ことばを紡ぐ
先日、久々に本を読んだ。
読んだのは、原田マハさんの「本日はお日ごろもよく」という小説だ。
何人かの友人が薦めていたので、ずっとずっと読みたいと思っていたが、なかなか読むタイミングを逃していて、ようやく手を伸ばすことができた。
結論として、みんながおすすめするのが分かる、とても素敵なお話だった。
ざっくりいうと、OLの主人公 二宮こと葉が、幼馴染の結婚式に出席した際、伝説のスピーチライター 久遠久美のスピーチに出会い、衝撃を受ける。その後、弟子入りし、スピーチライターとして成長していく姿や、その中で起きていく出来事がえがかれていく、というものだ。
スピーチライター。
そんな職業があることを知らなかったので、私はすごく興味をそそられた。
昔から、作文を書くことが割と得意で、言葉を発するのも好きだった。たかが、国語の授業の音読で、自分の順番が回ってくるのをあんなにも楽しみにしていたのは、私くらいなのではないだろうか。
物語の中で、スピーチライター久遠久美さんが書いたスピーチが披露される。そのスピーチがとても美しい。
同じ日本語を使っているのに、言葉の”選び方”・”並べ方”、そして”話し方”によって、受け手に与える印象は大きく変わってくる。その場の空気感をガラリと変えてしまうパワー。言葉の持つ力。それが本の文面から伝わってくるのだからすごい。
誰しもが、人生に一度は、学校の先生のスピーチだったり、知人の結婚式のスピーチなどで心を打たれた経験があるだろう。
ちょうど先日、この本を読んだ後に、友人の結婚式に参加したのだが、勢いで話すような人もいれば、事前に入念に用意した原稿を見ながら、台本通り話す人など、様々だった。
"事前の準備"と"感情"の両方が、スピーチに注がれてこそ、人を感動させるスピーチができるのだなぁと身をもって感じた。
その結婚式の最後に、新郎のお父様がなさったスピーチは、内容が簡潔で、落ち着いた口調で、言葉の裏からお父様の見てきた人生、その重さが感じられ、なんとも見事だった。
わたしはまだ、そんな大きな場で誰かにスピーチを贈った経験はない。けれど、いつか来る、大切な人に言葉を贈るときの瞬間に、そんな、きれいなことばを紡げる人になりたいと、強く思った。