「虞美人草」を読んでみた
先日書店で購入した夏目漱石著「虞美人草」(新潮文庫版)を読了。
一度高校生の時に「いっちょ挑戦したろか」と読んでみたが
難解な「漢籍入り」の文章に「こりゃよぅ解からんわぁ😞」と匙を投げかけた思い出がある(ワケガワカラナイヨ状態で読了した😵💫)。
ようやく40年くらい経った今年、9月の終わり頃に田園調布にやってきて、そこの駅ナカの本屋に「虞美人草」があったのでもう一度読んでみようと思い購入した。
漢籍を混ぜ込んだ漱石の文体は相変わらずの難解ぶりだったが、巻末の解説を参照しながら読み進めた。
登場人物の中で最も強烈な個性を放っていたのはヒロインの甲野藤尾。
兎に角、紫を淑やかに纏う若い貴婦人のイメージ。
細くしなやかさあふれる指先から着ている和服に至るまで、漱石は彼女の美しさを優れた描写力で表現している。
彼女の唯一無二と言っていい「宝物」は金鎖にガーネットを嵌め込んだ懐中時計。兄・欽吾から拝借したものだ。
物語は、その甲野欽吾と彼の盟友の一人である宗近一が京都旅行で比叡山に登って行くところから始まり、甲野は哲学者で始終煩悶している男で、宗近は毎年のように外交官になるべく試験に挑戦するがいつも滑っている男。ちなみに彼には糸子という妹がいて、これがすこぶる家庭的な女性。兄ちゃん用のチャンチャンコ(ベストかな?)を縫ってあげたりもしている。
藤尾の家に来て「アントニーとクレオパトラ」(←翻訳は坪内逍遥か)の読み合わせをしているのは小野清三という人物。立派な口髭と金縁眼鏡に、当時はハイカラだったスーツ姿の帝大出身者。当時は成績優秀な帝大学生には時の天皇から時計がプレゼントされていたらしい。
この小野と藤尾とは恋仲になりかかっている。文中からは藤尾のほうが小野を手玉に取ろうとしているように見受けられる。
小野が苦学生の頃に世話になっていた恩師・井上孤堂とその娘・小夜子。彼女は小野が父の世話になっている頃から、彼に心を寄せている。この父娘が京都から東京にやってきた頃から物語が動き始めるわけだが…。
文庫本にしてかなりの厚みがあるから、文豪・漱石にしてはかなりドロドロの複雑怪奇な人間模様を描くのではないかと密かに期待しながら読み進めていたが、ラストのクライマックスのところで、ヒロインの藤尾がヒステリー(今で言うところの解離性障害)で斃れ、そのままアッサリ逝ってしまう処に
「厚い割に内容がちょいと薄めだな」
と思うしかなかった。
ラストに向かう数ページ前で宗近が甲野に「お願いだから糸公(糸子のあだ名)をもらってくれよぉ!彼女は藤尾なんかよりも素晴らしくできた子だから!(趣旨)」と涙ながらに嘆願するあたりから「嗚呼なんとなく出来が薄い作品っぽいな」と感じ始めたが、まさにそのとおりの展開になり、藤尾の臨終の様子でようやくタイトルの「虞美人草」が出て来るといった塩梅。
藤尾が「憤死」する直前に「私は小野さんが好きです」と告白するのだが時すでに遅し、小野が小夜子と一緒になり彼女の父の面倒も一緒に見るなんて言うくだりも「う〜ん🤔もっと濃ゆい展開を期待していたが…😶」。
兎にも角にも「漱石が本格的な職業作家活動を始めるべく発表した作品にしてはちょいと通俗っぽい出来だったかな」というのが読後の正直な感想。
まぁでも、職業作家として小説を書くにはそのぐらい通俗的なものでなくてはならなかったんだろうね😶😗。あまり小難しいと読者にウケないし😗。
ともかく自分としては「坊っちゃん」以来の「漱石体験」だった。他の名作を読めばもっと深い「出合い」が待ってるかもね😙。