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#講義録・指圧基礎実技 2024.4.24 〜押すことで得られるものは何か〜

『鉄は熱いうちに打て』と言われます。
その言葉の通り、何ごとも最初に誰に習うかでそのあとに見るもの、聞くものの理解が全く変わってきます。

そのことを承知したうえで、1年次の実技指導をしています。
勢いに任せて迂闊なことは言えないな…と常々、思いますし、基礎を磨いていくうえで必ず知っておいてほしいことを順序立てて伝えていくことの大切さを感じます。

さて、今日は2回目の指圧実技の講義内容を綴って参ります。

前回の振り返りと押すことで得られるもの

指圧の基本は2つ。
垂直圧と持続圧、ということを前回、お話ししました。
(いきなり相手を押すのではなくて)風船を垂直に押すことで「垂直圧」のイメージができたでしょうか。

垂直圧の練習では風船を使います

今日は実際に、相手の体を押していきます。
さてそれでは、押すことでどんなことを得られるでしょうか。
小さい頃に母親の肩をもんだり、押したりした人もいると思います。

押すことで得られることの一つ目は【筋肉が柔らかくなる】こと。肩こりをほぐすという例を挙げればわかりやすいと思います。
そして、筋肉が柔らかくなることで血液が流れやすくなり、全身の血液循環がよくなる。ひいては、免疫力が高まって体調がよくなるという効果を期待できます。

筋肉の柔軟性が高まって血行が良くなること。
これはきちんとしたエビデンスもありますし、指圧やマッサージの効果として一般的に知られているところです。

さて、そのほかに(押すことで得られるもの)はあるでしょうか。
ただ単に、押したり揉んだりすればいい…というのは勿体ないですね。
みなさんは厚生労働省認定の資格としてあん摩マッサージ指圧師の免許を取得するわけですから、より専門的なことを手で感じ取れるようになってほしいと思います。

それは、押すことで体の状態がわかること。
圧を掛けたときの手指の沈み具合いで【筋肉や骨格の情報を得る】ことを心掛けてほしいと思います。

指圧を身につける仕組みとして、全身をひと通り押せる=手順を覚えることが最初にすることです。それは、あん摩やマッサージも同じです。

まずは手順から覚えます。
するとどうなるかと言うと、習ったとおりに全身を施術すると60分では終わらない。80分とか90分とか掛かります。
60分以内に収めようとすれば、どこかを端折ったり、とにかく速いペースで施術をしなくてはならなくなります。

それが、体の状態がわかることで、どこを重点的に施術して、どこは省いていいのかという施術の組み立てができるようになります。
この「上手な引き算」ができるようになれば、施術時間の短縮につながりますし、より効率的に施術効果を出せるようになります。

押して反応を確かめる

押すことで相手の背中がどのようになっているか、その弾力性を確かめてみましょう。
背骨を中心にして、左と右をそれぞれ、手のひらで押してみます。
ここで大切なのは、垂直圧=まっすぐに押すことと、持続をすることです。

押している途中で手が皮膚のうえを滑ってはダメです。
前回、風船で練習したように、真っすぐに押すことを意識してください。
そして、背中の沈み具合いを確かめてみてください。
場所によって、硬いところと柔らかく感じるところの違いは見つけられましたか?

硬いところは、筋肉が縮んでいて動きが悪くなっている(柔軟性が失われている)と考えていいでしょう。
そういったところを見つけて、そこをていねいに指圧してみてください。最終的には、全体的に均一の柔らかさになっていることが目安です。

肩を押してみる

それでは実際に相手の肩を指圧してみましょう。
場所は、首と肩のつけ根。
耳の下から肩先に向かって撫でると、カーブしているところがあります。
そこを最初に押す場所として、親指をあててみてください。

教科書では、肩の上のところ(肩甲上部)1か所を押すという表記になっています。実際には今、押したところから肩先(肩峰)に向かって横に3点、押してみてください。

親指は進行方向を下にして重ねて、漸増(ゆっくりと加圧)、持続、漸減(ゆっくりと減圧)の要領で押していきます。
漸増=1,2,3
持続=1,2
漸減=1,2,3
このように数えながら押すと、ゆったりとした一定のリズムで押すことができます。

※補足)実際に1,2,3で3秒間、時間をかけるという意味ではありません。リズムを一定にするために数を数えることが目的です。

肩甲上部の指圧

背中を押してみる

次に背中を押してみます。
腰や背中が辛い人って、結構いますので、ここはしっかりと押せるように練習していきます。

具体的に押していく場所ですが、背中を触ると骨がポコポコと飛び出ているところがあります。
それが背骨の一部、棘突起(きょくとっき)という場所です。
サンマの塩焼きを食べると骨がトゲトゲに並んでますよね、アレとおなじです。

そして、押す場所はその棘突起のすぐ横、背骨のキワを押していきます。
ここには姿勢を保つための筋肉がついています。(横突棘筋、多裂筋など)

教科書では、肩甲間部、肩甲下部という呼び方をしています。
肩甲間部は、左右の肩甲骨の間の範囲、肩甲下部は肩甲骨の下角(一番下)から骨盤の手前までの範囲です。
まずは、シールを貼って指圧点の場所を確かめてみてください。

茶色いラインが背骨(棘突起)そのすぐ横を押さえます

押圧時に気を付けること

さて、夢中になって押していると肩や腰が辛くなってくることがあります。
相手は楽になったけど、施術者は施術していて辛くなったのでは本末転倒です。

施術をしていて肩や腰が辛くなる原因は一つ、姿勢です。
押す場所と手順がわかってきたら、こんどは自分の姿勢に気を付けてほしいと思います。

まずどうしても起きやすいのが、押している指先だけを見てしまうこと。
そうすると頭が下がって、肩に力が入ってしまいます。これは、屈筋だけを使って押していることになります。

施術していて肩が辛いな、と感じたら、目線を上げること。手元を見るのではなく1m位遠く、相手の反対側の肩先を見るようにしてください。
そして一度手を放していいので、自分の肩を回してみましょう。
首と肩の力を抜くことが、施術を仕事として長く続けるうえで大切なことです。

もう一つは、息を吐きながら押すこと。
息を吐くことで肩も下がりやすくなり、力が抜けます。

姿勢に気を付けることは【上手に力を抜くこと】=脱力と言い換えることができます。無理のない姿勢で押せるように、練習をしてみてください。

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かんだひろし@たまねぎ
physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。