見出し画像

サッカー選手のフォルム −立姿・技術・身体・パフォーマンス−


立ち姿

フォルムとは骨格や姿勢の特徴のことです。いわゆる姿・形ですね。私たちは選手の状態を見る時、真っ先にチェックするのは立ち姿の自然さです。人体のテンセグリティ構造がニュートラルであれば、それが立ち姿に現れます。人が無理なく立っている状態で、身体のバランスが整い、力みがなく、安定している姿勢こそが自然な立位です。

骨格と筋肉のバランス

骨盤の位置はニュートラルにあります(前傾や後傾せず、体幹を支える適切な位置にある)。脊柱はS字カーブを維持しています(猫背や反り腰にならず、自然なカーブを保つ)。頭は背骨の延長線上にあります(前に突き出たり、後ろに引きすぎたりしない)。足のアーチが適切に機能しています(偏平足やハイアーチではなく、地面に対して適度な接地がある)。

力みのないリラックスした姿勢

肩がすくんだり、力が入りすぎたりせず、自然に下がっています。腕は不自然に緊張せず、自然に体側にあります。足の重心は偏りすぎず、左右均等に体重が分散されています。

動きの準備ができている安定性

無理にピンと背筋を伸ばした硬い姿勢ではなく、少しの揺らぎにも対応できる柔軟な安定感がああります。足の裏でしっかり地面を感じつつ(踏み込める)、適度な遊びがあることで歩き出しや体重移動がスムーズにできる状態です。

見た目の自然さ

過度に意識されたモデルのような「作られた」姿勢ではなく、無意識でも美しく立てる状態です。これは本当に重要なので、サッカー選手のちょっとした立ち姿勢をチェックするようにしています。例えば、子供が何も意識せずに立っているときのような、無駄のない姿勢が理想です。

世界のトッププレイヤー

ジャマル・ムシアラ選手(バイエルン・ミュンヘン)

ドイツの若き至宝ムシアラ選手の歩行は自然な立ち姿勢そのものです。彼の柔軟な骨盤の動きから放たれるしなやかなドリブルの根源が詰まっています。動きに硬さがないのは骨格のテンセグリティが整っているので筋肉の過緊張が少ないからでしょう。

骨盤が自然なニュートラルポジションにあります。骨でしっかり立ち踏ん張っていないので仙骨を軸に動いています。
②左右の脚が分離できているのが特徴で、足の重心が均等に分散されています。
③膝が軽く緩んでおりロックされていません。仙腸関節の真下に脛骨があり理想的です。
④体幹が安定し肩が力まずリラックスしています。頭の位置が適切で視線が前を向いています。
胸骨の向きが良くとても自然で綺麗なフォルムをしています。

ムシアラ選手のドリブルのしなやかさは、立ち姿勢やフォルムに秘密があります。そして、それは彼が実践する個人戦術と相関し、理にかなった最適解のプレーを生み出していると考えられますこれは、彼の身体操作性が卓越していることの証明であり無理なく動けるからこそ、最高のパフォーマンスを発揮できることにつながります。彼のドリブルは、単なるスキルではなく「体の合理的な使い方」そのものが戦術になっていると言えます。

①骨盤が安定し股関節の可動域も広いので体幹直下にボールをおいての沈み込み(重心移動)がスムーズでしなかやです。
②低重心と膝の曲げによって瞬間的な方向転換やフェイントのキレを生み出しています。
脊椎でスピードをコントロールしています。仙腸関節が機能しているので仙骨近くの臀筋とハム近位が発達しています。
骨盤がやや前傾しており脊柱のしなりと連動しています。上体が硬くならずリズムのあるドリブルを可能にしています。
⑤軸足(支持脚)の使い方が優れています。足裏の接地感が強く、母指球を意識した立ち方になっており、細かいステップを刻みやすい状態です。
⑥ボールに触れる瞬間につま先と膝の向きが連動しており、次の動きへの準備ができています。
⑦足首の柔軟性が高く接地の際に過度な負荷をかけることなくスムーズにステップを踏めています。

アーリング・ハーランド選手(マンチェスター・シティ)

彼の姿勢はリラックスしており無理な緊張がなく、自然なアスリートの立ち姿になっています。重心の位置が安定しており左右の足に均等に体重が分散されているように見えます。足幅が肩幅よりやや広めで、地面にしっかりと立っている様子がわかります。

①下半身の発達が際立っており、特に大腿四頭筋の発達が顕著です。これにより強い推進力と安定した姿勢が確保されていると考えられます。強靭で発達した大腿四頭筋を最大限に活かすのが骨盤機能の再活性化です。
②体幹の安定性も高く腹筋や背筋のバランスが取れているため、姿勢が崩れていません。
③腕がリラックスした状態で下がっており、無理のない自然なポジションになっています。
首が自然に伸び頭の位置が適切です。顎を少し引いた姿勢になっており、視線は前方に向けられています。
⑤肩の力みがなく自然に落ちており、過度な胸郭の開きや猫背の兆候は見られません。

ハーランド選手はスプリントとフィジカルコンタクトの強さが特徴の選手であり、この立ち姿からもその特性が表れています。股関節の柔軟性と筋力のバランスが取れているため、方向転換や爆発的な加速に適した姿勢になっています。自然な立位でありながら、動き出しの準備が整っている点も彼の身体能力の高さを示しています。

① スタート時の骨盤の前傾と股関節の伸展
動き出しの瞬間、骨盤をやや前傾させ、強く股関節を伸展させています。これにより1歩目の爆発的な推進力を生んでいます。
② 胸郭と脊柱の連動
胸郭を過度に閉じず、腕振りと連動して自然な回旋運動を作り出します。これによりストライドを無理なく最大化しスムーズな加速が可能になります。③ 骨盤の安定した前傾とストライドの長さ
骨盤のコントロールが優れているため、加速時に過度な上下動がなくロスの少ない動きができています。

ハーランド選手の特徴である「長いストライド+爆発的な一歩目」は、骨盤の機能性と脊柱の連動性の高さを証明しています。

MTR Method Lab®︎のサポート選手の変化

私たちMTR Method Lab®︎がサポートできること。

①筋肉チューニング(施術):これまでのサッカー人生で積み重なったトリガーポイント(筋拘縮)を解きほぐし、筋肉を再活性化させます。どうしてもセルフケアやストレッチでは解決できない問題です。様々な徒手療法の研究し、たどり着いた手技で選手の體をインナーマッスル(深層筋)からリセットさせます。

②栄養改善(サプリメント):サッカー選手は思っている以上に質的栄養失調に陥ってる人が多いです。ほぼ毎日プレーしていればエネルギー不足になるのは道理です。必要な栄養素はサプリメントででも追加すべきです。質の悪い筋肉は栄養も関係します。

③エクササイズ(リアクティベーション):高負荷のトレーニングをする前にやることがあります。骨格基準の動作ができなければ、いくらトレーニングで筋肉量を増やしても怪我が増えるだけです。もちろん、刹那的にはパフォーマンスが上がることはありますが、まず骨格通り體を動かすことができるかをチェックする必要があります。100名のプロサッカー選手がいれば、私たちが指標とする動きを100点満点で実践できる選手はほんの2、3人です。だから、多くの選手が接触もしていないのに筋肉系の怪我をするのです。

④走力強化:サッカーは走り回るスポーツではありません。しかし、最低限の走力を装備していないと監督のオーダーに応えられないフィジカルの弱い選手として構想外になることも増えています。でも、走力自慢の選手ばかりがトッププロとして活躍しているわけではありません。サッカーの原理原則をしり、最高のエンターテイナーとして魅せるプレーができる選手がより高いカテゴリーに進んでいくのも事実でしょう。あの三笘薫選手もスプリントだけではなく持久力もかなり強化しているのは有名な話です。そんな走力のベースを構築するための理論があります。

個人戦術指導:フットボールには原理原則が存在します。ブラジル人を見ていると、それは自然と身につくものだと思いますが、日本ではなぜか間違った指導がまかり通っています。(ブラジル人は原理の部分ですね。原則は苦手な選手が多いのも事実です笑)キックやコントロール一つとっても、體に無理な技術でプレーしていればいずれ歪みとなり、パフォーマンス低下にもつながります。

固定のnoteにメソッド概念とアプローチを掲載していますので、興味がある選手や、将来プロを目指す育成年代選手の保護者のみなさんにはぜひお読みいただきたい総論になります。

MTR Method Lab®︎では、これらをワンストップで提供しプロサッカー選手たちをサポートしているわけですが、ここ数年の成果として顕著に現れるのがフォルム(立ち姿)の変化です。パフォーマンスが激変して急に活躍し始める選手は総じて数年前に比べてフォルムが自然に戻っています。いわゆるニュートラルです。力みのない自然で美しい立ち姿に近づくと共にプレーの質が高くなっていきます。もちろん、筋力に頼りすぎることなく骨格で動くプレーはキレや加速に現れます。無駄なエネルギー消費が減るので省エネ体質となり比例してスタミナが高まっていきます。そんなパフォーマンスが目に見えて高くなった選手を数名ご紹介します。

堀米勇輝選手(サガン鳥栖)

堀米勇輝選手は、コロナ期にサッカー選手のサポート事業がやや停滞していた時期に出会ったエポックメイキング的な選手です。

堀米勇輝選手は、裸足ジョギングやワラーチランなど、崩れた重心線を戻すために"足の再生"から入りました。 そして、筋肉チューニングで股関節屈筋群のニュートラル化を図り骨盤と股関節の機能性を高めました。 大腰筋や腸骨筋の筋拘縮が減ったことで、骨盤をニュートラルに戻す意識のランニングフォーム矯正を実践。さらにリアクティベーションで骨格基準の身体操作を身につけたので骨盤から胸骨までの高重心が使えるようになり視線が上がり視認性が高くなりました。その結果、プレーに余裕と本来のテクニックが活き、チームにパウサ(小休止)を入れることができるゲームメーカーへ変貌を遂げました。

引用したXの投稿写真は過去と現在の比較。年齢関係なくJ1の舞台でプレーが通用するまでになったのは、姿勢や視線から明らかです。サガン鳥栖のユニフォーム姿の右写真がより自然に見えるのは立ち姿の変化です。

2021年秋に出会ってからの堀米勇輝選手の濃密な4ヶ月間を綴ったノンフィクションはこちらです。育成年代は常に世代別代表に選出され、タレント豊富なプラチナ世代においてU17W杯でもスタメンを張った逸材でした。しかし、プロの壁は厚く、そこから伸び悩み、氣づけば語れるような実績がないままプロ生活も10年を超えて"引退"の2文字がちらつき始めた2021年の秋に出会いました。そこから4ヶ月で劇的な再生が始まり翌年2022年のJ1開幕スタメンを勝ち取るまでのストーリーです。

福田翔生選手(湘南ベルマーレ)

たった2年前の2023年1月に出会ったとは思えないほど劇的な変貌を遂げたのが湘南ベルマーレの2025年J1開幕3連勝の立役者になった福田翔生選手です。正直に言うと、出会った当時はここまで急成長するとは想像できませんでした。一つ上の兄、東京ヴェルディの福田湧矢選手(当時はガンバ大阪)のたっての依頼だったので、一度会っておくかという感じでミーティングしました。

初対面の印象は「自信なさげな内気で朴訥な青年」そのものでした。ただ、実直で真面目な性格はすぐに伝わってきたので、やるべきことをやれば可能性は無限にあるという主旨のことを丁寧に伝えました。担当は、柔道整復師兼アスレティックトレーナーの葛西真也を任命しました。整形外科勤務から心機一転アスリート業界へという転職組でまだ入社したばかりのセラピストでした。葛西は青森山田高校サッカー部出身で、東福岡高校出身の福田翔生とは同じ高体連強豪校出身ということもあり、界隈では色々あるであろう裏事情話で意気投合したのかもしれません笑

選手がセラピストを信頼すると一気に改善進捗が進むケースが稀にありますが、福田翔生選手の場合がまさにこのケースでした。葛西は新しい環境で、これまでできなかった自分の考えを試したいという気持ちが強く、その探究心がそのまま福田翔生選手の再生ストーリーにドンピシャではまった形になりました。

成績の変遷:圧倒的な成長曲線
2019年から2022年:FC今治(JFL⇨J3)34試合0ゴール
2023年:YSCC横浜(J3)21試合11ゴール
2024年:湘南ベルマーレ(J1)34試合10ゴール
2025年:湘南ベルマーレ(J1)3試合2ゴール(第3節終了時)

元々は足の速いサイドアタッカーでしたが、YSCC横浜では途中からCFに抜擢されて才能が開花しました。頻度高く筋肉チューニングを施したので全身が硬直しているような過緊張状態から脱しつつありました。そして、持ち前の高い技術が活きて慣れないCFでもゴールを量産し始めて自信を深めました。

事前に伝えると彼が緊張してしまうと思い、息子と2人でこっそり視察した2023年6月10日の愛媛FC戦が大覚醒の始まりでした。開始2分で先制点を取ったものの、その後は膠着状態に陥り試合巧者の相手に2得点を許す苦しい展開。「今日は1点見れたし良かったな」と息子を慰めていたアディショナルタイムにまさかの2得点で劇的な逆転勝利でした。キャリア初のハットトリックがまるで漫画のような出来事で、この青年の将来は、私の想像を遥か斜め上を超えていくから先入観は捨てよと肝に銘じたことを今でも鮮明に覚えています。

では、福田翔生選手はいったい何を変えたのか?
全てを変えたと言っても過言ではありません。

無名だったJ3選手が、たった2年でJ1の舞台で二桁得点を決めるストライカーへと進化。湘南ベルマーレの 福田翔生は今や“時の人”となりました。フォルムの変化を見れば一目瞭然ですが、その姿はまるで別人です。人体のテンセグリティが調和し、力みのない洗練された姿勢へと変貌しました。姿勢の変化がプレーの精度とスムーズな動作に直結し、無駄のない柔軟な動きが可能になりました。

ネイマールのような流動性の骨盤機能をもっている福田翔生選手は、今シーズンはボックス内での仕掛けを新たな武器として勝負していますCF経験が少なかった彼はどうしてもボックス内のフィニッシュに絡む回数が少なく、大きなスペースがあるカウンターでの得点が多かったです。しかし、今シーズンは個人戦術のアップデートによってポジショニングの質を向上させ、ボックス内での仕掛けが得意なストライカーへと進化しています。シュート機会の創出と決定力が格段に向上しています。

「具体的に何を変えたのか?」

  • 栄養を変えた:  体の内側から改善し代謝効率を向上。食事のタイミングと栄養素のバランスを見直し持久力とリカバリー能力を高めた。エネルギー供給の最適化により試合中のパフォーマンス低下を防ぐ。特に有機ゲルマニウムを戦略的に摂取した。

  • 筋肉を変えた: 筋肉チューニングを実施し過度な筋拘縮を低減。局所的な疲労を減らし可動域を広げることでより滑らかな動きを可能にした。瞬発力と持久力のバランスを整え、爆発的な加速ができる身体へ。

  • 血と血流を変えた: 酸素供給の効率を上げるために血流を改善。筋肉チューニングによって毛細血管の発達を促し、筋肉への酸素運搬能力を高めた。これにより試合終盤でも疲労しにくく安定したプレーを維持できるようになった。

  • 足・骨盤・脊柱を変えた: 姿勢と身体操作を骨格基準で最適化。足元の安定性を高めることで、ボールタッチの精度向上を実現。骨盤の前傾角を調整し、股関節の可動域を最大化。脊柱のアライメントを整え、上半身と下半身の連動をスムーズにしプレー時のエネルギーロスを削減。

  • 個人戦術を変えた:ピッチ上での立ち位置と動き出しの質を磨き、プレーエリアを拡張。オフ・ザ・ボールの動きの意識を高めDFの背後を突くプレーを増やした。相手の動きを先読みし決定機への関与を最大化。

  • メンタリティを変えた:パーソナルコーチングによって試合中の心理的な浮き沈みを減らし、状況に応じた冷静な判断力を身につけた。プレッシャーのかかる場面でも落ち着いてプレーできるメンタル強化を実践。成功体験を積み重ねることで自信を獲得し、勝負どころでの決定力を向上。

「ポテンシャルの解放、そして覚醒」

こうして福田翔生選手は、無名のJ3選手からJ1屈指のストライカーへと生まれ変わりました ですが、これはまだ序章に過ぎません。さらなる成長を続け、今後のJ1リーグで、そして次世代の日本代表として活躍が期待される新星です。

福田翔生選手を担当しているMTRチューニングスペシャリストの葛西真也(柔道整復師兼アスレティックトレーナー)の手記はこちらです。選手とセラピストが二人三脚で歩んだ1年の軌跡です。福田翔生選手がサッカー選手として自信を取り戻し、プロサッカー選手としてやっとスタートを切れた5年目のシーズンを振り返りました。

籾木結花選手(レスター・シティWFC)

彼女が私のLabに訪れたのは、日テレ・東京ヴェルディベレーザ時代の2019年5月まで遡ります。MTR Method Lab®︎では現在多くの女子サッカー選手をサポートしていますが、そのきっかとなったのが籾木結花選手です。男子選手に比べ、大怪我の発生時期が圧倒的に低年齢化している女子選手の実情を教えてくれました。中でも女子サッカー選手の前十字靭帯断裂は世界的に問題になっています。MTR Method®︎の開発がやや停滞していた時期に新たな課題を投げかけてくれた選手なのです。

プロアスリートとは思えない小柄な女性ですが、聡明さと意志の強さは初対面からすぐに伝わってきました。彼女に会うまでは女子サッカーは分野外だと勝手に判断していた自分を恥じ、YouTubeで彼女たちのプレーを何度も観ました。
「上手い…」
スピード感とはまったく違う、技術と知性を感じるサッカーを表現していました。特に、今では世界の女子サッカー界におけるMFの3本の指に入るであろう長谷川唯選手とのコンビネーションは絶妙で、これは凄まじいとただただ感嘆してしまいました。

2025年SheBelievesCupアメリカ戦にて

籾木結花選手は初めての女子サポート選手でしたが、前十字靭帯断裂の謎を解明すべく、筋肉チューニングにかなり多くの時間を割きました。筋拘縮(トリガーポイント)の蓄積が多いと、立ち姿以前の問題としてフォルムが変わってしまいます。女子選手で顕著になるのが浮腫みです。男子でも筋肉の張りとはちがうパンパンに膨れ上がった下半身の選手は多いですが、それ以上に女子選手は浮腫みます。女子はホルモンバランスも影響してくるので、食事や服薬で腸内細菌叢が乱れれば、すぐに筋肉の質が悪化して血流を阻害します。静脈が滞れば老廃物の代謝も滞ってしまい體に浮腫みとして滞留します。

籾木結花選手も例外ではなく、下半身の浮腫みをいかに流していくかが改善序盤戦の課題になりました。浮腫みの多い體は血行不良ですから、エネルギー代謝も悪くスタミナに問題が出てきます。筋肉チューニングで改善進捗は出ていましたが、浮腫みの解決には時間を要していました。そこで提案したのが短期集中の食事制限がセットになったマフェトン理論でした。

籾木結花選手曰く、
「私は自分の“走り”に関して、自信を全く持っていませんでした。それは長い距離を走るスタミナに関しても、短い距離を速く走るスプリントに関しても、です。身体が小さく身体的に恵まれていないことによって「走ることに関して自分は全然ダメだ」と自分で無意識のうちにブレーキを掛けていたように感じます。また、試合では90分走ることはあっても、歩いたり走ったり止まったりするので、連続的に90分以上を走るという経験は今までありませんでした。
マフェトンを始めてみると、数日経ったときに「走ることが楽しくなってきたかもしれない!」と感じました。しかしその楽しさと同時に、マフェトンの最終日に120分を走ることに対して「本当に走れるのか?」という不安が、120分を走り切るまで入り交じっていました。
120分、20kmを超える時間と距離を、この自分が走り切ったときの達成感は今でも忘れられませんし、その後1kmx10setsを走り切った時の達成感も忘れられません。 それは今までに自分が成し遂げたことのないことを成し遂げるという達成感に加え、自分が無意識に掛けていたブレーキを少しずつ離してアクセルに切り替えていく感覚がそうさせているのかもしれません。」

2週間のマフェトン理論実施中の折り返し地点となる2020年1月12日に130分20kmのLSD(Long Slow Distance)を実施しました。そして、最終日となる2020年1月19日に130分22kmのLSDを実施しました。当時51歳だった私は、この時、初めてプロサッカー選手のランニングパートナーを務めました。2回目のLSDは都合があり夜になってしまいました。2人で寒くて真っ暗な多摩川の河川敷を黙々と走りました。走り切った時の籾木結花選手の心からの満面の笑はいまだに忘れることはありません笑

籾木結花選手の場合は、この2週間のマフェトン理論で歯車が嚙み合った感触がありました。マフェトン理論実践の効果は有酸素ベースの構築にありますが、つまり、それは細胞のミトコンドリアの活性化に因るものです。ミトコンドリアが元気になればエネルギー代謝が向上します。元々、技術も高く個人戦術がしっかりしていた選手が動けるようになれば、プレーは見違えるように良くなっていきます。その後、2020年5月にアメリカに移籍してからはセルフケアやエクササイズの指南や栄養サプリメントの提供など遠隔でのサポートになりましたが、一時帰国時は集中的に筋肉チューニングを施して筋拘縮を低減させています。

フォルムの変化とパフォーマンスの向上

  • 姿勢の変化:骨盤の機能性が高まり動作の軸が安定。プレー中に重心がブレにくくなりターンや方向転換時のバランスが向上。身体の中心線を意識した動きが可能になりフィジカルコンタクトでも耐えやすくなった。

  • 脱力の獲得:長年の筋肉チューニングによって無駄な緊張が抜けることで、筋肉の柔軟性と可動域が広がり、しなやかな動きが可能に。特にドリブル時のリズムが軽やかになりスピードの変化を自在にコントロールできるようになった。

  • 技術の向上:元々レベルの高かったボールタッチの精度が増し、より繊細なコントロールが可能に。インサイド・アウトサイドの使い分けがスムーズになりボールキープやパスの精度が向上。視野の確保も容易になりゲームメイクの幅が広がった。

  • 運動効率の向上:全身の連動性が高まり上半身と下半身の動きが調和。無駄な動きを削減し持久力の向上にも貢献。ダッシュやステップワークの切れが増しプレー全体の流動性が改善された。

籾木結花選手とアメリカ選手の骨盤の状態は一目瞭然
フットボールは小さい選手にもメリットは多い。

そして、昨年12月に実施した個人戦術トレーニングでは、男子選手に混じってもまったく遜色ない、むしろ秀逸なプレーで彼らを驚かせていました。身体が小さくフィジカルで優位に立てない選手は頭を使うんだよと、そのプレーの数々が物語っているようでした。ドリブルのフォームでもわかる通り骨盤がしっかり立っているので目線が上がり視野の確保に無駄が減ったようです。スペースに余裕が生まれ、味方のために時間を作れる選手になっていました。

イングランド女子スーパーリーグのレスター・シティWFCでの活躍が認められ、先日アメリカで実施されたSheBelieves Cupに参戦する日本代表(なでしこジャパン)に3年半ぶりにに招集されました。籾木結花選手は優勝決定戦となる世界1位の強豪アメリカ相手に先発出場し、開始2分で先制点をあげる大活躍。当該大会における日本代表初優勝の立役者になりましたが、彼女の成長を間近で見てきた私にとっては驚きよりも必然と確信の一撃でした。

2018年の出会いから2021年辺りまでの籾木結花選手の再生ストーリーを軸に、私が體の神秘に挑むノンフィクションはこちらです。「私は自分の“走り”に関して、自信を全く持っていませんでした。それは長い距離を走るスタミナに関しても、短い距離を速く走るスプリントに関しても…」そんな籾木結花選手がアメリカ、スウェーデン、そしてイングランドに渡るまでのベースを構築していった長編ストーリーです。

藤井一志選手(大宮アルディージャ)

藤井一志選手は、東海大学の3年生だった2023年1月にDMをもらい初めて筋肉チューニングを受けてもらいました。筋肉量が多くとても逞しいアスリートそのものでしたがと膝や股関節に痛みが出ていました。膝の手術後のリハビリで右膝の経過が順調にいかなかったことや痛みが残っていたため、筋拘縮蓄積と手術痕部の異質な硬さの解消が最優先課題となりました。当時の姿勢からも筋肉が内側に向かってギュッと縮こまっているのがわかります。

大学4年生から本格的に筋肉チューニングやリアクティベーション(骨格基準のエクササイズ)を開始し、體のニュートラル化を目指しました。固定観念の少ない選手なので新しいことでも本質を理解したらどんどん吸収する素直な性格です。彼は愚直にルーティンを守れる選手でもあるので、継続してこそ成果が現れる私たちのメソッドの申し子のような選手だと感じています。

100名近くのプロサッカー選手と関わってくると、あくまで便宜上ですが、選手をいくつかのタイプに分けることができます。藤井一志選手は真面目で頭の良い選手というカテゴリーです笑。会話からも思考性がうかがえるのですが、サッカーもとてもよく考えてプレーするタイプの選手です。これは初めてミーティングした時から感じていたことです。

かなり遅くなってしまいましたが、2024年のJ3優勝を決めた大宮での試合が初めて彼を視察する機会になりました。その時の内容があまり良くなく、本人も落ち込んでいたので個人戦術について個別のアドバイスを増やしました。メッセージでのやり取りでも理解が早いので、早晩成果は現れてくると確信していました。

體はすでにニュートラルに戻りつつあった彼にとって分岐点となったのは昨年12月24日に実施した個人戦術トレーニングだと考えています。90分のセッションを2回の合計180分のトレーニングを実施しました。最初は初めて一緒にトレーニングする選手たちにとまどい緊張気味でしたが、次第に打ち解け本来のテンションでのプレーが出てきました。頭を使うトレーニングを多くセットしましたが、意図を汲み取るのが上手いのでスムーズにプレーができていました。

「もっとゆっくり楽にプレーしよう」
そんなアドバイスをしながら、途中から氣づいたのが藤井一志選手の脱力の変化です。私の中では筋肉量が多くパワーでプレーするタイプだと思っていた先入観が覆る瞬間でした。ご覧のように立ち姿も一変していましたから当たり前なのですが、ボールタッチがやわらかく、コントロールオリエンタードからのクイックネスがとてもスムーズで綺麗でした。
「あれ?こんな選手だったかな?」
と思うくらい短時間で修正できたのです。ボールの受け方、ポジショニング、基本技術の見直しで、プレーに余裕が生まれたようでした。サッカーにおける「時間」という概念を持てたことで本来のキレやスピードがより活かせるコツを掴んだようです。

開幕戦のアディショナルタイムでの劇的な決勝点につづき、ワントップでスタメン出場した第2戦目も唯一の得点を叩き出しての2戦連発は積み上げてきた結果です。一瞬の判断の速さと、素直に體が動くアジリティは、不必要に力まなくなった効果です。

これまでプレーしてきたポジションは1.5列目のシャドーストライカーですが、今シーズンはチームの緊急事態でワントップでプレーし始めました。慣れないポジションで習得しなければならない個人戦術はありますが、チームでは良い指導者に恵まれているので克服できると思います。私も微力ながら彼の成長に一翼を担えればと思い、ゲーム後の振り返りや、伸びしろになる個人戦術の修正をアドバイスしています。

私たちがサポートを開始して2年経った現在との比較では、骨盤から脊柱の抜け感がまったく異なっているのがわかります骨盤から股関節にかけてのさらなる機能の再活性化によって身体のバランスが整いました。脱力感が増し動作の流れがスムーズになったことでプレーの質が向上しました。プロ2年目の今シーズン、藤井一志選手はパワーに頼った直線的なスピードから、キレが増したクイックネスへと変貌を遂げています。抜け感の向上により、ワントップのポジションでも難しいボールをしっかりおさめられるようになりました。フィジカルだけでなくメンタル面でも安定感が増し、試合中の判断力やプレッシャー下での冷静さが向上しています。

フォルムの変化とパフォーマンスの向上

  • 骨盤と脊柱の抜け感:上半身の力みが取れ、自然な姿勢の中でスムーズな動きが可能に。特にターンや方向転換時の負担が軽減され、細かい動きのキレが増した。

  • 重心の安定:骨盤が正しく機能することで、軸がブレにくくなりプレーの安定感が向上。コンタクトプレーでも無駄な力を使わずにボールをキープできるようになった。

  • 足元のコントロール:下半身の連動性が向上し、ボールタッチがスムーズに。狭いエリアでも正確なボールコントロールが可能になり、パスやシュートの精度が向上。

スピードからクイックネスへ

  • 前傾姿勢の改善:以前は上半身に余計な力が入り無理な前傾が見られたが、現在は重心が適正化され最小限のエネルギーで最大の推進力を生み出せる。

  • ステップワークの向上:瞬発力と細かいステップの精度が向上し、急な切り返しや方向転換がよりスムーズに。これにより狭いエリアでの突破力が向上。

  • ダイナミックな動きから、効率的な動きへ:無駄な動きを削減し、必要なタイミングで最大のスピードを発揮できるようになった。

  • ポストプレーの強化:姿勢の安定により、相手のプレッシャーを受けながらも確実にボールを収められるようになった。

  • 周囲との連携強化:視野の確保が容易になり、より素早く味方の動きを察知できるようになった。

心身ともにニュートラルな状態へ

  • 受傷部位の解消:手術した膝や受傷歴の多い足首の機能の再活性化が進んだ。足首の機能が戻り大きな怪我や長期の離脱が減る。

  • プレッシャー耐性の向上:リラックスした状態でプレーできるため、緊迫した場面でも慌てることなく最適な選択ができる。

  • 継続的なパフォーマンス維持:無理な動作が減ったことで、試合終盤でもパフォーマンスの低下が抑えられるようになった。

  • プレーの流れを読む力:身体の余裕ができたことで、相手の動きをより正確に予測し素早く対応できる。

note記事のご紹介

最新記事です。当該記事にフォルムや立ち姿勢にも影響のある骨盤機能を深掘りしています。トップオブトップの骨盤機能の充実度はそのままプレーのパフォーマンスに影響します。

サッカー選手に頻発する腰痛。傾向を探れば原因が見えてきます。特に育成年代の腰椎分離症はその後のパフォーマンスに影響を及ぼしますから、日々のケアと適正な技術の習得が重要になります。

世界のサッカー界において至る所で頻発する全治4週間前後の筋肉系のトラブルの正体を解説しています。筋肉は切れたのか?炎症が起きているのか?再発防止策はあるのか?

タンパク質がなぜ重要なのか?知ってるようで知らないタンパク質の力をまとめました。「體は食べた物でつくられる」どこまでいってもこの真実は変わりません。

当社MTR Method Lab®︎がケア、栄養、身体操作、個人戦術まで選手たちのパフォーマンスを総合サポートするプロサッカー選手たちの生の声をお聞きください。

個人戦術アーカイブス

MTR Method Lab®︎が契約している一部の選手には、私が20年数年に及ぶ欧州サッカー研究で培った個人戦術の原理原則のアーカイブを共有しています。日本の育成年代とはあきらかに違う概念に、多くの選手は「初めて知った」「もっと早く知りたかった」と話します。同じサッカーでも「日本と欧州ではまるで別の競技だ」と話す現役日本代表の選手も増えています。


いいなと思ったら応援しよう!