歯磨きしながら、ぼーっと。
眠りから覚めた、今は4時。
起きてしまえば暗くたってなんだって「朝」と呼んでしまう。
今日は何故だか1日を勝手に少しはやく始めてしまったらしい。
起きるとすぐに歯を磨きたくなるので寝ぼけ眼で洗面台の前に立つ。
鏡に写る自分がやけに疲れてるみたいな表情をするので
「朝からそんな顔せずに笑っときなよ」と心の中で鼓舞してみる。
いや、でも一人で鏡の前で笑ってんのもなんだかな、と思いながら。
歯を磨きながら思い出す、小学校の頃の話。
よくある歯の磨き方講習会みたいな、そんな時間だった気がする。
あの日は歯医者さんみたいな男の人が私たちの前で話をしてた。
「実は歯の並びは色々で、ただ磨いているだけではうまく磨けないんだ。」
私たちの歯は意外と複雑なピースの集まりらしかった。
ただの白い四角い、少し形のばらつきがある物体が口の中に生えてる、
そんな簡単な話ではないみたいで面白く感じたことを思い出す。
「例えば前歯の裏側、どう磨くときれいになると思う?」
そう問われた時、私は必死に考えた。
前歯の裏側を磨く、何か特別な方法があるんだと思った。
すごくすごく必殺技みたいな秘技があると疑わなかった。
だから考えても考えても答えは出なくて頭を悩ました。
その時、斜め前の男の子が手をあげて大きな声で答えた。
「歯ブラシを縦にして磨いたら綺麗になる!」
そんな、縦にしただけじゃ必殺技に聞こえないし物足りない。
そう思ってまた考え直そうと思った私の頭の中に、
「はい、その通りです。実は、」
あれ、正解なの?縦にするだけでいいの?
私はすごくすごく秘技があると思って期待してしまった。
その先の難解な、だけどワクワクする魔法みたいな技を望んでいた。
でも、世界はあっけなく、シンプルな答えを持っていた。
何か問われた時、その先にある答えはきっと複雑で面白い、
そう思ってなんだか考え込んでしまう。
実はその時間こそがご馳走なのかもしれない。
でも案外シンプルな答えが待ち受けてたりすることが多い。
問いに対しての答えを考える時、なんだか想像力を掻き立てられる。
想像しながら思考する、これはこれでご馳走だとしても、
待ち受けているこの世界の答えは案外違ったりする。
この世界の答えっていうのは、この世界の大きな目がみる主観で
そこに囚われる必要はないかもしれないけど、
少なくともこの世界に生きているのだから知っておかねばならない。
世界は思ったよりシンプルで、複雑だ。
だから生きていること、考えることが面白い、そうらしい。
なんてことを歯磨きしながら考えて、
口を濯いで口の中の一切を小さな洗面所に流した時、
また今日もちょっと違う日になる、そう期待してしまう。
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