コリも恋愛も一緒、押しでダメなら引いてみな。
徒手療法や整体という言葉のなかには、じつは様々な手技療法が含まれています。思いつくだけでも、指圧、マッサージ、カイロプラクティック、リフレクソロジー、オステオパシー、タイ古式マッサージ、均整法、野口整体、操体法などなど…。◯◯流というものまで含めたら、まだまだ出てきます。そのなかでも、一番わかりやすいのは「押すこと」と「もむこと」でしょう。
昭和の手技療法は「押すこと」
昭和の時代、「おせば生命の泉湧く」で一世を風靡したのは指圧でした。昭和40年代半ばに放映されていた「アフタヌーンショー」という番組で、浪越徳治郎氏が3分間指圧というコーナーを持ったことに端を発します。
当時としては、昼間っから水着姿の女性がテレビに登場したことも珍しく、指圧の名前は一躍、有名になりました。
私も母の影響を受けたこともあり、指圧を学んで今に至ります。
指圧の考え方は「すべての病気の原因はコリである」という万病一元論に基づいていました。したがって、どうやってコリを見つけて、それをほぐしたらいいか、ということを極めるのがカッコいいと考えるようになります。
なかには背中全体が硬く、親指で押すだけでは到底かなわないという御仁もいます。しかし、肘や足などを使うのはもってのほか。指圧という名前の通り、指で押すことを極めなさいと教えられてきました。
押してダメなら引いてみな
しかし、単純に押すだけではなかなかコリはほぐれません。
力いっぱい押していたら指は痛くなりますし、指圧を受ける人も感覚が鈍くなりさらに強い刺激を求めるという悪循環に陥ります。語弊を恐れずに言えば、強く押すことは感覚を麻痺させてさらに強く押してほしいという常習性に陥るため、商売としてはいいのかもしれません。しかしそれは、決してお客さん本人のためにはならないのです。
それならどうするか、です。
「垂直圧」という言葉を身に染みるまで学ぶのですが、これはある点に向かってまっすぐに押すことを意味しています。手指の感覚を研ぎ澄ませると、押していてそれ以上押せない、という臨界点に達します。
そこからは恋愛と一緒。
わずかに引いて、しばらく待ったら再び押して、という駆け引きになります。ほんとかな?と思いますよね。
百聞は一見に如かず。
狙いを定めたら、よそ見をしてはいけません。指圧の場合ですと、よそ見をすることは押している圧が中心からズレてしまうことになります。
垂直圧という言葉だけでは十分に伝えきれないのがもどかしいのですが、芯を捉えて押す、引くという圧操作をすることでコリは少しづつ緩んできます。