり、後頭下筋群(首を動かす深層の筋肉)がすぐ近くを走行しています。
後頚部は頚椎棘突起に付着する筋肉を左右からはさむように押圧します。親指と示指、中指を対立させて押圧します。

後頚部の指圧

まとめ

前頚部を施術しようとする人はまず、自分自身に頚部の指圧を行ってみてください。胸鎖乳突筋をとらえたら、その筋腹を押します。次に胸鎖乳突筋の内縁を押圧します。
静かに親指を沈めていくと、頚動脈の拍動を感じます。頚部の指圧は上半身の不調を改善すると言われます。
ただし、動脈硬化と診断された人、普段から血圧が高い人には前頚部の指圧は控えておく場所です。十分に注意しながら施術してください。

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かんだひろし@てあてと競技ダンスの人
physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。