夜空に浮かべて
西側の空は
かすかに夕焼けを残したまま
紺色に染まり
うすい
うすい
三日月がのぼってた。
この舟の上に何をのせようかと考えた。
この舟の上にはきっと
繊細できらびやかで・・
って、いくら考えても具体的なものが浮ばない。
君だったら、何をのせたいって思うんだろう?
そんなことを思いながら
空を見上げて、
うすい三日月に携帯のカメラを向ける。
誰かに見せたら、たぶん、何の写真かも分からない。
どうせ、まともな写真なんか撮れないって分かってるのに
ぼやけた三日月を写す。
ぼくは、何度もこんな風に
星や月の写真を撮っては失敗している。
それでも
カメラを向けたくなる。
きっと、きれいに撮りたいから撮るのではなく
誰かに自慢したいから撮るのでもなく
ただ、少し。
届きたいのだろうと思う。
そして、
この地上を去る、最後の日には
失敗すると分かってても
何度も何度も
夜空の写真を写していたことを思い出すんだろう。
ぼやけた写真と滲んだ記憶。
ああ。そうか。
断片をのせるんだ。
うすい月の上には
こんぺいとうのような
はかない破片を。
ぼやけて、滲んだ記憶を
そっと、ひとつ。ひとつ。
懐かしく かがやくから・・
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