私のために争わないで
歌謡曲がすきだ。
戦時歌謡、ムード歌謡、フォーク歌謡、アイドル歌謡、シティポップ…
長めのイントロ、印象的なフレーズ、少々コンプラを無視した歌詞…
そんな昭和歌謡たちは、日々の生活でさまざまな出来事に接すると同時に、日常のテーマソングとして脳裏に再生されるようになった。
カップルの痴話喧嘩を目撃した時は、
沢田研二の「勝手にしやがれ」
JRの駅構内で出口を見失った時は、
渡辺真知子「迷い道」
すれ違ったおじさんに舌打ちされた時は、
吉田拓郎「人間なんて」
…など。
他にもある。
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こちらの西洋絵画はフラゴナール「ぶらんこ」という作品だ。
作品の詳細は省くが、簡単にまとめると
「中央のぶらんこを漕いでいる貴婦人が、ぶらんこを制御している右の男性と関係にありながら、左の若い男性をたぶらかしている」
という絵だ(諸説あるようですが)。
三角関係。挑発的。小悪魔。コケティッシュ。あざとい。そんな絵。
そして、この絵を見る度に脳裏に流れる歌謡曲がある。
河合奈保子「けんかをやめて」1982年
作詞 竹内まりや
作曲 竹内まりや
1人の女性をとりあう2人の男性に”けんかをやめて〜”と懇願する健気な女性の歌
というのが曲のイメージ、または一般的な解釈?となっているが、よくよく歌詞を追ってみると、そうでないことがわかる。
ー1番ー
Aメロ
ちがうタイプの人を好きになってしまう 揺れる乙女心よくあるでしょう
Bメロ
二人の心もてあそんで ちょっぴり楽しんでたの 思わせぶりな態度で
三角関係。挑発的。小悪魔。コケティッシュ。あざとい。そんな歌だ。
思わせぶりな態度で男性2人ををたぶらかし、ちょっぴり楽しんでたが、二股が露呈し、でも、そんな乙女心よくあるでしょうと、河合奈保子が開き直る。
太ぇ野郎だ、と思う。
そして、この曲を聴いて、引っかかる点がもうひとつある。
このような経緯があってから、サビで河合奈保子が懇願する箇所。
だから喧嘩をやめてえ〜
「だから」???
だからではなくないか?
それ言われてけんか辞めれる?
逆にそれ聞いて矛先が、河合奈保子に向かってこないか?
いまAメロBメロを聞いてもらったように、悪いのは私だから、2人がけんかするのは違うのよ、ということ?
だがこの曲、バラード調で全体を切ない印象が覆っているため、河合奈保子が一貫して”被害者”目線で歌い上げてる感があり、それがかえって二股開き直りソングに映る。
挙げ句の果てに、二股をした理由として
ー2番ー
Aメロ
ボーイフレンドの数競う仲間達に自慢したかったの
だって。
いやこれ河合奈保子も悪いけど、そんな遊びして楽しんでる仲間達もよくねえぞ?
太ぇ野郎たちだよ、と思う。
でもこの女性、決して嘘はつかない。
赤裸々にすべてを話している。
でもそれが傷つく。
太ぇ良い歌。
それからというもの、河合奈保子「けんかをやめて」を聴くと、前述のフラゴナール「ぶらんこ」がオーバーラップするようになった。
だから、けんかをやめて〜
河合奈保子が優雅にぶらんこを漕いでいる絵が浮かんでくる。
ぶらんこの貴婦人も、決して罪悪感の表情は浮かべておらず、この状況をちょっぴり楽しんでいるようだ。
真偽は不明だが、漫才協会のとある先輩から、昔、河合奈保子とおぼんこぼんのおぼん師匠に噂があったと聞いた。
となると、ぶらんこの貴婦人は河合奈保子で、ぶらんこを制御している右の男性は、おぼん師匠の可能性がある。とすれば、左の若い男性はこぼん師匠ではないか。
そうとしか思えなくなってきた。
ちなみに作詞作曲の竹内まりやが、この曲をセルフカバーしている。
聴いてみる。
こちらは竹内まりやが、優雅にぶらんこを漕いでいる絵が浮かんでくる。
となると、ぶらんこを制御している右の男性は、山下達郎(夫)に思えてくる。
じゃあ左の若い男性は?
たぶん、大瀧詠一だと思う。
(※山下達郎がシュガーベイブ時代に、バックバンドの一員として当時20代前半の大瀧詠一を誘ったというエピソードがあります。2人はちょっとした師弟関係だったみたいです)
最後に「けんかをやめて」で傷ついた”中の男性たち”を救う歌を紹介する。
竹内まりや「元気を出して」1984年。